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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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弱点を突け!

これ以上敵を深く切り込ませない為、
若干中寄りに構えていた西垣が、サイドに流れる。エリア内では、染岡がシャドウの方に向かって走っている。本来染岡を止めるべき光宗は、それ以上深追いせず、女川のカバーをすべく、彼の斜め後ろに陣取った。


「これは…ハッ、そういうことかよ。」

ピッチを見下ろす土門は、マックスの意図を察したらしかった。

「マックスは木戸川4バックの弱点に気付いたらしいな。この形…上手く行けばシュートに持ち込めるかもしれないぞ。」

鬼道も楽しそうだ。木戸川ゴール前では、今正に、マックスの仕掛けが仕上がりつつあった。
左サイド、タッチライン際ギリギリのところをドリブルするマックス。彼を早い段階で止める為、西垣はバックラインの誰よりも前に出ている。
右サイドでは、一斗が然程攻め込んでこない為、引き気味に構える黒部と一斗の間にかなり距離が空いている。
そして中央では、シャドウと染岡が並走しながら女川に向かい、光宗がその斜め後ろに構えていた。
西垣が自分に向かってくることに気付いたマックスは歩を止めると、更に彼が飛び出してくるのを待った。
西垣も立ち止まる。先程、マックスの『スラッシュターン』を西垣が止めた時と同じシチュエーション。あの時と違うのはマックスがドリブル技を使う素振りを見せないことだ。
そのことを訝しみながらも、西垣は先手必勝とばかりに飛び込んで行った。

今だ―――!!

マックスが右手を挙げ、右サイドで待つ一斗へロングパスを放った。
待ってましたとばかりに、一斗がそれに反応する。このフィールドの横幅は、80mくらいだろうか。雷門には珍しい大胆なサイドチェンジに、観客席も沸いた。
大きく弧を描くパスがピッチを横切り…通った。元々黒部との距離がかなり開いていた一斗は、難なくボールの落下地点に走り込むと、ダイレクトで中に折り返す。
ゴール前では染岡とシャドウが交錯し、女川を混乱させる。光宗が指示を出そうとするが、パニックになった女川には、届きそうもなかった。
そうこうしているうちに、一斗が蹴り返したボールが迫ってきた。マックスの放った山なりのパスとは対照的に、選手達の腰の高さくらいのパス。

「チッ…邪魔すんじゃねえよ!」

シャドウが壁となって、光宗は女川のフォローに行けない。
女川がディフェンス技を放とうとした時にはもう、染岡の足元までボールが飛んできていた。

「決めてやるぜ!『ドラグーンクラッシュV3』!!」

爆竜が唸り声を上げてゴールに迫る。今度こそゴールを奪うことが出来るか―――?

「『スピニングカット・リバース』!!」

またしても…この男。何度目だろうか。西垣が雷門の進撃を阻む壁となるのは。だが、今度ばかりは彼もマックスの意図に気付くのが遅れたと見え、染岡よりかなり離れたところで苦し紛れのディフェンス技を放つしかなかった。
それでもこの僅かな時間で、防御範囲の広い『スピニングカット・リバース』を選択したのは流石と言わざるをえない。
防御できる範囲が広ければ、多少距離があってもシュートレンジに被さる可能性がある。西垣が一縷の望みを託した一打は、幸運にも爆竜を捉えた。分厚い壁にぶつかり、爆竜の悲鳴が響く。

「嘘だろ!?また…」

西垣をゴールから遠ざけたマックスだが、彼の守備範囲の広さには愕然とせざるを得ない。
地面から噴き出した、水色の壁が消える。爆竜を喪い、只の球体に成り果てたボールが、砂塵に塗れながらピッチを転がってゆく。
西垣がボールを拾うのを防ぐ為、気持ちを切り替えて西垣の進路を阻むマックス。

「ナンさん!」

西垣の鋭い声。それを受けたGKの軟山が、ボールを大きくクリアした。
木戸川清修、今日一番の窮地を凌ぐ。
失意に沈む雷門だが、いつまでも落ち込んではいられない。前半残り時間もあと僅かだろう。このままスコアレスで折り返すよりは、鉄壁の守備を崩して、先制点を挙げておきたいところ。
先の一連のプレーを見た少林が、木戸川守備陣のウィークポイントに気付いた。相方・宍戸との連携で屋形を牽制し、木戸川のクリアボールを収める。

「(多分松野さんは、女川を狙ってる…)」

マックスにボールを預け、先程の奇策をもう一度再現するか。それとも自分でゴール前まで持ち込んで、数的優位を作るか。
小さな体でボールをキープし、少林が考えを巡らせる。


* * *


「元々木戸川ってさ、個人技主体のチームだったろ?」

一之瀬が頬杖をついたまま、他のベンチの面々に聴こえるように解説をし始めた。

「連携も勿論するけど、必要最低限っていうかさ。攻撃も守備も、兎に角個人で打開するっていうのが、長年のスタイルだった。この大会ではカラーを変えて、チームプレーをウリにしてるけど、中にはそれに適応できてない選手がいたんだ。」
「それが…女川君だったってこと?」
「そう。」

木野の言葉に、嬉しそうに顔を綻ばせる一之瀬。答え合わせをするかのように古株を見遣ると、彼は腕組みをしながら満足気に頷いていた。
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