4話
前座番組の生放送と同時刻、棋院はパニックになっていた。進藤ヒカルがそれなりに碁を打てるのは予想していたが、プロ棋士である伊角に軽々と指導碁を打てるレベルだとは思っていなかったからだ。
藤崎あかりの師匠だという証拠を提出されていても、「碁の腕を磨くには時間がかかる」という棋界での常識が、判断の邪魔をした。まさかヒカルが逆行した元トッププロ棋士だとは思い至る訳もなく、ある程度囲碁が得意な有名芸能人だと、無意識下で侮っていたのだ。
「しっかし・・・よくもまあ、このような綺麗な指導碁を打つのぉ。伊角も若手にしては十分強いと言うに・・・全く違和感なく彼奴の長所を引き出しておる指導碁とは・・・。」
「このような機会でなければ、是非とも対戦してみたいものだな。」
「ふむ。」
あかり騒動には口を挟まず、特番の対局者でもない塔矢四冠、桑原本因坊は、素直にヒカルの指導碁を賞賛している。
「あははww冗談じゃないっすよ!これ、俺多分負けるって!」
「俺も怪しいかもしれないな。普段の対局なら強者との対戦は望むところだが・・・。」
「いや、困りますよ!罰ゲーム、何吹っかけられるか分かったもんじゃないもん!」
高段者のプロとして負けが許されない立場な上、名指しでヒカルとあかりを批判してしまった、緒方九段と倉田七段は、やや顔が青くなっている。先に喧嘩を売った以上、賭け碁に負けたらシャレにならない罰ゲームを言い渡されかねない。
「(確かに進藤君は藤崎さんより明らかに強いだろう。恐らく僕よりも強い。明日・・・どうしよう、楽しみで眠れそうにない。)」
数合わせ(兼囲碁棋士の宣伝役)の塔矢アキラ七段は、特にあかりを批判したわけでも、ヒカルに喧嘩を売ったわけでもない。またあかりを通してヒカルから「良い対局にしよう!」と伝えられていたため、同い年の強者との勝負にワクワクしていた。
それ以外の(二流・三流)プロ達は・・・
「何でこんな手をこの段階で読めてるんだよ!?」
「ちょっと待って、ここの手順は何故こう打たないんだ?」
「進藤ヒカル、時間使ってくれよ!伊角君めちゃくちゃ苦しそうじゃないか!」
等々ヒカルやトッププロが聞いたら苦笑いしそうな検討会wwを繰り広げていた。こうしてあたふたしている間に、ヒカルVS棋院の勝負はやってきた。
「さあやってまいりました、正規の大勝負!天才子役進藤ヒカルVSプロ囲碁棋士3人!果たして進藤ヒカルはプロ棋士相手に勝利を掴み、スキャンダルの汚名を晴らすことが出来るのか!?」
ゴールデンタイムに冠番組を幾つも持つ大物司会者が述べるタイトルを聞き流しながら、ヒカルは「これ、結構視聴率怖いよな〜」などと考えていた。
何せ有名子役の進藤ヒカルのスキャンダル絡みとは言え、勝負は一般的にはマイナーな囲碁。当然プロ棋士の知名度も低く、今回出場の緒方、倉田、塔矢アキラでは視聴率を取ることは絶望的。
解説役に塔矢行洋の名前があるため、それにより囲碁ファンの視聴率は多少伸びるかもしれないが・・・知らない人からすると「誰、このおっさん?」である。
コメント係として用意された囲碁を嗜む芸能人達も、タレントとしては二流どころばかりなので、進藤ヒカルと大物司会者の数字頼りなのだ。それが分かっている2人は、楽屋にいた時からかなりピリピリとしていた。
「進藤君。勝ち負けはともかく、盛り上げてね。」
「いや、無理ですよ。囲碁って対局中喋るの厳禁なんで。まあテレビ対局ってこともあるし、俺に対して話し振ってくるのは大丈夫ですが、プロ棋士相手にそれやるとマジ睨みされるでしょうから、気をつけて下さい。(俺と佐為が滅多打ちにするから、話す余裕なんかないだろうし。)(ですね。応手を考えるので手一杯でしょう。)」
「視聴率・・・。」
「塔矢アキラ七段には気を使って穏やかに行きますが、あとの2人に対しては容赦なく攻めるので、俺に時々話題や解説役を振りつつ、大盤解説のプロ棋士とタレント達で保たせてください。くれぐれもあかりに無理はさせないでくださいね。」
「なるほど。藤崎あかりプロに解説を頼むのはOKかい?」
「もちろん大丈夫です。普段のエピソードとかも聞いてくれていいですよ。ホント、今のところ幼なじみ兼愛弟子以外の関係ないですし。」
「今って事は・・・今後は?」
「可能性はありますね。俺既に一生生活出来るだけの金は貯めてあるから、仕事なくなったらテレビ引退しますし、就職する気もない。そうなったら完全自由の身ですので、1日中家に引きこもって、碁を打ちながら過ごすつもりなんです。あかりも囲碁漬けで恋愛の気配もないので・・・俺たちの親仲良いから、30歳くらいまで双方恋人無しなら、結婚させらされるかもしれない。」
「なるほど。美男美女でお似合いなのに、冷めてるね〜。」
恋愛感情は無いと言いつつ、しっかり棋院からの喧嘩を買うあたりに、藤崎あかりとの仲の良さが現れている。
この騒動の火付け役であるお馬鹿タレントを、派閥に入れていたために、尻拭いとして司会役を押し付けられた大物司会者。
進藤ヒカルとの対立やNGリスト入りなど御免な彼は、場を盛り上げつつも、ヒカルの怒りを買わない立ち回りに、頭をめぐらせるのであった。
