さんじゅういっこめ(番外編⑤)
「えー前回から引き続きやっていきますこのコーナー。今回はSのほうが仕事で離席してしまいましたのでわたくし、Lと」
「メロでお送りしていきまーす…」
画面に向かってひらひらと手を振るLと、遠い目をしながらため息を吐くメロ。
そんなメロにLは手元にあったドーナッツをかじりながらじとーっとした視線を向けた。
「なんですかそのやる気のない声。こちらまでやる気を削がれるのでもう少しメリハリをつけてもらえませんかね。元気よく、さんはい」
「いや、アンタの声も気の抜けた声してるぜ。俺より目が死んでやがるし」
「いいえ、私の目は死んじゃいませんよ。今は死んでいてもちゃんとしなきゃならない時には誰よりも煌めくからいいのです。今はその時じゃないだけで」
「アンタの目が輝いている時なんて見た事ねぇけど」
「それは残念ですね。多分タイミングが合わなかったのでしょう、次に煌めきそうな時は事前に連絡を入れておきますので、いつでも連絡できる状態でスタンバっていてください」
Lの気の抜けた声に言い合う気力さえ削がれる気持ちになったメロは手元のチョコレートを口に運び、ぱきりと音を立てて口に含むと、手元の紙に目を移した。
「大体なんでアリーさんが抜けるんだよ。俺アンタと2人で話したことないし、今度で良くねぇかこの続き」
「そうもいきません。確かに私も君と2人残されることなんて数える程もないので若干緊張していますが、新入部員として部活動に励んでいく一年生然り、学年が上がりクラス替えで親しい人間がおらずおろおろしながらも卒業式直前になるとそんなクラスでも離れるのがちょっぴり惜しくなって、あれなんで涙が出るんだろうなんて思うピュアな少年少女然り。大学高校を卒業して、企業に勤めだしたけれどなかなか社の雰囲気に馴染み切れなくて、自分の未熟さを自覚し始めた新社会人の新芽の葛藤然り。新しいものに向かっていく人は輝かしいとは思いませんか。そういう辛さも後になって思い出してみると、懐かしい思い出に変わっているものです。そんな彼らの純粋な気持ちをですね…何の話でした?」
「いやそれ聞きたいの俺のほうだけど。俺とアンタの組み合わせがあんまりないって話からなんでそこまで飛躍するんだよ」
「まあ、はい。そういうことです」
「いやどういうこと?説明めんどくさくなってんじゃねぇよ。急に長文話したからって喋るのめんどくさくなるのやめてくれねぇかな。ここ喋る場だから。お喋りしなきゃ展開していかないから」
珍しい組み合わせではあるが、Lの醸し出す雰囲気にメロは開始何分かでげんなりしている。
無理もないと言ったら、無理もないのだが。
「というかテロップサボってんじゃねぇよ。なんで画面上に俺とLの名前表記がないんだ、今回」
「普段は私とSが敬語キャラなので区別がつくようにと名前テロップを出していますが、今回は私とメロの2人ですからね。お互いのキャラがかぶることなんてあり得ないですし必要ないと判断しました。それにしても、スタッフ側にいちゃもんをつけるのは如何かと思いますよ。ここでは私と君の対話であるわけですし、関係のないスタッフを問いただすのはちょっと。ほら見てください、君が指摘なんかするからあそこで新人スタッフが怒られています。可哀そうに。彼女の記念すべき社会人一年目はこうして心無い一言から地獄へと落ちていったのですね。お可哀そうに」
「いやあのスタッフどうみても1年目じゃねぇだろ。ベテランだろ絶対。見てみろよ、先輩スタッフが去った後に物凄い形相で文句垂れてるぞ。見えてるか?あれ。唾吐き捨てたぞアイツ」
「メロ君、人のあら探しばかりしてはいけませんよ。人間、誰しも欠点がひとつやふたつあるものです。見た目がベテランそうでも実は新人なんてことだってあります。それにこのコーナーは始まったばかり、私も君も、まだ新人同様、まだぴよっこじゃないですか。」
「言ってやったみたいな顔すんな。何も響いてこなかったから。何も心に響かなかったから。」
「残念です、メロ君。君がそこまで頑固な人間だったとは思いもしませんでした。正直がっかりです。そんな薄汚れた人間だったなんて、がっかりですよ。もうがっかりです」
サクサクと音を立てながらクッキーを頬張り時折手のひらを天井にむけ「やれやれ」と言いたげに首を横に振るLにメロはため息を吐きたくなるのをこらえて、チョコレートで糖分補給をした。
この間で、Lが手元の箱に詰められている手紙に触れようとした回数は0回。進行していく気もサラサラなさそうだ。
「どんだけがっかりされてんだ俺。底なしかよ。取り合えず手紙読んでいくぞ、アンタの話し相手してるならそっちのほうが…ってなんだあのカンペ。字が小さくて見えねぇ」
「ひどいですね、メロ君。私が傷つかないとでも思っているのでしょうか。…メロ君が字が小さいだの小姑ばりの小言を言うからあの新人スタッフが紙飛行機にして飛ばしてきたじゃないですか。えーっと…今回はここまでです。次回は引き続きわたくしLと、メロ君の2人で進行していくことになりますのでお見逃しなく、では次回お会いしましょう。」
