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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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木戸川のウィークポイント

差し出された右手を掴み、壁山が体を起こす。彼の重みによろけるが、何とか豪炎寺は彼の体を引っ張りあげた。

「お前達に勝ちたいと思ったら、つい体が動いてしまった。すまん。」
「平気ッス。でも豪炎寺さん、俺だってやられっ放しじゃないッスよ。この試合、絶対負けないッス!!」
「望むところだ。今度こそ点を決めてやる。」

笑みを交わし、二人は再び敵同士に分かれた。
だが壁山は、反則行為だったとはいえ再び豪炎寺と『イナズマ落とし』が撃てたことが嬉しかった。
豪炎寺の強さ、頼もしさは、敵になっても全く衰えていない。雷門にいた頃は憧れでしかなかった彼に勝てば、DFとして、凄く自信をつけられそうな気がする。
勝ちたい。憧れのストライカーに。そして、臆病な自分に。
今までの壁山なら、こうも完璧に十八番を破られたら、臆してしまっただろう。だが今は、全く落ち込んでいない。
豪炎寺がチームを離れ、敵になるのは寂しくもあったが、こんな風に前向きに考えられるのかと感慨深く思った。

一方前線では、マックスが『フライングルートパス』を使われる前の、西垣のあるプレーに疑問を抱いていた。

「(何で西垣は、俺達の必殺技を強引に止めにいったんだろう…)」

マックスが気にしていたのは、雷門がシュートチェイン戦法を使い、染岡の『ドラグーンクラッシュ』が放たれた場面。
本来なら、シャドウの傍にいた女川が、シュートを止めるべきだった。仮にシュートブロック出来る技を持っていなかったとしても、爪先をボールに当てて軌道を変えるとか、チェインさせないようにシャドウを遠ざけるとか、対処法はあった。
だが女川の判断を待たずに、西垣が飛び出してきた。確かに彼の判断力や守備力は高い。しかしながら、的確なコーチングで仲間を動かすことも出来るのだから、女川に指示を出して凌ぐことも出来た筈だ。
あの時の西垣は、不自然な程強引に、シュートをブロックしに行った。そのことが、マックスの胸の内で、ずっと引っ掛かっていたのだ。


「ふう…私、ゴールが決まっちゃったと思ってびっくりしちゃった。」

豪炎寺のシュートがノーゴールだと分かって、大谷はホッとしたように胸に手を当てた。
ベンチで戦況を見守る他の面々も同様で、ひとまず危機を凌いだことに安堵の表情を浮かべていた。
そんな中、「そういえば」と音無が古株監督代行に顔を向けた。

「監督がさっき言ってた、木戸川守備陣の『付け入る隙』って何なんですか?」
「ん、そんなこと言ったかの?」
「言ってましたよ~、木戸川が4トップだと分かった時にー!」
「ああ、そういえばそうじゃったかな。いやはや、歳をとるとどうも忘れっぽくなっていかん。」

そう言うと、古株は椅子に座り直すと、ベンチの一番奥に座る一之瀬を見やった。
両膝の上で頬杖をつき、彼は真剣な眼差しでピッチを見つめていた。

「そんなに気になるならば、一之瀬に聞いてみい。奴ももう気づいとるようじゃからの。」
「そうなの?一之瀬君…」

木野が身を乗り出す。他のみんなも、興味津々といった面持ちで、一之瀬に視線を向けた。
全員から注目されて苦笑しながら、「監督の言っているのとは違うかもしれないけど」と前置きした上で、一之瀬が言葉を続けた。

「木戸川の弱点は、『彼』だよ。」


一之瀬が木戸川の”付け入る隙”を指で示していると、同じようにピッチ上でもマックスが何やら動き始めていた。
彼はフリーキックに合わせようと位置取りを模索する一斗に近づき、声をかけた。

「一斗。ちょっと聞きたいんだけどさ…。」
「何でしょうか?」

試合再開に備える一斗は、マックスの顔を全く見ない。
早く先制しなければと、少々苛立っている風でもあった。

「もし僕がサイドの端から端へパスを出したら、君はそれをミスらずにダイレクトで返せる?」
「は?…まあ、自信はありますよ?僕は兄より運動神経が良いので。」

ベンチで暇そうにしている兄・欠流を指で示しながら、自信ありげに一斗は答えた。
彼の返事に満足したマックスは、シャドウや染岡を集めると、彼らに耳打ちした。

「みんな聞いて。この方法なら、点を奪えるかもしれない。」

審判が再開の笛を吹く前に、マックスは手早く3人に指示を出した。
やがて、雷門のフリーキックで試合が再開された。
キッカーは栗松。数歩下がって助走をつけると、勢いよくロングボールを前線に放った。
これを受けたのは宍戸。

「こっちこっち!」

マックスが手を大きく振ってアピールしている。
彼が攻撃陣に何やら耳打ちしているのを遠目で見ていた為、宍戸は躊躇いもなくボールを預けた。

「さあ、行くよみんな!」

マックスがボールを持ってサイドを駆け上がる。それに合わせて、染岡、シャドウも並んでゴール前へ走る。一斗も右サイドに開く。

「(何を仕掛けてくる…?)」

疑問を持ちながらも、早速西垣がチェックに入る。どんな手を打ってこようと、西垣がボールを奪ってしまえば関係ない。
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