藤崎あかりの師匠だという証拠を提出されていても、「碁の腕を磨くには時間がかかる」という棋界での常識が、判断の邪魔をした。まさかヒカルが逆行した元トッププロ棋士だとは思い至る訳もなく、ある程度囲碁が得意な有名芸能人だと、無意識下で侮っていたのだ。
「しっかし・・・よくもまあ、このような綺麗な指導碁を打つのぉ。伊角も若手にしては十分強いと言うに・・・全く違和感なく彼奴の長所を引き出しておる指導碁とは・・・。」
「このような機会でなければ、是非とも対戦してみたいものだな。」
「ふむ。」
あかり騒動には口を挟まず、特番の対局者でもない塔矢四冠、桑原本因坊は、素直にヒカルの指導碁を賞賛している。
「あははww冗談じゃないっすよ!これ、俺多分負けるって!」
「俺も怪しいかもしれないな。普段の対局なら強者との対戦は望むところだが・・・。」
「いや、困りますよ!罰ゲーム、何吹っかけられるか分かったもんじゃないもん!」
高段者のプロとして負けが許されない立場な上、名指しでヒカルとあかりを批判してしまった、緒方九段と倉田七段は、やや顔が青くなっている。先に喧嘩を売った以上、賭け碁に負けたらシャレにならない罰ゲームを言い渡されかねない。
「(確かに進藤君は藤崎さんより明らかに強いだろう。恐らく僕よりも強い。明日・・・どうしよう、楽しみで眠れそうにない。)」
数合わせ(兼囲碁棋士の宣伝役)の塔矢アキラ七段は、特にあかりを批判したわけでも、ヒカルに喧嘩を売ったわけでもない。またあかりを通してヒカルから「良い対局にしよう!」と伝えられていたため、同い年の強者との勝負にワクワクしていた。
それ以外の(二流・三流)プロ達は・・・
「何でこんな手をこの段階で読めてるんだよ!?」
「ちょっと待って、ここの手順は何故こう打たないんだ?」
「進藤ヒカル、時間使ってくれよ!伊角君めちゃくちゃ苦しそうじゃないか!」
等々ヒカルやトッププロが聞いたら苦笑いしそうな検討会wwを繰り広げていた。こうしてあたふたしている間に、ヒカルVS棋院の勝負はやってきた。
「さあやってまいりました、正規の大勝負!天才子役進藤ヒカルVSプロ囲碁棋士3人!果たして進藤ヒカルはプロ棋士相手に勝利を掴み、スキャンダルの汚名を晴らすことが出来るのか!?」
ゴールデンタイムに冠番組を幾つも持つ大物司会者が述べるタイトルを聞き流しながら、ヒカルは「これ、結構視聴率怖いよな〜」などと考えていた。
何せ有名子役の進藤ヒカルのスキャンダル絡みとは言え、勝負は一般的にはマイナーな囲碁。当然プロ棋士の知名度も低く、今回出場の緒方、倉田、塔矢アキラでは視聴率を取ることは絶望的。
解説役に塔矢行洋の名前があるため、それにより囲碁ファンの視聴率は多少伸びるかもしれないが・・・知らない人からすると「誰、このおっさん?」である。
コメント係として用意された囲碁を嗜む芸能人達も、タレントとしては二流どころばかりなので、進藤ヒカルと大物司会者の数字頼りなのだ。それが分かっている2人は、楽屋にいた時からかなりピリピリとしていた。
「進藤君。勝ち負けはともかく、盛り上げてね。」
「いや、無理ですよ。囲碁って対局中喋るの厳禁なんで。まあテレビ対局ってこともあるし、俺に対して話し振ってくるのは大丈夫ですが、プロ棋士相手にそれやるとマジ睨みされるでしょうから、気をつけて下さい。(俺と佐為が滅多打ちにするから、話す余裕なんかないだろうし。)(ですね。応手を考えるので手一杯でしょう。)」
「視聴率・・・。」
「塔矢アキラ七段には気を使って穏やかに行きますが、あとの2人に対しては容赦なく攻めるので、俺に時々話題や解説役を振りつつ、大盤解説のプロ棋士とタレント達で保たせてください。くれぐれもあかりに無理はさせないでくださいね。」
「なるほど。藤崎あかりプロに解説を頼むのはOKかい?」
「もちろん大丈夫です。普段のエピソードとかも聞いてくれていいですよ。ホント、今のところ幼なじみ兼愛弟子以外の関係ないですし。」
「今って事は・・・今後は?」
「可能性はありますね。俺既に一生生活出来るだけの金は貯めてあるから、仕事なくなったらテレビ引退しますし、就職する気もない。そうなったら完全自由の身ですので、1日中家に引きこもって、碁を打ちながら過ごすつもりなんです。あかりも囲碁漬けで恋愛の気配もないので・・・俺たちの親仲良いから、30歳くらいまで双方恋人無しなら、結婚させらされるかもしれない。」
「なるほど。美男美女でお似合いなのに、冷めてるね〜。」
恋愛感情は無いと言いつつ、しっかり棋院からの喧嘩を買うあたりに、藤崎あかりとの仲の良さが現れている。
この騒動の火付け役であるお馬鹿タレントを、派閥に入れていたために、尻拭いとして司会役を押し付けられた大物司会者。
進藤ヒカルとの対立やNGリスト入りなど御免な彼は、場を盛り上げつつも、ヒカルの怒りを買わない立ち回りに、頭をめぐらせるのであった。
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