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スノー・フェアリー

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: ハラミ
目次

恐怖!ツララ女


 一方俺たちはとにかく逃げに逃げてアパートに逃げ込んだ。

「うわっ、よっしーこの子一体誰?」

 美香がまだ地べたで寝ているおゆきを指差した。俺はとにかくアパートの鍵を閉めるのに精一杯でそれに答えている暇はなかった。

「よっしー!何で鍵なんか閉めてるの!ま、ま、まさか監禁プレイ!?」
「い、いや、今はそういうジョークをいっている暇じゃ・・・」
 
 俺はちょっとあせったが鍵をかけたのでちょっと安心していた。住宅街の方まで追いかけては来るまいという安心感があった。

「ふわぁ・・・むにゃむにゃ・・・」

 おゆきはまだ平和な顔で寝ていた。まったくこちらの騒ぎも知らないで。だが、その平穏はすぐに破られた。いきなりおゆきが目を開け、震え始めたのだ。

「どうしたおゆき?寒いのか?」
「こここここ・・・この気配・・・ツララお姉さま・・・!」

 おゆきは体を起こして布団から出るとドアへと向かう・・・がドアには鍵がかかっている。

「部屋の中に・・おおおおお、お姉さまがおります」
「そんな馬鹿な。部屋には誰も入れてないよ」
「いいいいい、いいえ、お姉さまがたたたたた、確かにおります・・・」

 おゆきがそう言った途端部屋の隅から何か物音がした。何かがたがたと音がしておゆきの顔色が変わった。

「あ、あ、あああああ、あの音は・・・」

 次いで何かがこぼれるような音がしておゆきはドアをバンバンたたいた。

「何あの音・・・」
「ちょ、ちょっと・・・俺見てくる」

 俺は勇気を出して音のするほうにいく。音がしているのは冷蔵庫だった。そしてこぼれているのは氷。

「せせせ、製氷室が・・・開いてる?」

 怖い・・・これが本物の妖怪!
 と、今度はこぼれた氷が積み重なったかと思うと、どんどん大きくなる。そして次の瞬間には、まるで氷の女王のような冷たさと、気の強そうな雰囲気をにおわせる瞳に、少し背の高い女になっていた。

「そなたが・・・由布由か」
「ひひひぃっ!」

 と、今度は外で音がした。カラス天狗の声である。

「由布由殿に姫殿!お逃げください!早くしないとツララ殿が!!」
「うううううぅぅぅ、もうお姉さまはきてるよぉ・・・」

 おゆきはもうすっかり腰が抜けていた。美香も魂を抜かれたかのようにその光景を見ていた。

「あなたが由布由・・・人間の分際で・・・人間なんか下賎なのよ、下僕よ、犬、いや、犬以下の存在なのよ!」
「ひ、ひぃ!下賎ですいません!犬以下ですいません!」

 ・・・あれ?これってもしかして一種のプレイ?てか美香が目をキラキラさせてるし。

「人間なんかね、お前なんか人間なんかが雪女に手を出そうなんて百万年早いのよ!汚らわしい!」
「あー、何かあの人よく分からないけどすごい!」

 美香がさらに目をキラキラさせている。

「何よあなた。罵られてるっていうのに嬉しがっているの?これだから人間は・・・下賎民族ね!」
「もっと罵ってくださいぃ!」

 と、そのときこのツララ女、何かの弾みでボタンを押してしまった。

「・・・あら?」

 あろうことかツララ女が押してしまったボタンはハロゲンヒーターのボタンだった。向きが悪かったらしくその熱がツララ女を直撃している。

「な、何これ。暑い!いや、熱い!いやっ、誰か、誰か助けて!やだぁ、ヒーターで死ぬなんていやだぁ!」
「お前のお姉ちゃん・・・そうか!ツララだから暑いのに弱いのか!」
「いやだぁ、ごめんなさい!下賎なんていってごめんなさい。何でもするからヒーターをヒーターを!」
「お、お姉ちゃん!だ、誰かお姉ちゃんを助けてあげてぇ!」
「ううぅぅ・・・もっと罵られたかった・・・」


→ → → → →


 とりあえずあまり可哀想だからヒーターを消してついでに冷えピタシートを張ってやってついでにアイスも持ってきてあげた。

「びっくりいたしましたぞ、ツララ殿」

 鍵を開けて入ってきたカラス天狗も一緒だ。

「私としたことが、ついわれを忘れてしまって・・・」

 ツララ女が落ち込んだかのようにアイスクリームをぺろぺろと舐めていた。その様子をじっと見つめる美香。

「なかなかの舌使いね!」
「また誤解を招く言い方を・・・」
「ふふ、これで雪女は男を食べるのよ」
「お、男を食べるだなんて・・・さすがは女王!」
「なかなかおいしくってお代わりできちゃうの」
「お、お代わり・・・!何と斬新で新鮮な言い方!」

「ゴ、ゴホンッ」

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