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ラブライブ!〜俺がμ'sのプロデューサー!?〜

原作: ラブライブ! 作者: プリズムの使者
目次

第19話「真姫、画策。」

 さてさて、俺と亜里沙ちゃんはバーガーショップで駄弁っていた。

 お互いμ'sのことで意気投合してからというものの、話が弾んで仕方ない。

「そういえば亜里沙ちゃん、どこでμ'sのことを知ったの?」

「この動画をお姉ちゃんが持ってたんです」

 亜里沙ちゃんはそう言ってスマホを見せる。そこにあったのはアップロード主が不明だったアングルの良いファーストライブの映像。

 ラブライブ!のポータルサイトから抽出したのか、はたまたオリジナルのデータなのか。

 まぁ多分おそらく後者だろう。

「これを、お姉さんが?」

 俺はそう問う。

「そうなんです。あ、うちのお姉ちゃん音乃木坂の生徒会長なんですよ」

「へぇ、そうなんだ。」

 知ってる。

「これを観たとき心打たれました。世界はなんて素晴らしいんだろうって。プリズムの煌めきで満ちている、そんな感じがしたんです」

 亜里沙ちゃんは抽象的でよく分からない表現を好む傾向にある。それはどういう意味なんだ。

「ほら、見てください。ここの3人とっても頑張ってて、キラキラ輝いてませんか?」

 亜里沙ちゃんが指差した動画には穂乃果、海未、ことりの3人が息を合わせて踊っている様子が写っていた。

 そういえばあの頃、絶対にファーストライブをやるんだって言って必死にやってたよな。懐かしい。

「煌めきはよく分かんないけど、なんだか活き活きとしてるよね」

「活き活き……その日本語はよく分かりませんが、多分そんな感じです」

 亜里沙ちゃんはそう言って微笑む。こうやってμ'sはファンに支えられてるのかと思うと感慨深いものがあった。


 そんな時、どこからともなく声がした。

「あら、竜さんじゃない。こんなところで何してるの?」

 真姫ちゃんだ。

「はぅぁっ!! あなたはμ'sの西木野真姫さんっ!?」

 亜里沙ちゃんは驚きすぎて椅子から転げ落ちる。

「よく知ってるじゃない。っていうか、竜さんこの人誰よ」

「亜里沙、絢瀬亜里沙ちゃん。会長の妹だよ」

「よろしくお願いしますっ!」

 亜里沙ちゃんは礼をして挨拶をした。その様子を見た真姫ちゃんはため息をついて俺に言葉を向ける。

「あなたねぇ……今この状況でよくもまぁ……。あ、分かった! 会長の妹に取り入って許可証を返してもらおうとか思ってるのよね? そうよね?」

 そういえばそうなのだ。亜里沙ちゃんと会話していてすっかり忘れていたが、今のμ'sにとって生徒会長は敵みたいなものだった。

 故に、その生徒会長の妹と親しくするのは問題がある。だから真姫ちゃんも難色を示していた。

「その手があったか!」

「何も考えてなかったの?」

「あ、あぁ……。半分諦めてるまであった」

 とはいうものの、俺自体亜里沙ちゃんといるのが楽しかっただけで生徒会長がどうとか、許可証がどうとか正直眼中にはなかった。

 というかあまり考えたくなかったのだ。

 情けないかもしれないが、正直にそう垂れるしかなかった。

亜里沙「ちょっと待ってください! お姉ちゃんとか許可証とかなんの話ですか!?」

 亜里沙ちゃんが困惑した表情で聞いてくる。俺は腹をくくって今まで起きたことを亜里沙ちゃんに話すことにした。

 話が進むたびに亜里沙ちゃんの表情が険しいものになっていく。そりゃそうだ。今まで自分が好きだったアイドルが自分の姉に危害を加えられていたのだから。

「そんな……っ。お姉ちゃんが……本当にすいません! 私からも返してもらうよう言ってみます!」

「その気持ちはありがたいんだけど、ちょっとそれは悪いよ……。姉妹仲もあるし」

 アイドルのファンとしても、絢瀬絵里の妹としても辛いことこの上ない。

 本来なら話すべきではなかったのだ。それがエンターテイメントに携わる者のあるべき姿だから。

 すると、真姫ちゃんはため息をついてこちらの話に入ってきた。

「それにその心配はないわ。亜里沙」

「えっ?」

「もうじき許可証は戻ってくるわ」

 もうじき戻ってくるだって? 一体どうして。

「マジで!?」

「そのマジよ」

 その言葉に亜里沙ちゃんは安堵する。じゃあ一体今までの流れは何だったんだと言わざるを得ない。

「よかった……これでまたμ'sが見れるんだぁ……。真姫さん、ありがとうございます!」

「竜さんが言うなら分かるけど、なんであなたが?」

「私、μ'sの大ファンなんです!!」

 大ファンと言われ、真姫は照れる。


☆ ☆ ☆


 ところかわって生徒会室。

 希が絵里に許可証の件について問いただしていた。

「なぁ、えりち。μ'sのマネージャーから許可証取ったってほんまなん?」

「なんであなたがそんなこと聞くの? もしかしてμ'sの差し金?」

 絵里が怪訝な表情で返す。

「いや、気になっただけよ。でも、人のもの取るのは良くないよなぁ」

「いいじゃない、別に。これでμ'sは活動停止に陥るんだから」

 絵里の言葉に対して希は呆れてものも言えない。

「……なぁ、えりち。今を頑張ろうとしてる人たちを貶めて何が楽しいんや? えりちはろくに仕事しないのに」

「何言ってるの。私は生徒会長として廃校阻止のために独自に活動を……」

「してるつもりになってるだけやろ?」

 希に核心を突かれ絵里は言葉が詰まる。

「それに、μ'sだっていっぱいファンはいるし、活動は健全そのものなんやろ? 何がそんなに気に入らないんや?」

 希の言葉に絵里はいらだちを隠せずにいた。そうしたいらだちはやがて言葉になった。

「うるさい……」

「ん?」

「うるさいうるさいうるさい! アンタに何が分かるのよ!!」

 絵里は近くにあった机をバンと叩き、そのまま生徒会室を立ち去った。

「ちょっとえりち!!」

 希は絵里をただ呆然と見ることしかできなかった。


☆ ☆ ☆


 絵里はいらだちと悲しみで混乱していた。

 なぜ、こんなに苦しいのにこんなに頑張っているのに誰も認めてくれないのか。

 もう身投げしてしまいたいくらい心が不快な感情で詰まっていた。

「なんで……なんでよ……なんで誰も分かってくれないのよ……」

 そんな絵里の前には竜がいた。
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