木戸川の必殺タクティクス
が、このパスは染岡がインターセプトする。ゴール前での執拗なマークに業を煮やし、下がり目に位置取っていたことが功を奏した。
「シャドウ、決めちまえ！」
「ああ…！」
点取り屋からのパスを受け、ゴール前に向き直るシャドウ。だが、彼がシュートに転じることは出来なかった。
「アッキー、突っ込め！」
「は、はい！『真・ハリケーンタックル』！！」
光宗のコーチングを受けた女川が風を纏ってタックルを仕掛ける。ドリブル技を放つ間もなく、態勢を崩す。
「良いぞ、クリアだ！！」
今度は西垣の指示。
間髪入れずに、女川によってボールが勢いよく前線にクリアされる。単なる闇雲なクリアでは無く、屋形をターゲットにした意図的なロングパスだ。
これを受けて、再度木戸川の猛攻が始まるかと思いきや、少林が飛び出してボールを奪い去った。
「(そろそろ先制点を取って流れを引き寄せないと…)少林、シュートチェインだ！！」
マックスは新必殺技をあっさり破られて茫然自失。2トップは未だにシュートを撃てていない。このまま敵に先制されては、雷門イレブンの志気が下がりかねない。
少林がボールを奪ったのはラッキーだった。少なくとも、攻撃のチャンスは、こちらにある。
宍戸がタクトを振るう。戦友の意図を理解し、少林がシュートモーションに入った。
浮かび上がったボールを前に、カンフーの型を決める。臍下丹田に力を込め、勢いよく頭を打ちつける。
「『クンフーヘッドV3』！！ハイイイイイ！！！」
気合の籠ったヘディングは、ゴールでは無く宍戸の方へ。そして宍戸もトラップせず、シュートの勢いを殺さぬ様、必殺技を重ねる。
「『ダブルグレネード』ッ！！」
両足で放つ『グレネードショット』。この時点で既に、威力はかなり上がっている。
だが、もう一つ二つ、必殺技を重ねたい。右サイドにいた宍戸から、ゴール前にパスが繋がる。これに合わせたのは、先程と同じく下がり目に構えていた染岡。
「こいつでどうだ…『ドラグーンクラッシュV3』ィィィ！！」
威力、スピードは充分。ここにシャドウが『ダークトルネード』を重ねても、そのままスルーして意表を突いても良い。
少なくとも、シャドウの傍に陣取っている女川は、シュートかパスか判断に迷う。得点の可能性は、かなり高い。
しかし此処でも西垣が顔を出した。
「点はやらない！そんな姑息な真似が、通用すると思うなよ！！」
言うが早いか、西垣は体に水色の疾風を纏っていく。さながらピッチに発生した小さな台風といったところか。
そのまま浮かび上がった彼は、渦を巻く風の中で足を振り被った。
「『ネオ・スピニングカットV2』！！」
木戸川清修との一戦目と、ダークエンペラーズ戦。嘗て、二度に渡って雷門を苦しめた『スピニングカット』の強化技。
台風の中で西垣が振り抜いた足は、風の刃を形成する。竜巻を切り裂いて飛び出した刃は、切れ味鋭くシュートを迎え撃つ。
一枚では飽き足らず、三枚もの風の刃物が雷門のチェインシュートに突き刺さり…止めてしまった。
「マジかよ…。」
染岡が顔を引き攣らせた。
『クンフーヘッド』、『ダブルグレネード』、そして『ドラグーンクラッシュ』。3種類の必殺技を重ねたシュートチェイン。個々の戦力では強豪チームに劣る雷門が、対等に渡り合う為の手段。
西垣は、それをあっさりと止めて見せた。然程大きくはない彼の体が、染岡には木戸川ゴールを覆い尽くす程に巨大に見えた。
「ガッキーさん！！」
センターサークル付近で、屋形が手を振っている。
その意図を察した西垣は頷くと、足元に収めたボールをキープしたまま声を張り上げた。
「みんな！必殺タクティクスだ！！」
ディフェンスリーダーの指示に、木戸川イレブンの表情が真剣さを増す。
眠そうな目が特徴の光宗や屋形、人の良さそうな茂木と女川、ギョロ目の黒部。彼らが眼光鋭く走り出すのを受け、武方三兄弟もサングラスを光らせた。
「いよいよか…遅れんなよ、豪炎寺！」
「お前もな！」
豪炎寺と勝も、軽口を叩きながら続く。
風が吹き、砂塵の巻き上がるグラウンドを、ワインレッドの一団が駆け抜け…助走をつけて飛び上がった。
「必殺タクティクス！『フライングルートパス』！！」
西垣の詠唱を受けて3トップと中盤の2人、そして守備陣の3人が飛び上がったのを確認し、最後に残った西垣自身も、上空高くボールを蹴り上げる。
続いて空中でボールをトラップすると、左斜め前を跳ぶ光宗にパスを出した。
ボールは光宗から黒部、そして一度着地して更に高く飛び上がった茂木へ続く。空中で目まぐるしく行われるパス回しに、雷門は対応できずにいた。
「くっ、ボールが取れない…」
体の小さな少林が、悔しそうに頭上を跳ぶ女川を見送った。
敵のトラップ際で競り合おうとする一斗も、ワンテンポ遅れてしまう。
「良いぞ良いぞ。お前達ならやれる。不可能だって可能に出来る。」
フットボールフロンティア王者の雷門を翻弄する教え子達を見ながら、二階堂が満足気に微笑んだ。
