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少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
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6話


「銀ちゃん銀ちゃん、知らない子がいるアル。誰アルか?」

散歩から帰ってきて居間に入ると銀時と一緒にいる見知らぬ少女に興味津々に駆け寄った神楽。
少女は銀時に問いを向けた神楽をただじっと見つめるだけで返答を返さずにいた。

「あー…あれだ、近所のガキ」

「しばき回しますよ?」

急に呼び出しておいて酷い言い草だと、無表情のまま目の前の男を睨みつければ若干気まずそうに目を逸らした。

「初めまして、歌舞伎町で薬師屋を営んでいます。今回は万事屋さんにお声がけを頂いてこちらにお邪魔しています」

「ヤクシヤって何アルか?」

「薬草を煎じて売っているお店ですよ。体調が優れない時にも気軽に利用できるお店と言いますか。説明は難しいですがそんなところです」

「へぇ、よく分からないけど分かったアル」

それは結局分かっていないのでは?と思いつつ、これ以上上手く説明する方法が思い当たらなかったため「そうですか」と頷いた。

「子供なのに偉いアルな。私は歌舞伎町の女王神楽ヨ。何か困ったことがあったら何でも言ってネ」

「では早速そんな歌舞伎町の女王さんにお願いがあります、最近お店を居眠りをする場所として利用したり酔っぱらっては店頭のものをなぎ倒す輩がいるのですが退治していただけませんか?」

「そんな悪い奴がいるアルか。お前と私の仲ヨ、そいつの名前を言うヨロシ」

「ありがとうございます。ではあそこで抜き足差し足で部屋から逃走しようとしている万事屋さんを1人、お願いいたします」

「銀ちゃんお前アルかァー!!!」

「ギャアアアア!!!?」

背中から飛び蹴りをされた銀時は玄関のほうへ吹き飛んでいき銀時とは別の悲鳴を巻き込みながら玄関の扉ごと外へと放り出されていた。

唖然としながら玄関のほうを見つめていると先程の少女の声で「恥ずかしいアル!恥ずかしいアル私はァ!何いい歳して人様に迷惑かけてるアル!この甲斐性なしィ!」と罵倒する声が聞こえ慌てて立ち上がって玄関の方へといった。

見た目はまだ少女だというのに大の大人をここまでにするなんて予想だにしなかったが、彼女の皮膚の白さと右手に持っている傘からその理由がやっとわかった。

「ごめんヨ、銀ちゃんが色々迷惑かけちゃったみたいネ。」

「いえ、もう何というか、スッキリしたので気にしないことにしました。ありがとうございます、歌舞伎町の女王さん」

「水臭いネ、神楽って呼んでヨ。お前の名前はなにアルか?」

「あーえっと…」

「じゃあお前の名前は今日からシンちゃんで」

「いやまだ名乗っていないのですが。シンちゃんってどこから持ってきたのです?」

「お前目が死んでるから、死んでるから取ってシンちゃんヨ。ね、シンちゃん」

「そんな不名誉な名前ってありますか?あんまりです。シンデルちゃんにしてください」

「不名誉な部分増えたけどいいの?他の名前にしてもらったらせめて」

神楽の暴行からやっと立ち直った銀時は2人の座っている向かいのソファに座ると「いててて」と首を擦りながら背もたれによりかかった。

「そもそもシンちゃんって、新八ともろ被りじゃねぇか。他の名前にしろや紛らわしい」

「本当ヨ、新八に改名させるアルか?

「本名を聞くという選択肢はないのですね。まあいいですけど」

「えーシンデルちゃんって可愛いのにあんまりアル。じゃあ銀ちゃんはなんて名前がいいアルか?シンデルちゃんよりいい名前が出せるならそっちにするアル」

「コイツの名前ねぇ…目は死んでるだろー…髪は黒…目も黒で特徴がねぇしなァ…むかつくことにさらさらヘアだし腹立ってきたわ。あー…サラ子ちゃんでよくね?」

「よろしくナ、サラ子」

「私の意見は聞いてもくれないっと」



「ってことでサラ子ちゃんヨ、よろしくしろよ新八」

「ってことでってなんですか。サラ子さんって言うんですね、よろしくお願いします」

「はい、もうはい、サラ子です。よろしくお願いします。」

否定してもわかったふりをして「サラ子」と呼び続ける2人にげんなりした顔の彼女に新八は首をかしげるも、気にせず彼女の前にお茶を置いた。それにお礼を言い口に運ぶと今回自分を呼んだ銀時の方を見た。

「それで、話があるというのは?」

「んあ?あぁ、あー…そうだな、用ってのはもう済んでんだけどよ」

「銀ちゃんもサラ子に名前つけたかったアルか?」

「まああれだ、お前ら年齢近いだろうし仲良くしろや。」

何となく誤魔化すように言ったが、実際2人に会わせようとしたのは銀時の表情から分かった。
あまり深い付き合いにはならないようにとしてきたつもりだったが、それに気づいての計らいだったらしい。余計なお世話だ、なんて思ってしまったが、ほんの少しだけその計らいが嬉しいと感じてしまったのも事実だった。

普段は酔っぱらっていてどうしようもない人だと思っていたのに、どうやら自分が思っていた人間像とは少し違っていたらしい。

「よろしくアル、サラ子」

「よろしくお願いしますね、サラ子さん」

「…よろしくお願いします」

(ありがとうございます、万事屋さん)
(いいってことよ。今度パフェおごってくれや)
(少し見直した気がしましたが、気のせいだったようです)
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