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少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
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16話



「花子ちゃんに借金取りがいるのは聞いていたが貴様か万事屋!?見損なったぞ!花子ちゃん、困っているなら近藤さんに相談しなさいよね、もう!コイツが総悟の言っていた借金取りかい?」

「オイオイ頭の中までゴリラ化したか?というか何お宅、何しに来たのここに。ここは薬師屋でも人間に戻れる薬はねーぞ。」

「あれ?今ゴリラって言った?近藤さんのこと見て今ゴリラって言った?花子ちゃん、今コイツゴリラって言った?」

どうしてこうなった?と言いたい展開だが、ツッコミを入れるのも面倒で否定も肯定もせずにそのままスルーをすると「無言は肯定と取る」という奴になってしまったらしい。嘆く近藤さんには申し訳ないが、面倒なことには関わりたくはない。

事の発端は、いつもなら聞きもせずに自由に過ごしているというのに今日に限って「いちご牛乳飲んでいい?」なんて言いながら奥から出てきた万事屋さんにある。それに口元を引きつらせながら「面倒になる予感」を感じていると、予感が最速で的中し後ろにいた近藤さんが悲鳴を上げた。

「万事屋が花子ちゃんちに!?え!?どういう関係!?」

明らかに勘違いした様子の近藤さんに、否定しようと口を開いたが時すでに遅し。
「そりゃあなぁ?秘密だ、秘密」と笑う万事屋さんの言葉を即座に否定し、「ただの知人、ただのお客さんです」と答えたのを万事屋さんが否定。万事屋さんが言っては私が否定、私が言っては面白がった万事屋さんが否定する流れに、先日の一連の流れを沖田総悟から歪曲した形で伝え聞いていた近藤の中では、事もあろうか、万事屋さん=取り立て屋という式が成り立ったらしい

思ったがどうしてこうも万事屋さんは真選組のかたとお知り合いの率が高いのだろうか。
もしかして万事屋さんはこういう方々にお世話になる立場の人なのだろうか。
いやでも神楽さんと新八さんのお2人の保護者でありながらそんな。
お2人のケンカ?を視界からシャットアウトしながら、そう言えば沖田総悟さんに言われたことを思い出す。

「万事屋の旦那は、賃金を払わず未成年のガキを使ってやすからねィ~…おっと、これは内緒の話だった。忘れてくだせェ」

神楽さんもおやつを食べにうちに来るときに、そのような愚痴をこぼしていたことがある。
その後に神楽さんを迎えに来た新八さんも、否定できずに苦笑いでごまかされていた。
もしかして万事屋さんって不法に人を雇って……口元に手を当てて、じとりと万事屋さんのほうを見ると「何だその目はサラ子!?何か分からねぇが、勘違いしてるぞ!」と言っていたが、焦りようから思い当たる節があるのがわかる。

「お妙さんはただ恥ずかしがっているだけですぅー!いつか振り向いてくれるのを勲信じてますぅ」

「いーや、あれは心の底から嫌がってるから。どこの世界に好きな奴をあそこまでボコボコにできるんだよ。アイツはゴリラか?ゴリラ同士の愛情表現ですかー?」

「失礼だぞ万事屋ァ!お妙さんはゴリラじゃないぞ!」

「ソーデスネ。ゴリラはお宅だけですね」

いつの間にか話は逸れに逸れて、近藤さんと意中の人の話になっている。
2人揃って下駄と靴を脱ぎ、話しながら自然の流れでうちに上がっていったけれど、仲がいいのか悪いのか分からない。先程まで怒鳴りあっていたのは何処へやら今では「え●り」の物まねにどちらが似ているかという不毛な争いをしながらゲラゲラと笑い転げている。仲良しか。

何はともあれ、揉め事は一件落着したらしい。
ついでに早く帰ってほしいところではあるが、そのうち飽きたら帰っていくだろう。

「すみません、湿布薬を頂きたいのですが」

「いらっしゃいませ」

そう勝手に納得し、お店のほうへと戻った。



「あの、早く帰ってもらえませんかね」

仕事を終え、店仕舞いを済ませて家に入ると、とっくに帰っていると思っていた2人の姿に唖然とした。DVD持って行っていいから帰れや。お夕飯まで居座る気満々な2人は「今日はハンバーグがいいなサラ子」なんて注文まで付けてくる。ちゃっかりと冷蔵庫にあるひき肉は確認済みのようだ。

「今日はその辺で帰って頂けませんかね。なんならDVDお貸ししますし」

「俺が持って行ったらコイツが見れないだろうが。だからほら、ここで見ていけばみんな幸せ」

「私は不幸なので帰ってください」

「バカヤロウまだ5話目だぞ、これからだろうが。ピ●子と卓●の夫婦バトルが勃発するのはよォ」

「そうだぞ花子ちゃん。まあ俺たちのことは気にせずにゆっくりしなさい」

「あなたたちはもっと気にしてください」

向こうに置いてある鉄製の薬研(薬をすりつぶす道具)を投げつけてもいいだろうか。
そんな商売道具を本当に投げたりなどしないが、そのくらいしたってきっと許される。

ああなってしまっては、片方はもうテコでも動かないだろうことは分かっている。さっさと夕食を出して、早めに帰ってもらおう。

ため息を吐き、お夕食作りに取り掛かりながら、「やっぱり帰る」と言ってくれることを願いながら、本当に食べに行くのかと確認しに向かった今に、最近見慣れた栗色が増えているのが見えて、思わず頭を抱えた。

つくづく災難続きである。
お祓いに行こうと。



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