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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
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にじゅうよんこめ



「気を取り直して怪談の方始めていきましょう」

「結局始めるんだな」

「始めないのですか?ワタリが来るまでの間の繋ぎと思ったのですが」

「繋ぎなんだな」

ワタリが集めてきたであろう怪談話集を片手にウキウキとしているLとは真逆にマット達はすでにげんなりした顔をしていた。

日本の怪談話はやはり彼らからしてみれば苦手以外のものではなかった。
怨念が絡んでくる科学ではなんら証明が出来ないものに関しては特に。

「どうしますかマット君、こうなったら意地でもあの怪談話を止めるしかありませんよ。こっちが意地になれば向こうも意地で話を進めてくるかもしれませんが」

「意地でもってアリーさんなにするつもりだよ!?ワタリもなんであんなもの調べてきちゃうかなぁ」

「そもそも夜神月がLに可笑しな情報をリークしなければこのような話にもなっていないのでは?」

Lを惹きつける何が怪談にあったのかは分からないが、実際日本の夏の風物詩は花火大会や怪談話に限ったことではないと月が説明していればこんなことにはならなかったというニアにマット達も頷いた。

「何かあそこにいる4人から殺気紛いの視線が来るんだが」

「何を言っているんですか、月君」

目を細めじっと見てくる4人の視線に気づいたのだろう、月はその視線の意味をいち早く察知して苦笑いをこぼした。

ワタリは用事を済ませてから帰りがけにアイスを買って帰ってくると言っていた。今回は少し遠い地域に出向くと言っていたから早くても今から20分は帰ってこないだろう。アイスを諦めて部屋に戻るか、Lの興味を他に移すかだが。

「こうなったらマット、お前が何か面白い話をしろ」

「メロそれを世間ではなんていうか知っているか?無茶ぶりって言うんだぞ」

「話が誤魔化せるならその方がいいだろう」

「万が一スベった時の俺の心に負う傷は?フォロー入れてくれんのか?…もしかしてメロ、俺ならここにいる全員を爆笑の渦に巻き込むことが出来るって…」

「メロがそのようなことを考えそうにありませんが。これ以上怖い思いすることになる前にお前がスベる話をして場を白けさせろよってところでしょうね。」

「アリーさん!ニアがあんなこという!怒って」

「……ノーコメントでお願いします」

「アリーさん!?」

このまま行くとLの怪談話が始まる流れから逃れることは出来なさそうだ。
しかし、彼以外怪談話を進めたくないのは表情からも見て取れるが、それをLは知ってか知らずか、少なからず彼らのその表情を配慮する気は全くないらしい。

「仕方ありません、あの手を使うしかありませんね」

「どんな手を使う気なのアリーさん」

「それは」

意気込んだSが口を開いたと同時に開いたのは玄関側にある扉。
「遅くなりました」と入ってきたのはワタリで、仕事が早く済んだらしい彼は頼まれていたアイスを片手に帰ってきたはいいが、奥が真っ暗なことを不思議に思い先に様子を見に来たらしい。

「ワタリさん!」

それに安堵したのは怪談話を嫌がっていた4人。
一方、陰ながらLに怪談話をやめさせようと説得していた月も知らず知らずに安堵した表情を浮かべていた。

「10月に入りそろそろ秋の行事も良いだろうと思いまして」

そう言ってワタリは右手に持っていた袋から紅葉を出すと本部にあった花瓶にそれを生けた。

「紅葉ですか、また何故」

「日本の行事として、紅葉狩りというのも風流かと思いまして。皆さんは実際に身に行かれる機会は残念ながらありませんでしたから、雰囲気だけでもと」

「怪談話を強要するLと違ってワタリはとても紳士的な考えをお持ちのようですね」

「おや、アリー。Lとケンカでもしましたか?」

ワタリの手にある紅葉を覗き込みながら先程までの愚痴をつぶやいたSに、ワタリは穏やかに微笑みながら問い掛けた。

「いえ、ただ怪談話が大好きなLに少し手を焼かされたもので。」

「私はSの手を焼かせた覚えはありませんよ、ワタリに告げ口するのはやめてください」

「ホホ、さあ皆さん。折角ですから温かい飲み物と一緒にアイスでもいかがですか?」

すっかりケンカモードに入っていた2人もそれにはお互いに顔を見合わせて頷いた。
それに孫同士のケンカを見ていたように優しい眼差しで2人を見ていたワタリに背中を押されるまま、ソファの方へと移動した。

「今年は捜査の合間にみんなで紅葉狩りでも行きたいな」

「紅葉狩りですか。今抱えているものが終われば少し間が空きますし、皆さんでどうぞ行かれてはいかがですか?」

「わかっていませんね、L。月君はLを含めたみんなで行こうと提案されているのですよ。折角ですしみんなで行きましょう」

「…そうですね、たまには息抜きも大切です」


おまけ

S「ところで何故あそこまで怪談にこだわりを?」

L「特に理由というものはありませんが、キラ事件からずっと事件続きで皆さんの気が滅入っているように感じました。だから息抜き程度になればなと」

S「気の回し方が可笑しいと思いますが、一応皆さんのことを考えてのことなのだとしたら言いすぎた点を謝ります。すみません」

L「いえ、過ぎた事ですし構いませんよ。皆さんの素敵な顔も見ることが出来ましたし」

S「素敵な顔?…L、先程から何を見ているのですか。」

L「お気になさらず」
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