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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
目次

脅威のシステム

栗松には、風丸程のスピードは無い。風丸を抑えることで、彼以下の走力の選手全員を牽制する狙いもあるのだろう。
「まあ理に適ってるとは思うけどよ、だいぶ無茶な手段に出るもんだな。木戸川の監督さんは。」
「それだけ選手を信頼しているということだろう。豪炎寺達ならこのシステムを使いこなせると信じているんだ。それに応える屋形も中々のものだがな。」
屋形 直人。前線の四人の手綱を握るばかりか、茂木と二人で中盤を守ることも任される程のプレイヤー。
彼はまだ1年生である。前回の雷門戦ではそのパスセンスを活かす場面がなかったが、チームカラーの再編と練習を重ねることで、頭角を現してきたのだ。
早くも2年後の木戸川を任される逸材として、静岡県内の新聞やテレビでも取り上げられている。

「一之瀬の言う通りになったな。」
雷門ベンチでは、半田が感心したようにアメリカ帰りのプレイヤーを見つめていた。
丁度鬼道が土門にしたのと同じような解説を、一之瀬が披露したところである。
三回戦、風丸のオーバーラップした隙を突くよう仲間に進言しただけあって、一之瀬がこのフォーメーションの意図を見抜くのはかなり早かった。
「監督、何か手を打たないと…」
五郎が不安そうに古株を見上げる。
「そう慌てるでない。敵FWが4人いると言っても、こっちも4バックで臨むんじゃ。数では負けていないぞい。」
「数よりも、能力の差が問題だと思うんですけど…」
サラッと毒を吐く冬花。だがその指摘は的を射たもので、周りにいた誰もが即座に反論出来なかった。
「飽くまでもオーバーラップが封じられただけじゃ。此方が屋形からのパスを封じとる限り、前線の4人は仕事が出来ん。それにな、敵の4バックにも隙はあるしの。」
大きなお尻を落ち着け、どっしりと構える古株。今はこの男の言葉に縋るしかない。ベンチの選手やマネージャー達は、不安を押し殺しながら戦況を見守った。

フィールドでは、宍戸と少林が古株の指示を守り、屋形を徹底的にマークしている。
先程のスルーパス以降、屋形は決定的なパスを出せずにいた。
膠着状態になった中盤に風穴を開けるべく、背番号8番が屋形のフォローに走る。
「直人、こっちだ!」
茂木 沙樹都。能力は決して高くはないが、仲間のアシストという点に於いて、実力以上の力を発揮する男である。
運動量が豊富であり、木戸川イレブンの攻守の要として此処まで勝利に貢献してきた。
彼が屋形のフォローに入ったため、状況は2vs2。実力と経験がある分、木戸川の方が有利か。
「サキさん!」
屋形から茂木へのパス。鮮やかなワンツーで少林を抜いた屋形が、前線を走り回る四本の槍に目を配る。
依然として豪炎寺には2人のマーカーが付いている。先程のシュートを警戒して、努にも風丸がベッタリと張り付いている。とすれば…狙うマッチアップは1か所しかない。
栗松が勝を意識するあまり、友のマークが甘くなっているのが見える。豪炎寺に2人割いている分、栗松がその皺寄せを被っているのだ。
宍戸達からボールをキープしている間中、ずっと狙っていた。栗松のところは勝か友のどちらかが必ずフリーになる。そこを突くつもりだった。
少林を抜いて1秒も経たぬうち、屋形のキラーパスが放たれようとするが…
「ハイイイーッ!!」
ほんの今抜いた筈の少林の足が飛び出してくる。最初から抜かれることを想定していたようなディフェンス。だがそれよりも屋形が驚いたのは、少林のボディバランスだった。
茂木とのワンツーに翻弄された少林は、抜かれてすぐ、茂木と激突した。だが態勢を崩しながらも、器用に足を伸ばし、ボールだけを正確に弾きだしたのである。
弾かれたボールは宍戸が拾い、すぐさまドリブルに転じる。
「シャドウさん!」
アフロの司令塔から、闇のストライカーへパスが繋がる。すぐさまシュートに転じようとするシャドウの前に、木戸川のディフェンスリーダーが立ち塞がった。
「久し振りだな、シャドウ!」
「西垣…」
エイリア学園による中学校連続破壊事件の最中。御影専農の杉森の呼びかけで、イナズマキャラバンのバックアップチームとして招集されたのがシャドウと西垣だった。
3人ともお互いに面識は無かったが、エイリア学園を倒すこと、雷門の力になりたいという想いからすぐに意気投合した。
だが実際は、イナズマキャラバンの追加メンバーとしての出番は無く。皮肉に仇敵であるエイリア学園側のバックアップメンバーとして、円堂達の前に立ちはだかることとなった。
あれ以来殆ど連絡を取ることもなく疎遠になっていたが、何の運命の因果か…この試合で再会を果たしたという訳だ。
「快進撃を続けているようだが、この試合ではそうは行かないぜ!『スピニングカット・リバース』!!」
武方三兄弟の『バックトルネード』よろしく、後ろ回し蹴りを放つ西垣。通常の『スピニングカット』以上に振り被られた足で思い切り地面を撫でれば、ピッチを切り裂くように水色の
エネルギー波が噴き出す。切れ味鋭い水色の壁に阻まれ、ボールを取り落としたシャドウの眼前で、西垣が不敵に笑った。
「どうだシャドウ。闇の炎だろうが何だろうが、俺の風で掻き消してやるぜ。」
「くっ…」
言うが早いか、零れ球を拾って前線に放る。
少林の頭上を飛び越えるようなロブパスをヘッドでいなし、屋形が三度ボールを支配下に置いた。
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