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ラブライブ!〜俺がμ'sのプロデューサー!?〜

原作: ラブライブ! 作者: プリズムの使者
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第22話「希、忘却」

 絵里ちゃんのスクールアイドルとしての資質は抜群だった。

「どうかしら? 私の実力、納得してくれたかしら?」

「な? これで入れない理由はないでしょ」

 これで皆、絵里ちゃんの加入を納得してくれるだろう。

「あるよ」

 と思ったが、穂乃果が反論した。

「どこが」

 一体何が問題だって言うんだ。

「ってかさ、なんで竜くんは彼女をそんなに入れたがるの?」

「なんでって、絵里ちゃんがやりたいって言ったから……」

「なんで私達に話し通さずに好き勝手やってるの? μ'sの竜くんだけのものじゃないんだよ?」

 確かにそれは一理ある。この加入は俺が勝手にやったことだ。いくらマネージャーとはいえそこまでの権限はなかった。

 俺はようやくそのことに気づいた。

「それは……」

「とにかく、穂乃果は嫌だからね!」

 今までの加入はメンバー、とりわけリーダー格の穂乃果がすべて認めてやったことだった。だからこそ、誰も反論しなかった。

 しかし、今回はどうだ。俺が勝手にやっただけじゃないか。だから、こうなっても仕方ない。いや、こうなるべきだったのかもしれない。

 とりあえず、これじゃ了承されないことが分かった。

「ごめん……行こう絵里ちゃん」

「え、えぇ……」

 俺は絵里ちゃんと一緒にその場を後にした。


☆ ☆ ☆


 竜と絵里がその場を去った後、海未は怪訝な表情で穂乃果を見つめていた。

「良かったんですか? あんなに冷たい対応を取って」

 真姫も続いて言う。

「確かにやり方は強引かもしれないけど、会長自体かなりの逸材だったと思うんだけど?」

 穂乃果は確かに絵里に実力があることは分かっていたが、どうしてもそれを認められなかった。

「穂乃果も確かに会長はすごいと思うよ。でも問題はそこじゃないよ。一番の問題は竜くんが私たちを無視したことだよ」

 にこはなにかを察したようにうなずく。

「まぁ、確かにそれはあるわね」

「竜くん、なんで穂乃果たちを無視するの……? 穂乃果はこんなに」

 穂乃果は悔しげに唇をかんだ。


☆ ☆ ☆


 屋上から少し離れた廊下に俺たちはいた。

「ごめん、絵里ちゃん」

「いいのよ。私だってμ'sにひどいことしたんだし。印象悪くて当然よ」

「まぁ、な」

 それにしても本当に絵里ちゃんには悪いことをした。もちろん、穂乃果にも。

 それでこの状況をどうしようか考えていた。

「それよりいいの? 高坂さん怒ってたわよ?」

 絵里ちゃんが心配そうに言う。確かにあれは怒っていた。勝手に物事を決めたんだ。

「そりゃあ良いわけないよ。でも、仕方ないこと……うっ」

 その時、頭痛が走った。以前感じたのと同じような頭痛。

「ちょっと、大丈夫!?」

 絵里ちゃんが俺の身体を揺さぶる。決して良くなるわけではない。

「また例の発作だ……」

「発作!? あなた病気なの?」

「それは分かんねぇけど、とりあえず発作だよ!」

「とりあえず保健室に行きましょ!!」

 絵里ちゃんは俺を抱えて保健室へと向かった。


☆ ☆ ☆

 保健室に着くと、絵里ちゃんは俺をベッドに寝かせた。

「ここで安静にしてましょ。私が見ててあげるから」

「サンキューな……うっ……」

 俺があまりに苦しそうにしてたので、絵里ちゃんは心配そうに見つめる。

「あぁ、ちょっと人を呼んでくるね!」

「……」

 俺はもう、言葉すら出せずにそのまま気を失ってしまった。


☆ ☆ ☆


 結局、大人が見つからなかったがために絵里は希を連れてくることにした。

「それで竜くんが保健室に?」

「そうなの」

 絵里は保健室に着くと、ドアを開け、竜に声を掛けようとした。

「竜!! あれ……!?」

 しかし、どこにもいない。まさか家に帰ったのではと焦り出す。

「どこにもおらへんやん」

「おかしいわね……確かにここに」

「誰がおるん?」

 希が不意にそんなことを言い出した。まさかこんな一大事に茶化すようなことを言うのか。

「誰って……竜じゃない」

「竜? 誰よそれ。うちの学校にそんな名前の人はいなかったはずやけど」

 明らかに態度がおかしい。茶化すとかそういう次元の話ではない。

 そもそも、希はそういう人間ではないことを絵里はよく知っている。

故に彼女が本気で竜のことを分からなくなっていたのは分かった。

 分かってはいるが、分かってはいるのだが、咄嗟の出来事に動揺を隠せずにいた。

「え……希、何言ってるの……?」


☆ ☆ ☆


 次、俺が目覚めたのは神田明神だった。もうすっかり日が暮れて、カラスの鳴き声まで聞こえてくる。

「なんで俺こんなところに……」

 地面に倒れていた俺は身体を起こす。

 すると、目の前には海未がいた。

「大丈夫ですか?」

 そう彼女は声を掛ける。

「あぁ、海未ちゃん。俺は平気だよ」

 何気なく、いつも通りの返しをする。海未ちゃんは優しいなぁなんて思っていたのだが。

「あの……どうして私の名前を知ってるんですか?」

 海未ちゃんの様子が変だ。

「なんでって、俺たち友達でしょ? 悪い冗談やめろよな」

 海未ちゃんはきっと俺をからかっているのだろう。そう思って返すが、何やら様子がおかしい。

「何言ってるんですか……気持ち悪いです!!」
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