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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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木戸川清修中、会場入り

その三人の後ろから、眠そうな目の少年やヘアバンドを付けた目つきの鋭い少年、ゴールキーパーだろうか、大柄で別のユニフォームを着た少年らが続く。
創部以来変わらない、ワインレッドのユニフォーム。首回りと袖、裾に入った黒いワンポイントが程良きアクセントになっている。
彼らこそ、円堂達の五回戦の対戦相手。サッカー王国静岡の名門校にして、四天王の一角。”東の王者”の肩書を持つエリートチーム。
私立木戸川清修中学校。
続続とピッチに足を踏み入れ、雷門と相対する木戸川イレブン。そして最後尾、他のイレブンから一歩退く形でやって来たのは―――
「―――来たな、豪炎寺…!」
逆立ったクリーム色の髪に切れ長の目。中学サッカーファンなら知らない者はいない、炎を操る伝説のストライカー。
円堂をはじめ、雷門イレブンの誰もが、対戦を心待ちにしていた”彼”―――

―――豪炎寺 修也!

すっかり雷門の黄色と青のユニフォームの印象が強くなったが、木戸川の赤いユニフォームも様になっている。

「待たせたな、円堂。」
「いつもお前は遅いんだよ!」

まずは遅れて会場入りしたことを謝罪しつつ、豪炎寺は懐かしい顔ぶれに目を細めた。
円堂も嬉しそうに言葉を返す。
フットボールフェスティバルが開催されてから一か月。その一か月の間に、豪炎寺は随分顔つきが変わったように見える。無論良い意味で、だ。
ユニフォームから覗く腕も、筋肉がついている。元々細面だった顔も更にシャープになり、此処に辿り着くまで、相当な修羅場を潜ってきたことを窺わせた。
スポーツニュースや動画で見るより、現物が放つオーラは一か月前のそれとはだいぶ変わっていた。
暫しの間感慨深げに雷門イレブンを見回した後、「試合、」と豪炎寺が口を開いた。

「傘美野戦から動画で全部見たぞ。調子は良さそうだな。」
「そっちこそ。クラブチームを倒したり大活躍じゃないか!」
「当然…今の木戸川は、最高のチームだからな。」

そう言うと豪炎寺は今のチームメイト達を指差した。なるほど、彼と共に初戦から強豪との戦いを勝ち抜いてきたイレブンは、少しの油断も出来ない雰囲気を持っている。
一見奇抜で個性的な三人組…”トライアル・トライアングラー”の異名を持つ武方三兄弟も、豪炎寺に匹敵する強力なストライカーである。

「豪炎寺ィ!早く準備手伝えよ!みたいな?」
三兄弟の長男、武方 勝が大声で手を振っている。
「じゃあ、続きは試合でな。」

片手を振って円堂達に背を向けると、豪炎寺はチームに合流した。
ボールを小脇に抱え、シュート練習に入ろうとすると、勝が首に腕を回してきた。

「豪炎寺、再会を懐かしむのも良いけどよ。手加減はするなよ。みたいなぁ?」
「当然。やるからには全力で勝ちに行くさ。」
「それを聞いて安心したぜ。ジェミニストームにはリベンジできたんだ。雷門にも勝たねえと気が済まねえからな。」

三兄弟の中で誰よりも、そしてチームの中で誰よりも勝利を求める勝。彼にとって今年のフットボールフロンティア全国大会準決勝での敗北は、昨年以上に悔しいものだった。
雷門を弱小校と侮ったまま試合に入った為に、エンジンがかかるのが遅かった。豪炎寺のワンマンチームと考えたばかりに、雷門の強さを悟った時には、もう取り返しがつかなくなっていた。
今はもう、雷門を侮って等いない。対戦相手に対する油断、自分達の実力に対する過信、元チームメイトの豪炎寺に対する確執。それら全てを乗り越えた勝は、本物のエースストライカーとなったのである。
豪炎寺や三兄弟がシュート練習を始めたのを見て、雷門イレブンは木戸川のアップ風景を見ることにした。

「すげえ…」

宍戸が思わず感嘆の声を漏らしたのは、シュート練習ではなくオフェンス陣のパスワークである。
明紋FCに匹敵する精度の高いパス回しは、これまで個人技のチームとされてきた木戸川の変化を象徴する物だった。
元々木戸川清修は、静岡県内のみならず、近県の実力者が門を叩く名門校。集まるのは当然、自分の力に自信を持つ、我の強い少年達ばかりだ。
武方三兄弟をはじめ、今年のレギュラーメンバーもその例の漏れない。連携よりも個人技で敵を圧倒するタイプ。部員達はそれが木戸川のスタイルであるとし、だからこそ強豪たり得ると信じてきた。
だが、雷門戦での敗北を契機に、チームカラーが変わったようだ。
これまで選手同士で主張をぶつけさせ、衝突を経て結束を強めさせてきた二階堂 修吾監督も、話し合いを密にし、連携を強める方向へ舵を切った。
そしてそれは功を奏し、再び加入した豪炎寺とも特に軋轢なくチームにフィットさせることが出来た。
今の木戸川は連携のチーム。試合前のウォーミングアップで、円堂達はそのことを目の当たりにした。
試合開始まで15分となったところで審判からウォーミングアップ終了の指示がされ、両校はそれぞれのベンチに集まった。

「さて…いよいよ諸君らもお待ちかね、スタメン発表の時間だぞい。」
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