ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

スノー・フェアリー

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: ハラミ
目次

お出かけ

→ → → → → → 

 雪女が俺の家にやってきて数日が経っている。雪女の行動にはいろいろと驚かせられる。まず雪女はお風呂が大嫌いなようなんだ。お風呂に入ると溶けてしまうらしいので途中からはあまり無理強いはしないようにした。

「今日は外出ですか?由布由様」
「うん、ちょっと街のほうに買い物に行くけど・・・」

 俺がそういうと途端におゆきは目をキラキラさせていやがる。

「おゆき・・・付いてくるか?」

 お願いをされる前に聞いてやると、おゆきは縦に首をぶんぶん振った。分かったからあまり振ると首の骨がどうかなるぞ・・・。

「おい、とりあえず外に出るんならそんな白い浴衣はダメだからな?」
「だ、だめなのですか?」
「じゃ、じゃぁ何を着ればいいでしょう・・」


→ → → → →


 結局うちには男ものしかないのでおゆきは男物の洋服を着てもらった・・・が、ここでまた問題が起こった。

「おゆき・・・、お前自転車乗れるか?」
「自転車って何ですかぁ?」
「・・・だよな」

 俺は仕方なく、おゆきに自転車の後ろを指し示した。

「・・・?後ろ?」
「そう、ここに座れよ」

 おゆきはちょっと迷っていたが、自転車の後ろにちょこんと座った。

「彼女が出来るまで後ろには誰も乗せたくなかったのに・・・」
「彼女・・・ですか」

 おゆきは何かその響きが気に入ったらしい。意味も分からないくせに。

「私、由布由様の彼女みたいなものでしょうか?」
「冗談じゃないっての」

 俺はそういうと、ちょっと足に力を入れた。


→ → → → →


「ほら、みんな見ててごらん。俺の顔をよぉく見ていろ?つるっとこの顔をなでれば。ほら、目も鼻もなくなっちまうだろう?でも大丈夫、もう一度つるっとなでれば、ほぉら、元通り。これぞ本当ののっぺらぼう、なんてな。すごいと思ったらお金を入れてくれ」

 路上で芸をやっている男。その男のもとに数円のお金が入れられる。

「こんなところにいたのね。"のっぺらぼう"」

 急に自分の名前を呼ばれた男はびっくりして振り向いた。そしてその名前はその芸のタネでもあった。

 振り向いた先にいたのは、ツインテールの髪の毛にベアワンピースという可愛い系の格好をした女だ。一見すると普通のきれいな女に見えるが実はこの女ただの女じゃないのだ。

「お前か、"猫又"」

 のっぺらぼうと呼ばれた男は頭をかいた。

「相変わらず女に化けるのがうまいよな。何かお前の正体を知っている俺でさえ一瞬見まごうわ」
「何回もいうけど、女に化けるのがうまいんじゃなくてあたしは女にしか化けられないの!」
「耳が猫になってるぞ」

 そういわれて猫又は慌てて自分の頭に手を当てた。が、あるのはツインテールの髪の毛だけだ。

「はっはっは、だまされてやんの」
「よ、よくもだましたわね!のっぺらぼう!」
「何しにきたんだよ。"猫又"、まさか俺にからかわれるためじゃないだろ?」
「んもう・・・すぐ話を変えるんだから」

 猫又はにゃおーんと鳴くと、物陰から白い服を着た男がやって来た。白いスーツに白いカッターシャツ。おまけに顔もなかなかイケメンなのでまるでホストみたいだ。

「・・・誰?」
「山からつれてきたのよ」

 猫又がその男の横に行く。猫又も結構美人なので並ぶとカップルみたいな感じがして、のっぺらぼうはちょっとねたましいような感情に陥った。

「何の用だってんだよ」
「あ、失礼。のっぺらぼうはどーてーでしたね」
「熱いお茶飲んでしね」

 のっぺらぼうはわけのわからない皮肉を言った。すると無意味にすっきりした。

「この人はこう見えて"雪男"よ」
「雪・・・男?」

 のっぺらぼうが聞き返した。

「そう・・・ほら、こないだの雪女が逃げ出したことよ」
「あぁ、あれね」
「行き先に心当たりがないか聞いている。俺はもともと雪女のおゆきと結婚をするはずだったんだ。なのにこんな事態となってしまった」

 今度は雪男がいった。

「そうは申されましてもなぁ」

 のっぺらぼうはんーと考えた。

「そもそも逃げ出したっていうのはきっと人間界にまぎれたいんじゃねーの?それを無理やりってのはどーも気がすすまねーっつーか」
「"のっぺらぼう"・・・、何かあなた考え方が人間みたいになってるわね」
「人間にまぎれてりゃこうなるって・・・ん?」

 のっぺらぼうが見ると雪男は恐ろしい形相でこちらを見ていて、のっぺらぼうはあせった。

「わ、分からないこともないさ。あはは・・・」

 のっぺらぼうは慌ててそう付け加えた。


目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。