「シャドウ、決めちまえ！」
「ああ…！」
点取り屋からのパスを受け、ゴール前に向き直るシャドウ。だが、彼がシュートに転じることは出来なかった。
「アッキー、突っ込め！」
「は、はい！『真・ハリケーンタックル』！！」
光宗のコーチングを受けた女川が風を纏ってタックルを仕掛ける。ドリブル技を放つ間もなく、態勢を崩す。
「良いぞ、クリアだ！！」
今度は西垣の指示。
間髪入れずに、女川によってボールが勢いよく前線にクリアされる。単なる闇雲なクリアでは無く、屋形をターゲットにした意図的なロングパスだ。
これを受けて、再度木戸川の猛攻が始まるかと思いきや、少林が飛び出してボールを奪い去った。
「(そろそろ先制点を取って流れを引き寄せないと…)少林、シュートチェインだ！！」
マックスは新必殺技をあっさり破られて茫然自失。2トップは未だにシュートを撃てていない。このまま敵に先制されては、雷門イレブンの志気が下がりかねない。
少林がボールを奪ったのはラッキーだった。少なくとも、攻撃のチャンスは、こちらにある。
宍戸がタクトを振るう。戦友の意図を理解し、少林がシュートモーションに入った。
浮かび上がったボールを前に、カンフーの型を決める。臍下丹田に力を込め、勢いよく頭を打ちつける。
「『クンフーヘッドV3』！！ハイイイイイ！！！」
気合の籠ったヘディングは、ゴールでは無く宍戸の方へ。そして宍戸もトラップせず、シュートの勢いを殺さぬ様、必殺技を重ねる。
「『ダブルグレネード』ッ！！」
両足で放つ『グレネードショット』。この時点で既に、威力はかなり上がっている。
だが、もう一つ二つ、必殺技を重ねたい。右サイドにいた宍戸から、ゴール前にパスが繋がる。これに合わせたのは、先程と同じく下がり目に構えていた染岡。
「こいつでどうだ…『ドラグーンクラッシュV3』ィィィ！！」
威力、スピードは充分。ここにシャドウが『ダークトルネード』を重ねても、そのままスルーして意表を突いても良い。
少なくとも、シャドウの傍に陣取っている女川は、シュートかパスか判断に迷う。得点の可能性は、かなり高い。
しかし此処でも西垣が顔を出した。
「点はやらない！そんな姑息な真似が、通用すると思うなよ！！」
言うが早いか、西垣は体に水色の疾風を纏っていく。さながらピッチに発生した小さな台風といったところか。
そのまま浮かび上がった彼は、渦を巻く風の中で足を振り被った。
「『ネオ・スピニングカットV2』！！」
木戸川清修との一戦目と、ダークエンペラーズ戦。嘗て、二度に渡って雷門を苦しめた『スピニングカット』の強化技。
台風の中で西垣が振り抜いた足は、風の刃を形成する。竜巻を切り裂いて飛び出した刃は、切れ味鋭くシュートを迎え撃つ。
一枚では飽き足らず、三枚もの風の刃物が雷門のチェインシュートに突き刺さり…止めてしまった。
「マジかよ…。」
染岡が顔を引き攣らせた。
『クンフーヘッド』、『ダブルグレネード』、そして『ドラグーンクラッシュ』。3種類の必殺技を重ねたシュートチェイン。個々の戦力では強豪チームに劣る雷門が、対等に渡り合う為の手段。
西垣は、それをあっさりと止めて見せた。然程大きくはない彼の体が、染岡には木戸川ゴールを覆い尽くす程に巨大に見えた。
「ガッキーさん！！」
センターサークル付近で、屋形が手を振っている。
その意図を察した西垣は頷くと、足元に収めたボールをキープしたまま声を張り上げた。
「みんな！必殺タクティクスだ！！」
ディフェンスリーダーの指示に、木戸川イレブンの表情が真剣さを増す。
眠そうな目が特徴の光宗や屋形、人の良さそうな茂木と女川、ギョロ目の黒部。彼らが眼光鋭く走り出すのを受け、武方三兄弟もサングラスを光らせた。
「いよいよか…遅れんなよ、豪炎寺！」
「お前もな！」
豪炎寺と勝も、軽口を叩きながら続く。
風が吹き、砂塵の巻き上がるグラウンドを、ワインレッドの一団が駆け抜け…助走をつけて飛び上がった。
「必殺タクティクス！『フライングルートパス』！！」
西垣の詠唱を受けて3トップと中盤の2人、そして守備陣の3人が飛び上がったのを確認し、最後に残った西垣自身も、上空高くボールを蹴り上げる。
続いて空中でボールをトラップすると、左斜め前を跳ぶ光宗にパスを出した。
ボールは光宗から黒部、そして一度着地して更に高く飛び上がった茂木へ続く。空中で目まぐるしく行われるパス回しに、雷門は対応できずにいた。
「くっ、ボールが取れない…」
体の小さな少林が、悔しそうに頭上を跳ぶ女川を見送った。
敵のトラップ際で競り合おうとする一斗も、ワンテンポ遅れてしまう。
「良いぞ良いぞ。お前達ならやれる。不可能だって可能に出来る。」
フットボールフロンティア王者の雷門を翻弄する教え子達を見ながら、二階堂が満足気に微笑んだ。
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