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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
目次

よっつめ


※過去篇

※ひねくれ主人公注意報

※ここでは呼び名がないと生活しずらいということから愛称の「アリー」と呼ばれています。


「ここにいる子供たちはみんなどこかほかの子とは違うの。だからきっとみんなあなたの事も受け入れてくれる」

私がハウスにやってきた初日に、最年長のハンナはそう笑顔で言った。けれど私は今それを鼻で笑っている。ここの子供たちは他とは違う、確かにそうだと思った。

世界から有数のワイミーさんが選んで着た子供たちはそれぞれの世界で才能を伸ばし、ここの卒業生として名を馳せている人間も少なくはない。

みんな何処か他とは違っていて、他の子供たちとは違う個々の才能を持っていたが故に孤独を抱えていた。

理解されない感情や思いを己の中で封じ込めて笑う。
そうして居なければきっとまた居場所をなくしてしまうから。自身の才能が開花して独り立ちするための巣として、このワイミー/ズハウスにいるだけだ。天才程孤独なものはいないかもしれない。

両親がいない彼らはなぜ私に両親がいないのか聞いて来ないから最初のうちは楽でもいいと思った。ここでそんな質問をするなんてナンセンスだし、同じ質問を受けて「なぜ?」なんて聞かれて答えられるような子もここにはいなかったから。

けれど楽でいいと思うだけで、別に私が彼らと馴染めるって訳じゃないんだ。

ぼんやりと自室の窓から見つめる先には施設の子供たちがみんな笑顔で走り回っているのに、綺麗に磨かれた窓に反射する私の顔は死んだも同然の顔をしていた。

息を吐くと、ぱたりと自身の膝に顔を落とす。

外で元気に駆け回っている彼らに笑顔で接すれば、私の事もきっと受け入れてくれるだろう。人にうとまれるということを知っている彼らだ、邪見には扱わないと思う。一部を除けばだが。
けれど私にはそれが出来ない。私にはそんなコミュニケーション力など備わっていないし、自分でもわかるくらいに何かが欠如しているから。

私には何かが足りない。何かが欠落して、欠如して、補うようにそれを彼らで言うところの「才能」が覆い隠してしまったかわからないけれど、きっと私は何かが足らないんだって思う。

それが何なのか分からないけれど、きっと私の持つ「才能」と引き換えに私の中にあったものは抜き去られたんだと思う。目を閉じると今まで見てきた情景が余すことなくフラッシュバックしてきて鬱陶しい。こんな能力が、ほしかったわけじゃないのに。


次の日、学年ごとの通常の授業が終わった後に、それぞれの「特技」に合わせた個別講義が始まった。
得意げに自分の分野へと勤しむ周りを見て、私は何処か冷めた気持ちで居た。
私がハウスに来た時、一通り見せてもらった中で私は工学の道を選んだけれど、それらは所詮子供向けに制作された「オモチャ」で平坦でどれも面白みに欠けていて早くも飽きてしまった。息を吐き画面から目をそらすと前方に居た先生の2人がこそこそと話した後に教室を出て行くのを見て動かしていた手を止めて目を閉じた。

個別講義が終わり部屋に戻るために廊下に出ると、「アリー、ちょっと」とここのスタッフのメアリーに声を掛けられる。それに頷いてパソコンを持ったまま彼女に着いていくと彼女は少し窪んだ廊下の空間に入り、困ったように私の視線に合わせるように屈んだ。

「アリー、ここでの生活はどう?慣れてきたかしら」

私の様子を伺うような声音と不安そうに泳ぐ視線に彼女が言いたいことを理解する。ここにきて2週間、一向に誰とも馴染むことのない私に彼女は「探り」を入れてきたのだと。

「随分慣れました、問題ありません」

大人を安心させる笑顔を振りまいて言うと、メアリーは安心したように「そう?」と笑った。

「実はね、何人かの子がアリーが馴染めないんじゃないかって心配してたの」

にこにこと笑顔を張り付けたまま、私は心の中で失笑した。自分でも性格がいいとは思えないそれは、いかにも自分は他の子を気に掛けてあげられるくらいいい子ですってアピールをする子供が哀れに思えただけだ。
そうして自分の存在意義を見いだせないのだろうか、彼らはそうして大人たちにアピールすることでしか自分の存在を確立できないのだとしたら、なんて滑稽だろう。

「まだ緊張して、馴染めないのは確かだけれど、少しずつ慣れるように頑張ります」

「うん、アリーはとてもいい子だもの。きっとすぐに仲良くなれるわ」

くしゃっと私の頭を撫でたメアリーに私はもう一度笑顔を振りまいた。

部屋に戻ると言うと「おやつの時間にはちゃんと広間に来てね」と確認するメアリーに頷いて背を向けた。
この後ろにいる彼女は、私がそんな人間関係を構築することを放棄して、そんな気がない何て知ったら温和な彼女でも怒りだすのだろうか。でもきっと関係ない。ここは一時的な宿り木であって長居なんてしない場所だろうから。さて、今日は何処で遊ぼうか。手の中のパソコンを抱え直して誰もいない部屋へと向かった。





主人公は相当ひねくれているという設定です。
愛されたいけど拒絶されたその後が怖いから敢えてそうしているだけ、といった感じです。
メアリーは心優しいシッターさんですが、そういう細かな子供の変化には気付かない人。
大人のご機嫌を取る子供を笑いながら、結局主人公も大人には少しだけいい子を演じる矛盾した感じを書きたかったのですが、気分を害されたら申し訳ありません。

アリーはただの愛称で、本名ではありません。
その辺も後々描いて行けたらと思います。
お付き合いいただきありがとうございました。
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