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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
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じゅうななこめ


「ジェバンニとは、ニアの所属しているSPKのですか?」

「ええ、そうです。今月は彼の誕生日なんだそうです」

日本捜査本部。

珍しくL、月、メロにマットまで居ない本部は、Sとニアしかおらずいつもの喧騒が嘘のようにしんみりとしていた。元々個々が騒ぐタイプではないため、先程まで静かだった本部だがSのお茶にしようという提案から話が始まった。

本部に残った2人は雑談をしながらつかの間のティータイムを楽しんでいると、ふっとニアが思い出したようにつぶやいた。

「誕生日をお祝いする間柄でもありませんから、構いませんでしたが。」

彼も別段気にしないでしょう、とニアは淡々と答えたが、今日出掛ける前にワタリがカレンダーを8月から9月に変えた時から、ニアがしきりにカレンダーの方を気にしていたのは確認済みである。少し見ては目を離し暫くしてからまた見ていれば嫌でも気づいてしまった。

そしてSPKの面々からメンバーの誕生日はささやかであるがお祝いをするということもリドナーから聞いている。きっと今日もささやかながらにお祝いをするのだろう。それにニアが参加した、なんて話は聞いたことがないが。

「ジェバンニには捜査協力を頂いていますし、後程何か贈りましょう」

「構いません。Sが心を配る必要はないです、彼もこちらの多忙さは承知のはず」

「そのような心遣いこそ、大事なのですよ。親しき仲だからこそ礼儀を配るのがジャパニーズ精神です」

「ジェバンニは日本人ではないので、ジャパニーズ精神は不要です」

「ニアもジェバンニの誕生日が気になっていたからカレンダーを見ていたのでは?」

しかし彼はそんな問いかけにも一切の動揺も見せずに「カレンダーの隣のポスターを見ていただけです」と冷静に返してくる。

「カレンダーの隣のポスターですか」

そこには某警視庁のマスコットキャラが「ダメ。ぜったい」と薬物注意を促すポスターが貼られているだけで、それもまだキラ事件捜査中に松田が「この部屋には彩りがない」などと言ってイタズラで貼ったのを誰も剥がさないまま置き去りにされたもので、今更目に留まるものでもなかった。

時計はそこから随分離れた場所にあるし、そもそも本部の壁にはそれ以外のものは貼られてはいない。

「そういうことにしておきます。ですが気になることはしておくのが一番ですよ。また来年、なんて先延ばすとだんだん行きづらくなるものです。今日は事件もないことですし私も自室に戻りますね」

立ち上がったSを見て、ニアは暫し考えに浸ると携帯をポケットから取り出してとある場所へと電話をかけた。




「しかしなぜ私までここにいるのでしょうね」

「いいじゃない、ジェバンニもSが居たほうが喜ぶと思うわ。こういう嬉しい日にこそみんなで集まらないと」

自室でくつろいでいたSは、いつの間にかリドナーの手によりSPK本部のほうへと連れてこられパーティーの装飾に加わっていた。

どうやらニアは自身だけで来るのに躊躇い、休暇になっていたSを巻き込んだらしかった。
じとりとした目でニアのいる方を見ると彼はその視線に気づきはしたがそれに何か反応を示すでもなく、手元に持っていたミニカーを用意されていた飾りの周りに並べる作業に戻ってしまった。

「マツダにジャパニーズ飾りはこれが主流だと聞いて作ってみたけれど。これってこの後どうするのかしら?」

「輪飾りですね。確か壁の装飾に使うのでは。しかし、輪飾りは正月の飾り物だと聞いていましたが、お祝い事には何でもいいのでしょうか。ジャパニーズ文化は奥深いですね」

「情報源がマツダですからね。もしかしたら他の日本人は使用していないかもしれませんよ。なんせマツダが言ったので。確かな筋の情報ではないので何ともいえませんよ」

「ニアは松田さんに何か恨みでも?」

「いえ、特には何も」

すっきりとしていたSPK本部はすっかりとお祝いムードになり、食料品の買い物係として駆り出されていたレスターが帰ってくるとそれらをテーブルに並べてあとは主役が戻ってくるのを待つだけとなった。

「ジェバンニ喜んでくれるといいですね」

「きっと喜んでくれるわよ。特に今回はニアとSがいるんだから」

「そうだな。去年は私とリドナーだけだったが…ニアが参加すると言った時は驚いたが」

「気まぐれです。それにデザートをこんなに用意してくれたので、来た甲斐はありました」

「…照れていますね」

「ふふ、照れているわね。」

和やかな雰囲気になったところで、向こうから扉が開く音がしてそれぞれがパーティークラッカーを手に持つ。去年はレスターとリドナーの2人だったけれど、今年は4人でお祝いということでレスターが追加で買ってきたらしい。

「すみません、道が混んでいて遅れてしまい…ました…?」

申し訳なさそうに入ってきたジェバンニが、いつもの本部と違う様子に気付いたところでクラッカーが鳴り出す。ビクッと肩を跳ね上げたジェバンニを見たそれぞれは思い思いにジェバンニの誕生日を祝うと、ニアは自身の髪をくるんと指で回して小さくつぶやいた。



Happy birthday ジョバンニ


(9月1日)


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