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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第八十九話    葛葉ライドウその五


「……『月村』。許さないのは、こちらの方だ。オレたちは、お前のことを許すことはない……お前は、今夜、滅びることになる」

『……っ!!』

 ……『月村』、それがあの悪魔の『本体』らしい。悪魔を召喚しているのか、それに取り憑いているのか……あるいは、モルガナの知識にない手段や状態であるのかは、理解が及びそうにはない……。

 とにかく、あの悪魔の『本体』……この状況の元凶の名は、『月村』というらしい。それは覚えておくべきことだと、モルガナは判断する。自分たちが現代で対決しなくてはならない、天使サマと吉永比奈子に呼ばれている『ペルソナ使い』か……いや、『悪魔召喚師』かもしれないヤツと、何らかの関係があるはずだろう?

 ……そうでなければ、わざわざゴウトが不思議な能力を使ってまで、この光景を自分に見せてくれることはないはずだ。モルガナはそんな確信を抱いていた……。

『フフフ。ビビってるのね、何も言えなくなっているわよ、コイツ』

 相変わらず挑発的な態度を貫く『アリス』が空中を漂っていた。彼女は笑顔を浮かべているが……術を連続で使用したせいで、それなりに疲弊しているようにも見えた。それまでもが作戦である可能性はあるだろう。

 クレバーな戦いを好む『アリス』のおかげで、『月村』は警戒心を強めている。即座に反応することが出来ないのは、『月村』にとって不利益をこうむることとなるだろうに……なにせ、傷口からは大量の出血が続いている。

 悪魔だろうがシャドウだろうが、あるいはそれらとも違う何かであろうとも、その出血は『月村』から体力を奪ってしまうことになるだろう……モルガナはその確信を手にしている。

 だからこそ、百戦錬磨の『十四代目葛葉ライドウ』たちが攻めることもないのだ。疲労した自分たちの呼吸を整えながら、敵である『月村』がその悪魔の巨体から邪悪な血を流してしまうのを待っているのだ。

 狡猾な狩猟者。

 そんな印象をモルガナは、この『群れ』に対して抱く。自分たちも、そういう戦い方をして来た。ジョーカーの指揮の下で。だからこそ、分かることが出来る……彼らもまた疲れてはいるし……情報を求めているのかもしれない。

 クイーンがこの場にいたら、話術を使って『月村』から聞きたい情報を得ようと試みるかもしれない。まあ……彼女の場合は、切れたら作戦よりも鉄拳の方を有効活用し始める気もするけれど。

『……くっ。『葛葉ライドウ』の力を……舐めていたのか……っ』

「……借り物の力では、オレたちには勝てん」

 借り物後から……『月村』本来の力ではないということか。モルガナは『月村』の表情を睨みつける。モルガナが宿っている大正時代のゴウトもまた、『月村』の表情を読み解こうと必死になっている……。

 ゴウトや『葛葉ライドウ』さえも、把握することの出来ていない事情が、この状況にはあるのかもしれない―――ゴウトと一体化しているせいか、モルガナは実に自然な発想として、そんな考えに至っていた。

 ゴウトは確かに黒い色の生物と相性がいいらしい。全ての考えではないが、ゴウトの感情ぐらいは理解することがモルガナには出来るようになって来ている……一体化が、進んでいるのだろうか……?かもしれない。それに何らかのリスクと呼べるものがあるのかは、モルガナには分かるはずもないが……今は、未知のリスクにも恐怖はない。

 知らなければならないのだ。

『……そうだ。我が輩は、知るんだ。あのかわいそうな吉永比奈子を助けてやるために。我が輩は……そのために、ここに来たんだ。だから……頼む、ゴウト。『十四代目葛葉ライドウ』……我が輩じゃなく、かわいそうな女の子のために、何かを教えてくれよ……』

 モルガナの願いは通じたのか。

 いや、これはただの過去の物語に過ぎない。モルガナの祈りであろうとも、干渉することはないのである。

 だが。

 真の正義が求めることは、時代が違おうとも、そう大きく変わることはない。とくに、相対する悪が同じである場合は、似通ってくるものであった。

「……どこに本体を隠した?」

『……言うと思うか?』

『……言わないのか?言わないのなら、このまま十四代目に滅ぼされるだけだぞ、『月村カイドウ』』

 ゴウトが猫の身でありながら、巨大な悪魔に近づいていく。『月村カイドウ』、それが『月村』の本名なのだろうか?……あるいは、彼もまた何代目かの月村カイドウだったりするのかもしれない。

 ゴウトは宙を漂う『アリス』に気にいられているのか、その白くて冷たい腕により、抱き上げられる。美少女の胸に抱かれることを、モルガナも好んでいるが……それが強力な悪霊である場合は、少し普段とは違った意味の緊張感に包まれてしまう……。

『……言ったところで、見逃してはくれまい』

『どうだろうな?……オレのように、何かの獣に封じられ、何十年だか何百年かを、罪滅ぼしの時間に使うことで、許されるかもしれないぞ』

『……そんな無益な時間を、私が好むと思うか?』


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