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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
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さんじゅうごこめ


部屋に漂う気まずい雰囲気は、むくりと立ち上がったLによって壊された。
携帯が当たったところで人が気絶などするはずもなく、このままではバレてしまうと再び訪れた緊張感はLの背後からやってきたものの手でいとも簡単に遮られた。

見られる!そう思った彼らが行動を起こそうとした時だった。

すぽーんと綺麗にLの頭にはまったのは用意していたジャックオランタン。
人が被れるようにくり抜いてあったそこに入ってしまったLは暫し沈黙の後に「何するんですか月くん」と後ろにいるであろう月のほうを見つめる。いや見つめるなんて生易しいものではない。明らかに不機嫌オーラを纏った雰囲気に、いくらジャックオランタン越しとは言え迫力があった。

「手が滑ったんだ、急にLが動いたりするから」

「どうにも皆さんは私をこの部屋に招き入れたくない様子ですね」

「そんなことないさ。ただほら、言ったろ?僕の抱えてる案件で少し聞いてほしい話があるんだって。人に聞かれたくない話でもあるからみんなには席を外れてもらうように言っておいたんだ」

「何か企んでいたのではないのですね?」

ジャックオランタンを外したLがじとりと月を見つめると「そんなことあるわけないじゃないか」と笑顔ではぐらかした。

「そうですか。なら良いのですが」

少し意地悪が過ぎただろうか、そんなことを思いながら振り向いてほしくないことが顔に出ている月の意思に沿うようにそのまま後ろを振り向かずに後ろ手で扉を閉めた。

「ナイスです、月君」

それにはSも称賛の声を上げた。上げた、と言っても小声でだが。
パーティーの準備はワタリの協力もあってか思ったよりも早めに済み、ついでだからとハロウィンも兼ねて色々なお菓子をテーブルに用意した。

これだけあればきっとLも満足いくパーティーになるだろう。

プレゼントは、後ろに並べられたジャックオランタンと一緒に並べられた箱の中。
後は主役が来るのを待つだけ。




「誕生日おめでとう!」

「…まあ、はい。ありがとうございます」

Lの反応は予想通りというか、淡々としたものだった。
それに彼らはがっかりするどころか予想通り過ぎて逆に嫌な気分にさえならない。
あの時Lが後ろ向きに扉を閉めた時から、なんとなく気が付いていた。
「世界の名探偵」の目を欺くのはまだまだ無理なようだった。

「ケーキは、ワタリさんがL好みのものを用意してくださったのですよ」

「そうでしたか。通りで今食べたいものが並んでいると思いました。」

「その他のおかず類は俺とメロで用意したんだぜ」

「そうでしたか。通りであまり食べ馴染みのないものが並んでいると思いました。私は手を付けないので皆さんでどうぞ」

「メロ落ち着け。ダメだぞその拳を降ろしたら。「拳で」なんて言うやつもいるけど本当に「拳で」解決したらダメだかんな。」

ケーキを手に取りさっそく口に運ぶLは無感動というか、リアクションの薄さはいつも通りだ。
それを見ていたメロ、マットはこんなものかと言いたげに自分たちも料理に手を付け始めた。

「照れていますね」

「ええ、照れていますね」

「ホホホ」

それを少し離れたテーブル席から見守っていた(精神的な)大人組が口々にそう言った。
Lの情報は国家秘密だった。それは本名はもちろん、彼の細かな情報まで外部に漏らされないように厳重に守られてきた。それは同じハウス出身者である彼らとて例外ではなく、Lの情報として知っているものは数少ない。

とはいってもそれは彼らも同じである。
メロ、マット、ニア、Sの情報はハウス出身者以外の人間に他言することを固く禁じられている。
ハウスに居た時はそれなりに誕生日をお祝いしてもらうこともあったが、卒業してからは誕生日などあってないようなものだった。

だからこそ、今回サプライズとして誕生日のお祝いをすることは彼らにとって重要なことだった。

「ワタリさんも協力してくださりありがとうございます。きっと反対されるものだと思っていたくらいでしたので、許可をもらった上に協力までしてくれるなんて思ってもみませんでした。」

「この中ででしたら構わないでしょう。それに、あんなに楽しそうなお顔をされているのを見たら断るなんて野暮でしょう」

メロ、マット、月に囲まれたLはいつもの調子でいるがいつもよりも口元が緩んでいるのが見える。
彼らが来るまではひとり、薄暗い部屋で捜査を続けていたから、こうして誰かがそばにいるということだけでもLにとってはいい方向に刺激のあることだったらしい。

「来年はサプライズではなく、普通にお祝いしましょうか」

「そうですね。サプライズにしてもバレてしまっていましたし。悔しいものですね、こうもあっさりと勘付かれてしまうなんて…次は徹底的に隠し通すというのもありですが」

「ニアは意外と負けず嫌いですね。」

向こうでメロとLがチョコレートケーキの奪い合いをしているのを聞きながらつかの間の休息を過ごした。



おまけ

「チョコレートケーキは俺がワタリさんにお願いして注文してもらったんだ」

「だから何だというのです?誕生日くらい私に譲ってください」

「他のは全部譲るって言ってんだろ。これは俺が食べるように頼んだんだ」

「L、大人気ないぞ。それはメロに譲って他を食べればいいじゃないか」

「いいえ、今日は私が主役です。わがままを言ってもいい日なはずです」

「アリーさん!Lが!」


「アリーさん、メロが呼んでいますよ」

「聞こえないふりをしているのです。言わないでくださいニア君」


L 誕生日篇 完
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