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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
目次

さんじゅうきゅうこめ


※時間軸 キラ捜査中
※ある意味 番外編
※思い付きネタ

「いらっしゃいませ、ライト君」
「…なにをしているんだ?島崎」
「コンビニ、始めさせられました」

某牛乳マークのコンビニ制服を身にまとい、ライトが持ってきた籠の品を手際よく袋に詰めているのは彼が務める捜査本部のトップ2のひとり。名前や経歴はおろか、顔すらもシークレットになっている彼女は本来ならばこんな場所でバイトをしていていい人物ではないはずだ。そしてここまで愛想のない店員など見たこともない。
だが現にこうしてレジを打っていき、何でもない風に「1140円です」とライトに向けて言っている為、これはどうやら現実のようだ。

一体何の企みがあるのだろうか。
もしかしたらLの差し金でこうして表に出てきたのかもしれない。
「殺/せるものなら殺/してみろ」とまるで挑発するかのように。

「1200円でいいか?」
「1200円のお預かりです。60円とレシートのお返しになります」
「あ、ありがとう」

ビニール袋を受け取り、財布におつりを入れ、普段なら、ここで立ち去るのだが目の前にいるこの場にそぐわない知り合いにそれも出来ずにいる。一方、接客を終えたSは姿勢正しい状態でレジ前に立ち、いつまでも立ち去らずにいる月のほうを真っすぐに見つめている。

「あー、竜崎は知っているのか?まぁ知っているよな」

咄嗟に出たのは彼女の相棒の名。偽名だが。
彼女と行動を共にしている彼がこれを知らないハズがないだろう。
ここにきたのも十中八九、Lの指示だろう。彼女が自らここに来る理由などないはずだし、リスキーなことなどしない主義だということは共に居た時間は短くとも感じられる。だとしたら捜査関係、それもキラ事件の。そうだとすれば現在Lにキラだと疑われている自分があまり踏み込んだことは聞かない方が良かっただろうか。そう思い、質問したことを後悔していると、Sは首を横に振り少し考えてから重い口を開いた。

「竜崎もワタリも知りません。私がバイトしているのは竜崎と喧嘩したからなので」
「喧嘩?Sが?竜崎と?」

眉をひそめてしまうのは無理がないと思う。
ライトと2人が知り合ったのは、彼が大学に入学した年であり、それ以前の事は2人も「個人情報はお教えできません」ときっぱり断られている為、知ることもできなかった。
きっとこの先2人が過去の事をライトに、いや、お互いにお互い以外の人間に話すことは今後一切ないだろう。2人の立場を考えればそれが当たり前だと思う。
だが、知り合った年数は少ないにせよ、その間で2人が喧嘩は元より、緊迫とした空気になったことすらライトは知らない。Lとライトの場合、知り合った原因がライトがキラ容疑者あったことからな為、それなりにギクシャクした空気になったがその時もSはどちらかというとその緊迫した空気を和らげる要員であったように記憶している。
そんな彼女が何故。

「竜崎が私の角砂糖を勝手に全部開けたので」
「…え?角砂糖?」
「はい。自分の分が手に届く範囲にないからと言って、こちらに手を伸ばしたんです。信じられません」
「…それだけか?」
「重要なことです。一緒に生活するうえで承諾なく人のものに手を伸ばすなど」

唖然と話を聞いていたライトは口元を引くつかせ、そんな事の為に彼女は顔を晒し危険を冒しているのかと思うとため息を深く吐いてから、携帯の連絡先にある「ワタリ」宛に電話をかけた。




「…っていう夢を見たんだけど、2人は喧嘩してないよな?」
「したとしても私にはコンビニ店員など無理ですね」

コンビニ店員の体力をなめないでいただきたい、とパソコンで作業する手を緩めずにいうSにライトは「あはは…Sには確かに無理だな、体力的に」と肩をすくめた。

その細腕ではきっと商品の入ったカゴを客から受け取った瞬間落としそうだ。
それに彼女は愛想良く笑いながら「いらっしゃいませ」なんて言っているところを想像できない。

「そもそもコンビニ自体行ったことないだろう?」
「ありますよ」
「あるのか!?」

L同様、引きこもり気質なSがまさかコンビニに。
大学に短期間と言えど来ていたLよりも確実に引きこもりだと思っていたのに。
唖然としているライトにSは少し顰めた顔で彼を振り返り「何ですか、私だってコンビニくらいは行きます」と不機嫌さを隠す事無く言うとライトはコンビニにいるSが想像できないと素直に感じた。

「ええ、一度だけ。捜査をしていく上で色々な場所を見に行くのも勉強だと思ったので。コンビニ業界用語は未だに理解できませんが。「しゃっせー」「っしたー」と聞いたときは正直驚きましたが。ワタリからその後若者言葉でしょうと教えてもらいました。そのような挨拶が許される社会が存在するなんて想像もしていませんでしたが、よくよく考えてみればテレビ業界の用語もしかり、その業界独自の用語もあるのだと悟りました。簡潔に挨拶をし、お客様を待たせない。そんな姿勢からくるのでしょうか。」

「いや、コンビニで働いたことはないが、違うと思うぞ」

「そう言えば体育会系でもそういう挨拶をする人もいますね。もしや、来た人間に学生時代と同じ挨拶を向けることによって、まだ夢に向かって輝いていたころを思い出させようと…」

「いや、違うと思う。」

「日本人は奥深いですね。そのような挨拶ひとつとっても、そこまで色々なことを考えているとは。素晴らしい国です。月君」

「うん…そうだな…(諦めた)」

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