「早く終われ」
「メロでお送りしていきまーす…」
画面に向かってひらひらと手を振るLと、遠い目をしながらため息を吐くメロ。
そんなメロにLは手元にあったドーナッツをかじりながらじとーっとした視線を向けた。
「なんですかそのやる気のない声。こちらまでやる気を削がれるのでもう少しメリハリをつけてもらえませんかね。元気よく、さんはい」
「いや、アンタの声も気の抜けた声してるぜ。俺より目が死んでやがるし」
「いいえ、私の目は死んじゃいませんよ。今は死んでいてもちゃんとしなきゃならない時には誰よりも煌めくからいいのです。今はその時じゃないだけで」
「アンタの目が輝いている時なんて見た事ねぇけど」
「それは残念ですね。多分タイミングが合わなかったのでしょう、次に煌めきそうな時は事前に連絡を入れておきますので、いつでも連絡できる状態でスタンバっていてください」
Lの気の抜けた声に言い合う気力さえ削がれる気持ちになったメロは手元のチョコレートを口に運び、ぱきりと音を立てて口に含むと、手元の紙に目を移した。
「大体なんでアリーさんが抜けるんだよ。俺アンタと2人で話したことないし、今度で良くねぇかこの続き」
「そうもいきません。確かに私も君と2人残されることなんて数える程もないので若干緊張していますが、新入部員として部活動に励んでいく一年生然り、学年が上がりクラス替えで親しい人間がおらずおろおろしながらも卒業式直前になるとそんなクラスでも離れるのがちょっぴり惜しくなって、あれなんで涙が出るんだろうなんて思うピュアな少年少女然り。大学高校を卒業して、企業に勤めだしたけれどなかなか社の雰囲気に馴染み切れなくて、自分の未熟さを自覚し始めた新社会人の新芽の葛藤然り。新しいものに向かっていく人は輝かしいとは思いませんか。そういう辛さも後になって思い出してみると、懐かしい思い出に変わっているものです。そんな彼らの純粋な気持ちをですね…何の話でした?」
「いやそれ聞きたいの俺のほうだけど。俺とアンタの組み合わせがあんまりないって話からなんでそこまで飛躍するんだよ」
「まあ、はい。そういうことです」
「いやどういうこと?説明めんどくさくなってんじゃねぇよ。急に長文話したからって喋るのめんどくさくなるのやめてくれねぇかな。ここ喋る場だから。お喋りしなきゃ展開していかないから」
珍しい組み合わせではあるが、Lの醸し出す雰囲気にメロは開始何分かでげんなりしている。
無理もないと言ったら、無理もないのだが。
「というかテロップサボってんじゃねぇよ。なんで画面上に俺とLの名前表記がないんだ、今回」
「普段は私とSが敬語キャラなので区別がつくようにと名前テロップを出していますが、今回は私とメロの2人ですからね。お互いのキャラがかぶることなんてあり得ないですし必要ないと判断しました。それにしても、スタッフ側にいちゃもんをつけるのは如何かと思いますよ。ここでは私と君の対話であるわけですし、関係のないスタッフを問いただすのはちょっと。ほら見てください、君が指摘なんかするからあそこで新人スタッフが怒られています。可哀そうに。彼女の記念すべき社会人一年目はこうして心無い一言から地獄へと落ちていったのですね。お可哀そうに」
「いやあのスタッフどうみても1年目じゃねぇだろ。ベテランだろ絶対。見てみろよ、先輩スタッフが去った後に物凄い形相で文句垂れてるぞ。見えてるか?あれ。唾吐き捨てたぞアイツ」
「メロ君、人のあら探しばかりしてはいけませんよ。人間、誰しも欠点がひとつやふたつあるものです。見た目がベテランそうでも実は新人なんてことだってあります。それにこのコーナーは始まったばかり、私も君も、まだ新人同様、まだぴよっこじゃないですか。」
「言ってやったみたいな顔すんな。何も響いてこなかったから。何も心に響かなかったから。」
「残念です、メロ君。君がそこまで頑固な人間だったとは思いもしませんでした。正直がっかりです。そんな薄汚れた人間だったなんて、がっかりですよ。もうがっかりです」
サクサクと音を立てながらクッキーを頬張り時折手のひらを天井にむけ「やれやれ」と言いたげに首を横に振るLにメロはため息を吐きたくなるのをこらえて、チョコレートで糖分補給をした。
この間で、Lが手元の箱に詰められている手紙に触れようとした回数は0回。進行していく気もサラサラなさそうだ。
「どんだけがっかりされてんだ俺。底なしかよ。取り合えず手紙読んでいくぞ、アンタの話し相手してるならそっちのほうが…ってなんだあのカンペ。字が小さくて見えねぇ」
「ひどいですね、メロ君。私が傷つかないとでも思っているのでしょうか。…メロ君が字が小さいだの小姑ばりの小言を言うからあの新人スタッフが紙飛行機にして飛ばしてきたじゃないですか。えーっと…今回はここまでです。次回は引き続きわたくしLと、メロ君の2人で進行していくことになりますのでお見逃しなく、では次回お会いしましょう。」
「早く終われ」
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