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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
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じゅうはっこめ



こんにちは、Sです。

私が今いるのは、元キラ捜査本部日本支部。
少し前までLと共に追っていたキラ、夜神月は世間的には「キラ死亡」の名の下に事件解決しました。
ですが、事実上夜神月は生存しており、「終身刑」ということで今では立派なLの補佐として、そして彼のよき友人として世界の難事件に共に立ち向かい活躍している訳なのですが。

「なんでしょう、メロ」

わたし、Sは何故か絶賛メロに睨まれ中なのです。


キラ事件が解決した数年後、日本にやってきたニア、メロ、マットはLや夜神月のいる捜査本部を去年として活動することになり、私も元居たイギリスのマンションはキラ事件で来日する前にすべて売り払ってしまったため買い戻す手続きも面倒なためそのまま日本に残ることに。

3人とも私は面識があり、親しいとも取れる仲でしたし共に捜査していくことは問題ないと踏んだのですが。

私のいるデスクに腰掛け凶悪な顔でジロジロと睨みつけてくるメロに対抗するわけではないのですが、私自身何故そのような目を向けられるのかが気になり、見つめ返すとマットが駆け寄ってくるなり私たちの間に入りました。

「だー!アリーさんも対抗すんなよ!メロも、なにアリーさんを睨んでんだよ。ずっと会いたがってただろうが!」

「すみませんマット君。これは私とメロ君との間に起きた問題ですので、引っ込んでてもらっていいですか」

「何でアリーさんまで怒ってんの!?」

怒っていません。断じて、怒ってなんていませんよ。

ただ何もしていないのに久しぶりに顔合わせしたと思ったら、理不尽にも睨まれているので多少。

ええ、認めましょう。怒っています。理由が何であれ今は仕事中ですので。ただ仕事とメロ君どちらが大事なの?なんて新婚夫婦にありがちな質問をされればそうですね。1週間考える時間を頂いてもよろしいでしょうか?と答えるしかないのですが。

その前に友人と仕事というのは違う土俵にある存在であって、両方無くてはならない必要不可欠なもの同士を競わせようという時点でおかしな話なのであって。

一体この質問をした人は自分にとって満足いく答えを望んだうえでしているのか、それとも「私と仕事どっちが大事なのか」について深く議論を求めているのかを明確にしたうえでの質問を。

おっと、脱線しました。申し訳ありません。

そんな恋人か新婚夫婦がする質問を、メロ君が投げかけてくるだなんて事態は本当にもう御免被りますが。

「メロ、何を怒っているのかは知りませんが捜査外にすべきです。現にアリーさんの仕事の邪魔になっていますよ」

ニア君のその言葉に、メロ君はニア君を睨むだけで、私の方に視線を戻してから再び私を睨みつけた。
口ごもり、少しの躊躇をしてからまた何かを言おうとして口を閉じて口ごもる。少しの時間をそうして自身の中での葛藤に費やした彼はようやく口を開いた。

「なんでだよ」

「なんで、と申しますと?」

「何で…なんで、迎えに来なかったんだよ」

小さく、本当に小さく、私にしか聞こえていないような声で言ったメロ君の言葉に私は目を見開いた。

その言葉で思い出すのは私がワイミーズハウスを卒業したその日、あの雨の日の出来事。キラ事件で常に命の危機にさらされている状況下で、記憶の隅へと追いやられてしまった小さな彼との約束。

「俺が卒業したら、そしたら、迎えに来てくれるか?」

そう言った彼は、雨に濡れながら、瞳を不安に揺らしながらもしっかりとそう私に問い掛けた。その時の情景は今でもしっかりと鮮明に覚えている。

まだほんの子供で、そんな彼の記憶力を侮っていたが彼はあの当時から天才児として、Lの後継者候補生のなかでも有力とされていたのだった。

凶悪犯ばりに私を睨みつけていた瞳はいつの間にか、あの時のように不安に揺れていて、あの時の小さな少年とダブって見えた。

あの時私は、そんな小さな少年に無責任にも「また会いましょう」と約束したんだ。

「あの時の約束を、覚えていてくれたのですか?」

彼はまだ幼かった、私が18歳の時にハウスを出たからメロはまだ10歳だったはずだ。
そんなときの約束を、8年経った今でも、まさか、覚えていたなんて。
決して愛想が良かったとは言えない自分に会いたいと思ってくれていたなんて。

「すみません、まさか、まだ私を待っていてくれているなんて思わなくて」

私は捨て子だ、赤ん坊の時にへその緒が付いた状態のまま捨てられた。
だからだろうか、私には人への愛着というか、とにかく普通にあるものが欠如している。
表情のない私を好いてくれる人間などいやしないと、物心ついたころには殻に閉じこもり、講義以外の時間は与えられた部屋でひとり過ごすことが多かった。
だから10歳の時に突然やってきた3人の子供がやたら私の部屋に来て、まるで私に懐いたように傍にいることが、最初の頃は疎ましく、だんだんと不思議なものを見る感覚になっていった。

最初はあんなにも追い出すことを考えていたというのに、3人が部屋に来るのが当たり前になり、3人は私にとって、他とは違う存在になったと気づいたときには遅かった。

その時にはもう彼らは私の心に巣をつくるように、なくてはならない存在になっていた。



つづく
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