剣の少年と愉快な冒険者たち(後編)⑥
それから三十分が経ち遺跡は大破。
プルの森の広葉樹に木が倒れる被害はあったが、ホブゴブリン達とルミアの戦闘は終わった。
ゴブリン達は黒焦げになり気絶。
まだ、かろうじて生きているから、持ち帰る為、縄で縛り付けた。
ホブゴブリンの二匹も気絶はしなかったが、縄で縛り同じく持ち帰る事となった。
最後は勝ち目がないから土下座をし、命乞いをした。
ただ、それだけではルミアの気が晴れるわけではなく、ホブゴブリンの宝を渡した。
金銀財宝……。
地味で高価な物はあまり多くなかったが、本当に宝だった。
それを見るとルミアの機嫌がすぐ良くなり、倒すことをしなかった。
どうやらホブゴブリンがここにいた理由に、見つけた宝を隠すと言う目的があった。
それを聞いて一番驚いたのは、ルミア達ではなく、気絶から醒めた赤ゴブリンの方だった。
宝のことなんか、なにも聞いていなかったのだ。
「じゃあ、なにを聞いていたんだよ」
切る事が出来なかったので、殴りながら聞いた。
「なにも聞いていませんよ。ただ、ヒーローとしての秘密基地なのかと……」
要はただの活動拠点だと思っていたのだ。
ヒーローには秘密基地とそれを支える司令官が必要。
赤はそう話した。
(と、すると、司令官はホブゴブリン達なのだろう……)
パーティがみんな共通で思った。
「で、これからこのゴブリン達をどうするんだ?」
「決まっているだろう。売るんだよ」
ルミアの機嫌は完全に治っていた。
宝石を目の前にこれ以上にない幸福に浸り、盗賊のスキルを利用して、宝の鑑定をしている。
「あっ、レア発見!」
大事な遺跡をひとつ破壊したことなんて、とうに忘れていた。
「んじゃ、帰るか」
鑑定を一通り終え、ルミアとロベリーが宝石を分けて持ち、クランがゴブリン達を、ルーベがホブゴブリン達を連れて帰った。
遺跡に入る前は太陽の位置が真上にあったのに、帰る頃には西に傾き、視界に見える山が真っ赤に染まっていた。
その太陽を背中にザグル達はジャガの街に戻った。
それから、また次の日。
街の出口でザグルとルミア達がいた。
「まあ、お別れだな。お前違う所へ行くんだろ?」
ゴブリン達をオークションにかけるため、もう少しいる事になったのだ。
「ああ、もう、団体で行動するのは嫌だ」
ありのままを訴えた。
だから、早くこの街を出て新しい仕事を探す事にしたのだ。
「そう? 残念~」
クランがガバッとくっついた。
「だから、どうして抱きつくんだ!」
「だって、寂しいんだもん。たまには会いに来てね」
(気が向いたらな)
ザグルが苦笑いをした。
(まあ、当分はないだろうが……)
「ああ、そうだ! 報酬を忘れてたな」
ルミアは小さな茶色の麻袋を直接手で渡した。
受け取るとたいした重量は無かった。
「報酬ね~」
重量だけで少し不服だった。
「そうだけど? 文句あるか?」
確かに、傭兵としてたいした働きもしなかった。
いや、させてくれなかったから、当然と言えば当然だけど、文句の一つも言いたくなるものだ。
言葉に現すのは中身を確認してからでも遅くはないと、小さな袋をひっくり返した。
「これって……?」
「文句はねーよな?」
緑色のいつもザグルが投げる小石くらいの大きさの石が三つ入っていた。
その宝石の価値はザグルが二週間、朝、晩、宿付きで過ごせるくらいある。
「別に、文句はねーけど……」
多すぎて驚いているのだ。
通常、このくらいの行った場合、状況や宝の量で決まるが、一週間過ごせていい方だ。
今回のクエストはゴブリンの価値にもよるけど、ここまでは行かないと最初から思っていた。
ザグルが心配でならないメンバーの気持ちも入っていた。
もっとも、当の本人は気付いていないけど……。
「まあ、いらないなら返してくれ」
ルミアは手を出した。
心配している事をルミアは素直に表現する事は出来なかった。
「そうは言ってないやい!」
つかさず懐へ入れた。
「そーか、残念……」
ルミアはチィっと舌を打った。
だけど、どこか安心していた。
「元気でね」
「また~新しい発明したら~。その時は~お願いね」
(なにを?)
