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私達は忍術学園を守るんだ…!

原作: NARUTO 作者: コアラ
目次

伍話 "紛い物"




「ねぇ、寐玲」


「何だ?」


「凄い傷…痛そう」


五人は寐玲の体をまじまじと見ている。

刺し傷、切り傷跡が至る所にあるのだ。


「殆ど暗部に入りたての頃に貰ったものだ…」


「寐玲より強い人がいるの!?」


「その時は実戦経験が無かったからな…自分の力を使いこなせてもいなかったし…どれも中々のものだったな…」


寐玲は苦笑する。


「中忍、上忍試験でも色々あったしな」


「中忍?上忍?」


聞いたことない単語に寐玲以外の皆が首を傾げる。


「まさか知らないのか?忍は下忍から始まり、試験を受け中忍、上忍へとランクアップするんだ…ま、要するに忍の格付けだな」


「そんなのがあるんだ…忍者の卵とプロ忍者しか格付けは無いよ…学園を卒業したらプロ忍者として活動する…どこの城の忍者隊って位しか呼ばれなくなるね」


久々知が呟く。


「プロ…か…」


((大雑把すぎるな…忍として甘すぎる…))


体を濯ぎ、皆で湯舟に浸かる。


「ふぅ……何年振りだろうか…湯舟に浸かったのは」


「えっ!?」


五人は驚く。


「いつもは体を洗うだけだったしな…こんなにゆっくりと風呂に入るのは幼少の頃以来だな…」


暗部の時は次々に任務が来ていたから休む暇も無かったぞと寐玲は呟く。


「暗部の仕事ってそんなに休みが無かったのか?」


「いや、本来ならちゃんと休暇はある…だが、里長が“私しか信頼出来ないから”とか言って何人分もの仕事を押し付けてたから…今思うと良いように使われてたんだな」


苦笑する。




「それに…あの一族を倒せるのは私だけだからな…」




とても小さな声でボソリと言った為、誰一人気付かなかった。


「入るぞ」


六年生がぞろぞろと入ってきた。


「わっ、寐玲!凄い傷!」


「身体中に…顔にもだが、恐ろしい数の戦闘をしてきたんだな…」


モソモソと中在家が呟く。



「いや、顔のは一族の証だ」



え?

キョトンとした顔で寐玲を見る。


「両目元の十字傷は我が九重一族の証なんだ」


「一族の証…」


「…五歳の時、一族の血継限界である真理眼を開眼した際に貰ったんだ」


そんな小さい時に顔に傷を付けられたなんて…


寐玲以外息をのむ。


「そういえば、心理眼ってどういうものなんだ?」


重くなった空気を破ったのは立花だ。


「心理眼か?さっき好きに想像してくれと言った筈なんだが」


「それで納得をせざるを得ない状況だったが、今またその単語が出てきたら訊きたくなるだろう?」


「立花先輩の言う通りだよ、お願い寐玲!教えてよ」


「お前達は私の事100%信頼してはいないだろう?」


「!?」


「さて、私はもう上がる…折角の風呂だ、暗い気分では入りたくないだろう?」


「み、寐玲!この後手合わせしてくれないか?」


潮江の言葉に寐玲は嫌そうな顔をする。


「え…明日にしてくれないか?今日はもう身体を休めたい」


「これから忍者のゴールデンタイムだろう?修行しないのか?」


「私はオンとオフをキッチリ区別させたいタイプなんだ…今じゃなくても明日実技の授業をする事になってるからその時にだ」


ヒラヒラと手を振り、寐玲は上がっていった。


「明日は確か、寐玲の紹介兼小手調べの実技授業だったよな……」




――――こてんぱんにされそうな予感……




五年生と立花、善法寺はそう思った。


寐玲は着替えを済ませ、自分の部屋へと向かっていた。


「……柔拳は反動無しで使えた…やっぱり写輪眼だけが反動がくるか……」


写輪眼を使用した際、普段よりも反動が大きかった。

出血する筈のない幻術で出血し、目からの出血で済む天照で咳き込む……


「月読だと何が起きるんだか…」


溜息つき、長屋の屋根に跳ぶ。


「敵は紅蓮……奴の直属の部下はあの二人合わせて八人…全て渡っているのならば、残りは紅蓮を抜いて六人……」



血継限界を使う者は居たかな……

確か日向の者が居た筈……



「本家の者とやり合うのか…勝てる気がしない」


「どうして?」


尾浜が側に来ていたようだ。


「私としたことが気配を察知出来ない程に考え込んでいたんだな……どうして、か…答えは私が……」


寐玲は立ち上がる。




「紛い物だからだ」




「紛い物…?」


寐玲は周りに気配がないか探る。よし、居ないなと尾浜の方を向く。


「ここだけの話だが、俺は三つの一族の血を持っているんだ」


「三つ?」


((あ、一人称が変わった))


「あぁ、うちは一族の血を半分、日向一族・九重一族の血をそれぞれ四分の一継いでいるんだ…」


「うちは…日向…九重…」


聞いた事のない単語ばかり出てくる。


「そうだ、俺は純血では無い…どの一族でもない紛い物なんだ」


「なんか凄いって事が分かった…」


なんとなくしか理解ができなかった。


「いずれ話そうとは思うが取り敢えずは二人だけの秘密にしておいてくれないか?」


「分かった、だけどこれだけは言わせて…たとえどの一族で無かったとしても寐玲は九重寐玲だからねっ」


寐玲は驚き、そして微笑む。


「ありがとう…じゃあ、また明日」


消えた寐玲に尾浜も「また明日」と呟き、自室に戻っていった。


宵闇の時にしか見る事が出来ない繊月がひっそりと顔を覗いていた。
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