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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第八十七話    葛葉ライドウその三


 そうだ。脳筋が筋肉で負けちまっているのなら?……ジョーカーなら、『アリス』に仕込んでいるカードを切らせるんじゃないだろうか。この状態を逆転するカードが無ければ、きっと『葛葉ライドウ』もゴズキやメズキを召喚することはなかっただろう。

 ……我が輩は、お前のことを信用しすぎってわけじゃないだろう、『葛葉ライドウ』。お前なら、ジョーカーみたいなお前なら、仲間を効果的に使わないハズがない。そうすることで、より強くなれることを、きっと知っているはずだ。無数の『ペルソナ』を……まあ、ちょっと我が輩の知っている『ペルソナ』とは異なるが……それらと心を通わせたお前なら、知っているさ。

 宙をフワフワと漂いながら、戦況を見守っていた『アリス』……悪魔が彼女の反対側に位置取った『葛葉ライドウ』に完全な警戒を向けた瞬間だった。つまらなそうにしていた少女の顔に、明るい……いや、嗜虐的な笑みが浮かぶ。

 ロリコン野郎のマゾヒストが見れば、きっと喜んだろう。美しい少女は、残虐さを隠すことのない笑顔を浮かべる。幼い唇は開かれて、その中にある赤い舌は、唇を舐める……『アリス』の金色の瞳が、輝きを強めて、その術を解き放つのだ。

『『マハ・タルカジャ』ッッ!!』

『……ッ!?』

 赤く輝く剛毅の輝きが、ゴズキとメズキに宿っていく。その全身に赤い輝きを帯びると、二匹の大鬼たちは、太い血管を浮き上がらせた巨腕に更なる剛力を宿していた。

『ふふふッ!!待ってたぜええええええええええいいいいいッッッ!!!』

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!』

『こ、この、雑魚どもがああああああああああああああああッッッ!!?』

 悪魔は必死な形相になり、左右それぞれの腕で押さえつけていた大鬼たちの筋力に抵抗することで必死となっていた。『アリス』は、その様子を見て、空中で細く幼い脚をばたつかせるのだ。

『きゃははははは!ほんと、ダサ!!余裕ぶっていたら、筋肉ダルマたちに力負けしそうになるなんてねえ?』

『こ、小娘がッ!!』

 挑発上手な悪霊美少女は、その永劫の幼い美貌をイタズラっぽく笑わせながら、大人を挑発させるに足る小生意気な視線で、悪魔の瞳をのぞき込む―――何か、仕掛けている。魅了しようとしているのかもしれない。

 シャドウのなかには……そうだ、コイツらは、『ペルソナ』よりもシャドウに近い邪悪さとか自我を残したままの連中だ……とにかく、シャドウの中には、敵の心を強制的に魅了させたり、混乱させてしまうヤツがいる。

 『アリス』はその術を仕掛けていることに、モルガナは気づいたし……おそらく、悪魔も気がついていた。

『そんな術が、我に効くかッ!!』

『あらー、残念!!魅了することが出来たら、犬のマネでもさせて、地を這いつくばらせながら、靴を舌で舐めさせてあげたのに』

『な、なんて、う、うらやましい……ッ!?い、いや、負けるかあああッッッ!!!』

『な、なめなめ…………ううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!』

 ……どちらかというと、仲間を魅了してしまっているというか……最初から魅了済みというか、調教済みなのかもしれない。モルガナは少し『アリス』への恐怖心を深めながら、戦況を見守る。

 悪魔は、イライラしていた。ロリコンでもマゾヒストでもないようだ。

『ふざけおって!!』

『うふふ。ふざけてないのにー』

 ……そうだ。術が効かないのも、理解している。理解した上で、使っているのだ。『アリス』は、かなり賢い。『葛葉ライドウ』とのコンビネーションを使うために、あえて無意味な『誘惑』の術を放っていた。

 かまわないのだ。たとえ、それが悪魔に効かなくたっていいのだ。悪魔のやたらと高い自尊心をくすぐってやればいいのだから。プライドを刺激された悪魔は、今、『アリス』に対して怒りと視線を向けてしまっていた。

 この場で、もっとも注意を支払うべき対象である、『葛葉ライドウ』から視線を外してしまっている……その隙を、百戦錬磨の怪盗が見過ごすことなどないように、悪魔召喚師『十四代目葛葉ライドウ』も見逃すことなどないのである―――。

 声も音も出すことなく、『葛葉ライドウ』は地上を駆け抜けていく。鍛え上げてその体は流れる水のように淀みをカンジさせることなく加速を始め、一瞬の後には疾風のようなスピードをその身に帯びていた。

 『アリス』はさらに挑発するように、悪魔に対してわずかに接近し―――ゴズキとメズキは、悪魔から跳び退くようにして離れていた。全ては、デザインされた動きのなかにある。

 この戦いの直前か……それよりも、もっと以前から、強敵に挑むための布陣として用意していた戦術であったのだ。

 『葛葉ライドウ』が空高くに跳躍し、抜き放った刀に強力な『力』を注ぎ込んでいた。悪魔は、手遅れなほどに彼の接近を許してしまった直後に気がついていた。空に舞い上がった『葛葉ライドウ』は、冷静沈着な表情のままに、必殺の一撃を叩き込む。


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