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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第九十七話    隈元


 新聞部顧問の隈元先生。その人物との遭遇は、すみやかに訪れていた。新聞部の部室を開けば、頭頂部のはげ上がった白髪の老人が机に座っている。

 蓮は、その雰囲気にベルベット・ルームの主である、イゴールを思い浮かべていた。

「……君は、見かけない顔だねえ?」

「は、はい。レンレンは、東京からの出戻りさんなんです!」

『出戻りって言うなよ……』

「ん。猫の鳴き声が?」

 しまった!という声が聞こえて来そうなバタバタっとした動きが、通学バッグで起きていた。最もベテランの怪盗であるはずのモルガナではあるが、どこかマヌケなところがなくならない。

「バッグが、動いたような?」

「気のせいだ」

「そう?……まあ、そうだよね。ふわあぁあ……」

 隈元先生は老人のあくびを時間をかけて行う。公立校であれば、とっくの昔に現役を引退している年齢だろうことが、その老人めいた動きからは理解が及んだ。

 その長老めいた雰囲気から、この学園の全てを記憶しているのではないかという期待を感じなくもない。ただし、少々、ボケてしまっているのではないかという不安も感じてしまうが……。

 案ずるよりも、行動あるのみだ。賢く考えているだけでは、状況を変えられないこともあるのだから。情報を得る必要がある。行動により、新たな情報を得る。それがジョーカーとしての行動指針でもあった。

「先生。実は訊きたいことがあります」

「小テストの内容は、教えないぞ」

「そうじゃありませんよう。教科書に載ってないタイプの質問です!」

「……ふむ。ワシにそれ以外の質問というのは、何だろうなあ。ちょっと、思いつかないぞ?」

『……生徒に相談とかされないタイプのじいさんなんだろうな』

 失礼な言葉を、みゃあ、という小さなヒソヒソ鳴きに込めながら、モルガナはそう語ってみる。城ヶ崎シャーロットは苦笑を浮かべるが、言葉で反応することは出来ない。

「それで、どんな質問なんだね?」

「この学園の七不思議について知りたい」

「……ふむ。ふむふむ?」

 隈元は年老いた瞳を開いて、好奇心を剥き出しにしてくる。蓮はともかく、城ヶ崎シャーロットは少し慌ててしまう。

「な、なんでしょうか!?」

「いやなあ。どうして、そんなことが気になるんじゃね?」

「ただの趣味だ」

「そ、そうです。ただの趣味なんです、レンレンの!」

「ほう?」

「大学では、民俗学を習いたいとも考えています。この学校には、本にまとめられるほどの伝統を持つ七不思議があると聞いて、興味を持ったんです」

 ……レンレン!

 さ、さすが怪盗さんだあ!!……すごくマジメな顔で、ウソつきまくっているう!?

 感心していいのかどうか、ちょっとだけ迷ってしまいながらも、城ヶ崎シャーロットは蓮の演技力に驚愕していた。

「なるほどなあ。探究心か。たしかに、この聖ミカエル学園の七不義は、少々、特徴がある……」

「と、特徴ですか?」

「ああ。現実に起きた事件が、それらのもとになっている。一般的な七不思議というものは、空想や物語が作るがね」

「先生は、その全てを知っているんですか?」

「……その研究は、個人的なものなのかね?あるいは、インターネットか何かで公開するつもりなのかね?」

「ネットで公開するつもりはありません。ただの個人的な好奇心ですよ」

「……生徒のウソには騙されて来たものだが…………ふむ。君は、そういう種類の人間ではないだろうな。あらぬ噂を立てられて、苦しむ者がいることを知っているだろう」

「そ、そうですよ。レンレンは、そういうことしませんから」

「……ほう。モテモテだなあ」

「そこそこです」

「レンレン!!か、からかわないの!!」

「すまない」

「……さてと。では、教えてみるとしようかな。一つは、無いはずの鐘の音だ」

「……吉永比奈子さんの」

「詳しいな。あまり、生徒に言いふらしてはいかんぞ?」

「わかっています」

「……二つ目は、学園近くの墓地が崩れて、行方不明になった人骨が巨大化して動く」

「それも事実なんでしょうか?」

「事実だね。実際にあったことだよ。ワシも昔、調べた。骨はまだ見つかっていないという情報もある……ほら、校舎裏にある駐車場。あそこがそれだった」

「え、ええ!?……あそこ墓地だったんだなあ……」

「三つ目は理科準備室の人体模型……」

「それって、実際の腎臓が使われていたってことですか!?」

「いいや。そうじゃない。でも、人骨だったのは本当だね、人体模型が」

「ええ!?じ、人骨って、本物だったんですか!?」

「そうだよ。昔は、アジアから実際の人骨を標本として輸入することは、それなりにあったようだ」

「では、人骨だっただけなんですね」

「さすがに、内臓を使うことはないだろうね……でも」
「……でも?」

「……昔は、内臓の標本もあったから。大学レベルみたいに、本物の内臓が補完されていたとしても、おかしくはないかもしれないね。聖ミカエル学園は、大学も経営している。そこには医学部もあるからね……そこから、古くなった『本物』の標本が、寄贈されていてもおかしくないかもしれない」

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