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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
目次

木戸川のミーティング

「(二回戦で俺が早々と退場したせいで、東さんには負担を掛けさせてしまった。今まで休んでいた分、俺が東さんをフォローするッス…!)」

東と壁山。同じ山属性、同じセンターバック。そして豪炎寺を抑える役割を背負った二人。
オフェンスにキーマンがマックスと一斗なら、ディフェンスの鍵を握るのはこのコンビの連携だろう。

「豪炎寺のマークがメインじゃが、もしペナルティエリア付近に3人以上FWが侵入して来たら、風丸や栗松も協力して止めてくれ。但し。壁山か東、どちらか1人は豪炎寺を見ていること。」
「「「はい!!」」」

センターバックとの連携に、オーバーラップ。風丸と栗松に与えられた役割は、どちらもサイドバックには必要な要素である。
豪炎寺という強敵と試合をするのに、その大役を味わえない飛鷹は、拳をギュッと握り締めた。
だが、この試合は今まで以上にへヴィな試合になる。対戦前のこの空気から、彼は何となくそれを察していた。
スポーツと不良。世界は違えど、これまで何度も自慢の蹴りで修羅場を潜り抜けてきた、”蹴りのトビー”。その喧嘩屋としての勘が、ひりつく空気感を敏感に感じ取ったのである。
いずれ来るであろう自分の出番を待つため、飛鷹は逸る気持ちを抑えて古株の指示を聞いていた。

「ゴールキーパーとキャプテンは円堂だ。相手は豪炎寺じゃからといって、意識し過ぎてはいかんぞ。木戸川は彼だけのチームじゃない。寧ろ豪炎寺を囮にして、武方三兄弟が襲い掛かってくるケースも想定できる。極力敵のシュートチャンスを減らすためにも、お前さんがDFを動かして守備陣をまとめんとな。」
「はい!」

円堂が腕に巻かれたキャプテンマークを握り締める。この腕章を託されること、ゴールを守ることの重さ。
自分がチームを纏め、木戸川を倒すのだ。今朝この会場に向かうまで、豪炎寺との対決ばかりに意識が向いてしまっていたが、考えてみれば武方三兄弟一人一人も全国区のFWな上に、彼らは『トライアングルZ』なる強力な連携技を持っている。此方が油断すれば、彼らはそこに付け込んでシュートの雨を浴びせてくるだろう。
それを防ぐ為にも、豪炎寺だけでなくもっと敵のオフェンス陣全員を見なければならない。

「それと…」

古株は言葉を切ると、若干強めの風が砂埃を巻き上げるグラウンドを見回し、続いてどんよりと曇った空を見上げた。

「この悪天候じゃ、ひょっとしたら雨が降ってくるかもしれん。もしそうなっても慌てず、この一週間の練習を思い出して、同じ調子でプレーしなさい。」

その言葉に、選手全員が一週間続いた泥沼練習を思い出した。
あの練習は必殺タクティクスを習得させるために、ボールキープ力を身に付けさせる狙いがあったのだと思っていたが、他にどんな意味があったのだろう。
円堂達が思案しているうちに、古株は次の指示を出した。

「それから敵のセットプレーについてじゃが…」

* * *

「雷門は、強い。」

一方此方は、木戸川清修中学のベンチ。
ウォーミングアップを終えたイレブンを見回した二階堂 修吾監督は、開口一番対戦相手の実力を評価した。

「お前達も感じているだろう。今年の全国大会優勝は勿論だが、今大会でも格上のチームを倒してきている。正直、東京国際学園を破るとは思っていなかった。」

同調するように、選手達は首を縦に振って見せた。
東京国際学園は、サッカー界のレジェンド、レビン・マードックが監督を務める多国籍チームだ。世界各国から優秀な選手を留学生として招き入れ、創部以来無敗を誇り、「中学サッカー界の勢力図を書き換える」とすら言われた実力校である。その国際色豊かな強豪すらも倒し、雷門は快進撃を続けている。もはや、彼らの実力は疑う余地はなかった。

「今の雷門は、はっきり言って四天王と同格、いやそれ以上かもしれない。」

フットボールフロンティアで20年に渡って上位を独占し続けた”四天王”。北の農産光、西の雌斗路学院、南の狩火庵。そして、10年前から東の王者としてその名を連ねる木戸川清修。今や雷門は、自分達と同じレベルにまで上り詰めていると二階堂は語った。
以前なら、「いやいや監督ぅ!そりゃ過大評価し過ぎっしょ!みたいなぁ!?」と真っ先に異を唱えたであろう武方 勝も、黙って二階堂の言葉に耳を傾けている。
その表情の真剣さは、これまでとは別人の様だ。思えば、今年のフットボールフロンティアで雷門に敗北して以降、最も精神的に成長したのはこの男かもしれない。
以前は自信過剰で目立ちたがり、スタンドプレーに走りがちなチームに於いても一番エゴイスティックな性格だったが、雷門に負けてから随分考え方が変わったようだ。
昨年の決勝戦に豪炎寺が出場できなかった経緯を知り、誤解が解けたのも要因の一つかもしれない。また、エイリア学園の襲撃で屈辱的な大敗を味わったことも相まって、個人プレーの限界を悟ったのだろう。弟達と共に他の選手に歩み寄り、チームワークを高めるようになった。
元々負けず嫌いな性格で、練習熱心ではあったので(そもそもスタメンに抜擢されたのも、豪炎寺に対するライバル意識があったためである)、チームに溶け込むのもそこまで難しくなかった。勝程ではないにしろ、同じく個人主義者の集まりであった他の選手も、率先して歩み寄ってきた勝や友、努の姿に感化され、西垣の助力もあり、木戸川の連携力は高まって行った。勝つためとあらば、他の選手を活かして自分は黒子役に徹することも厭わない、そんなチームとなった。
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