クランが涙目をして見送り、ロベリーが怪しげな目で見る。
ルーベは無言で手を振った。
ザグルは歩く前にもう一度ルミアを見た。
「あっ、忘れてた。俺から別れ際のお願いだけど、たまには師匠の所へ行けよ」
「破門された人に言われたくないんですけど!」
「俺はこの間、会いに行ったからさ。心配してたぜ?」
「んなもん、知るか!」
「言うと思った。だけど、剣の稽古でもして貰えば? 暇なジジイだし……」
二人の師匠は隠居生活をしていた為、毎日暇なのだ。
特にやる事がなく、毎日、空を見上げながらタバコを吸っているのだ。
しかし、実力はまだまだ、現役だった。
ザグルはまだまだ師匠に勝ったことがない。ルミアは破門されたので、恐らく手合せはしていないだろう。
「ちぇ、余計なお世話だ」
ザグルがゆっくり歩き始めた。
「はっはっ。それもそーだ。でも、多めに渡したんだ。それ位のお願い聞いてくれてもいいだろう」
やはり、意図があったのかと感じずにはいられなかった。
そうでなければ、金の亡者が渡す訳がない。
そんなマイナスなイメージし考えられなかったけど、心の底では感謝はしていた。
「じゃあな。元気でいろよ」
「あんたもな」
ザグルは身体を曲げ、手を振りながら歩いた。
しばらく歩いているうちに、『師匠』と言う言葉を思い出した。
(まあ、今は行く当てがないし、会いに行くかな……)
顔に少しの笑顔を見せ、次の目的地へと向かった。
今日の晴れた青空はザグルの心を写し、旅の成功を祈る温かな風が吹いていた。
プルの森の広葉樹に木が倒れる被害はあったが、ホブゴブリン達とルミアの戦闘は終わった。
ゴブリン達は黒焦げになり気絶。
まだ、かろうじて生きているから、持ち帰る為、縄で縛り付けた。
ホブゴブリンの二匹も気絶はしなかったが、縄で縛り同じく持ち帰る事となった。
最後は勝ち目がないから土下座をし、命乞いをした。
ただ、それだけではルミアの気が晴れるわけではなく、ホブゴブリンの宝を渡した。
金銀財宝……。
地味で高価な物はあまり多くなかったが、本当に宝だった。
それを見るとルミアの機嫌がすぐ良くなり、倒すことをしなかった。
どうやらホブゴブリンがここにいた理由に、見つけた宝を隠すと言う目的があった。
それを聞いて一番驚いたのは、ルミア達ではなく、気絶から醒めた赤ゴブリンの方だった。
宝のことなんか、なにも聞いていなかったのだ。
「じゃあ、なにを聞いていたんだよ」
切る事が出来なかったので、殴りながら聞いた。
「なにも聞いていませんよ。ただ、ヒーローとしての秘密基地なのかと……」
要はただの活動拠点だと思っていたのだ。
ヒーローには秘密基地とそれを支える司令官が必要。
赤はそう話した。
(と、すると、司令官はホブゴブリン達なのだろう……)
パーティがみんな共通で思った。
「で、これからこのゴブリン達をどうするんだ?」
「決まっているだろう。売るんだよ」
ルミアの機嫌は完全に治っていた。
宝石を目の前にこれ以上にない幸福に浸り、盗賊のスキルを利用して、宝の鑑定をしている。
「あっ、レア発見!」
大事な遺跡をひとつ破壊したことなんて、とうに忘れていた。
「んじゃ、帰るか」
鑑定を一通り終え、ルミアとロベリーが宝石を分けて持ち、クランがゴブリン達を、ルーベがホブゴブリン達を連れて帰った。
遺跡に入る前は太陽の位置が真上にあったのに、帰る頃には西に傾き、視界に見える山が真っ赤に染まっていた。
その太陽を背中にザグル達はジャガの街に戻った。
それから、また次の日。
街の出口でザグルとルミア達がいた。
「まあ、お別れだな。お前違う所へ行くんだろ?」
