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スノー・フェアリー

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: ハラミ
目次

意外な結末

 カラス天狗が美香とツララの会話に割って入るように咳払いをした。

「それよりツララお姉様が人間嫌いというのは・・・」
「お姉さま?あぁ?人間がこのツララ様にお姉様なんて口聞いてんじゃないわよ!穴あけるぞごら!」
「お姉さま!落ち着いて!キャラが壊れてますよ!」

 お姉様といっただけでこの怒り方だ。よほど人間嫌いなんだろう。するとカラス天狗が沈痛な面持ちで俺のほうに耳打ちをしてきた。

「ツララ殿は実はこれまで何度も人間との結婚に失敗なさっていて・・・人間不信に陥っているのです」

 結婚に失敗・・・といわれても俺にはぴんと来なかった。

 ツララさんはぱっと見きれいだし、人間嫌いという一点さえ覗けば妹のおゆきにも、怖がられてはいるけど、とても慕われているみたいだ。面倒見が良くて家庭的な感じだし・・・何で失敗をするんだろう。

「いいところまでいくのに最後の最後というところで失敗するのよ!(以下、ツララの妄想となります)」

彼氏「ツララ、ツララ!一緒にお風呂に入ろうよ(裏声)」
ツララ「えっ、私お風呂はちょっと・・・」
彼氏「なんだって?お風呂に入れないなんてツララは僕のことが嫌いなのかい?(裏声)」
ツララ「ち、違うの!ツララ彼氏君のことは大好きだけど、お風呂だけは無理なの!」
彼氏「そうか、分かったツララは僕のこと嫌いなんだね。もういいよ(裏声)」
(彼氏が出て行く)
ツララ「(泣く)」

「だから人間は嫌いなのよ!うわーん!」

 そういってツララは泣き出し、きっと今度は俺のほうをにらんだ。

「こいつだってそうよ!男はすぐにあたしたちとお風呂に入りたがるのよ!私たちのピーーなところやピーーなところを見ようとして!」
 
 矛先が突然向かってきた俺はちょっと戸惑ってしまった。弱った。でもだからといっておゆきをあの乱暴な雪男に渡したくはないし・・・。

「俺は、そんな無理やりおゆきをお風呂に入れたりはしませんけど・・・」
「ほんとーにぃ?」

 ツララが俺のほうをにらみつけると、その間になぜか美香が割り込んできていた。

「お任せください!ツララさん!」

 美香が自分の胸をばんっとたたいた。どうでもいいがそんなことしたらまた胸がしぼむぞ。

「よっしーがおゆきちゃんにいやらしいことをしようとしたら私が許しません!私が一枚か二枚を脱いで代わりに餌食になってでも止めてやります!」
「おい、ちょっとまともな止め方があるだろ、てか目を輝かせるな」
「美香さん!うぅ・・・私はいい嫁を持ったわ!」
「お前は俺の母かよ!」
「わ、私だってお風呂には入れなくたって服くらい脱げますもん!」
「うわぁ!ちょっと、今ここで脱ごうとするなおゆき!」

 脱ごうとするおゆきにそれを止めようとする俺、その俺になぜか抱きついてくる美香、それをニコニコと眺めているツララ女に、その様子を苦笑いして見ているカラス天狗。

「それを聞いて安心したわ。雪男から、おゆきが得体の知れない人間と付き合ってるって聞いたからいてもたってもいられなくって・・・でもある程度信用できる人なら心配は要らないわね」
「ツララ殿、それがしもこれまで数日由布由殿と行動をともにしてまいりましたが、由布由殿はいい人間だとお見受けしまする。雪男などの粗暴な男に嫁にあげるにはよほど良いかと・・・」

 カラス天狗がそこまで言ったとき、そのとき家のドアが乱暴に開いた。そして一人の男が入ってきて乱暴にずかずかと歩み寄ってきて、突然俺の襟首をつかむ。おゆきが悲鳴を上げ、美香が呆然とする。俺はその男に見覚えがあった。

「雪男!やめて!由布由様を放して!」
「うるせぇ!こいつをぶっ殺.してやらねぇと気がすまねぇ!」

 そういって雪男が腕を上げた。またこのパターンかよ、と俺が思ったとき、俺と雪男の間にツララが落っこちてきた。

「その手を放しなさい。雪男」

 ツララを落としたのはツララ女、ツララお姉さんだった。

「何でだ姉さん!俺が・・・俺がおゆきと夫婦になるのだ!そういっただろう」
「お黙り」

 ツララ女が手の中でツララを生成した。その顔はさっきまでのふざけた顔ではなく、本物の妖怪の放つ恐ろしい迫力を伴っていた。雪男ですらその迫力に気圧されている。

「おゆきは私の可愛い妹だ。相手くらいこの目でしっかりと見極めたい」
「・・・く」

 雪男が悔しそうに唇をかんだ。

「さぁ、諦めるかい?それとも・・・今ここで本物の妖怪ツララ女と、本気の術比べをしてみるかい?」

 ツララ女はそういうと、手の中で生成させたツララを握り、先端をまるで錐のように鋭くした。

 雪男は勝算なしとみたか

「覚えてろ!」

 そういって部屋から出て行った。

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