ゴブリン達をオークションにかけるため、もう少しいる事になったのだ。
「ああ、もう、団体で行動するのは嫌だ」
ありのままを訴えた。
だから、早くこの街を出て新しい仕事を探す事にしたのだ。
「そう? 残念~」
クランがガバッとくっついた。
「だから、どうして抱きつくんだ!」
「だって、寂しいんだもん。たまには会いに来てね」
(気が向いたらな)
ザグルが苦笑いをした。
(まあ、当分はないだろうが……)
「ああ、そうだ! 報酬を忘れてたな」
ルミアは小さな茶色の麻袋を直接手で渡した。
受け取るとたいした重量は無かった。
「報酬ね~」
重量だけで少し不服だった。
「そうだけど? 文句あるか?」
確かに、傭兵としてたいした働きもしなかった。
いや、させてくれなかったから、当然と言えば当然だけど、文句の一つも言いたくなるものだ。
言葉に現すのは中身を確認してからでも遅くはないと、小さな袋をひっくり返した。
「これって……?」
「文句はねーよな?」
緑色のいつもザグルが投げる小石くらいの大きさの石が三つ入っていた。
その宝石の価値はザグルが二週間、朝、晩、宿付きで過ごせるくらいある。
「別に、文句はねーけど……」
多すぎて驚いているのだ。
通常、このくらいの行った場合、状況や宝の量で決まるが、一週間過ごせていい方だ。
今回のクエストはゴブリンの価値にもよるけど、ここまでは行かないと最初から思っていた。
ザグルが心配でならないメンバーの気持ちも入っていた。
もっとも、当の本人は気付いていないけど……。
「まあ、いらないなら返してくれ」
ルミアは手を出した。
心配している事をルミアは素直に表現する事は出来なかった。
「そうは言ってないやい!」
つかさず懐へ入れた。
「そーか、残念……」
ルミアはチィっと舌を打った。
だけど、どこか安心していた。
「元気でね」
「また~新しい発明したら~。その時は~お願いね」
(なにを?)
クランが涙目をして見送り、ロベリーが怪しげな目で見る。
ルーベは無言で手を振った。
ザグルは歩く前にもう一度ルミアを見た。
「あっ、忘れてた。俺から別れ際のお願いだけど、たまには師匠の所へ行けよ」
「破門された人に言われたくないんですけど!」
「俺はこの間、会いに行ったからさ。心配してたぜ?」
「んなもん、知るか!」
「言うと思った。だけど、剣の稽古でもして貰えば? 暇なジジイだし……」
二人の師匠は隠居生活をしていた為、毎日暇なのだ。
特にやる事がなく、毎日、空を見上げながらタバコを吸っているのだ。
しかし、実力はまだまだ、現役だった。
ザグルはまだまだ師匠に勝ったことがない。ルミアは破門されたので、恐らく手合せはしていないだろう。
「ちぇ、余計なお世話だ」
ザグルがゆっくり歩き始めた。
「はっはっ。それもそーだ。でも、多めに渡したんだ。それ位のお願い聞いてくれてもいいだろう」
やはり、意図があったのかと感じずにはいられなかった。
そうでなければ、金の亡者が渡す訳がない。
そんなマイナスなイメージし考えられなかったけど、心の底では感謝はしていた。
「じゃあな。元気でいろよ」
「あんたもな」
ザグルは身体を曲げ、手を振りながら歩いた。
しばらく歩いているうちに、『師匠』と言う言葉を思い出した。
(まあ、今は行く当てがないし、会いに行くかな……)
顔に少しの笑顔を見せ、次の目的地へと向かった。
今日の晴れた青空はザグルの心を写し、旅の成功を祈る温かな風が吹いていた。
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