ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第八十五話    葛葉ライドウ


 悪魔たちと戦い、あるいは、悪魔の力を悪用する者たちと戦い、世の中の平和を守る―――それが、『葛葉ライドウ』たちの生きざまらしい。

 そうだ。『葛葉ライドウたち』だ。そいつらは一人じゃない。何人もの『葛葉ライドウ』と呼ばれた人物が存在している……それを、見守るのが『ゴウトたち』の役目……モルガナの頭のなかに、そんな情報が流れ込んでくる。

 あのセンザンコウが……ゴウトが、共有することを許してくれた情報、それをモルガナは認識することが出来ているようだった。

 黒猫のゴウトと一体化したモルガナは、周囲の白い光が消え去っていくことに気がついた。温かな世界は終焉を告げて、闇が訪れる。夜の闇だった……『葛葉ライドウ』の戦いは、すでに始まっている。

 巨大な悪魔だった。

 開けた暗い土地の真ん中に、闇に浮かぶ巨大な姿がある。赤黒い巨体を持つ悪魔だ。『葛葉ライドウ』は、それと戦っている……空に浮かぶ悪魔に対して、『葛葉ライドウ』は拳銃を乱射する!!

 パン!パン!パン!

 浮遊していた悪魔の翼を銃弾が撃ち抜いていた。悪魔の翼を形成している骨格に対して、それらの弾丸は命中している。

 パキシイイイッ!!……骨が折れるような音が聞こえた。おそらく、亀裂の入った骨では、あの巨大な悪魔の体重を宙に浮遊させることが叶わなかったのだろう……。

『ぐふううううッ!!』

 大地に落下した悪魔は、痛みに歪むような声を上げていた。モルガナが経験豊富な怪盗でなければ、その声に騙されていただろう。

『……アイツ、卑怯なヤツだな。大して痛くもないのに、ダメージを負ったフリしていやがる。痛そうな声を上げて、誘いやがった』

 ……スカルあたりなら、引っかかってしまうだろうな。モルガナはそんな印象を頭に浮かべていた。チャンスだとか叫び、飛びかかり……手痛いカウンターを喰らってしまうのだ。

 そうなることは、『葛葉ライドウ』には無い。冷静さを持っている戦士なのだと、モルガナは気にいる。『葛葉ライドウ』は接近してトドメを刺そうとするどころか、むしろその逆に距離を開いていた。

 悪魔との間合いを作り出した『葛葉ライドウ』は、拳銃に手慣れた手つきで弾を込めていく……慣れている。蓮のような動き―――あるいは、蓮よりも、ほんの少しだけ早いかもしれないな。少しだけ口惜しい気持ちになるが、それもしょうがないと考える。蓮よりも、キャリアが長いのだから。幼い頃から、拳銃の訓練も行っているのだ、あの少年は。

 経験値が違う。そして、怪盗という実戦で鍛え上げたわけではなく、伝統の技術を継承された人物だ。『葛葉ライドウ』は、自分たちと異なる質を持った『ペルソナ使い』だった。

 管を取り出しながら、『葛葉ライドウ』が夜の闇に叫んでいた。

「頼む、『アリス』!!」

『うふふ。分かったわ、お兄ちゃん』

 闇のなかに、フワリと美しい少女の姿が浮かぶ―――『アリス』、蓮も使っていたことがある、強大な『ペルソナ』―――いや、その場にいる『アリス』は、もっと邪悪かもしれない。より自我が強く、より凶暴さを持っているようだ。

『アリスと遊ぼう!!』

 『アリス』がそう叫ぶ。可愛らしい少女の声ではあったが、その強大な魔力を包括する声は、死者たちに呼びかけるものであった。悪魔の周囲に転がっていた黒焦げの死体が動き出す……あの死体たちは、元々は、悪魔が呼んだ傀儡だったのだ―――頭のなかでゴウトの経験が教えてくれる。

 『葛葉ライドウ』が倒した、悪魔の下僕たち……死せるはずのその体が、『アリス』のコトバに魅惑されて、跳びはねていた。地上に墜落した悪魔に対して、その死体たちの腕が絡みついていく……。

『……フフフ。我が呼んだ、下僕の死体をも操るか。悪魔使いとは、よく言ったものだな……葛葉ライドウ』

 悪魔は黒く焦げた亡者の群れに噛みつかれながらも、まったく怯むことはないように見える。その赤黒い肌には、亡者の黒い歯が突き立てられて、血があふれているというのに、それでも悪魔は痛みすら感じていないように見えた。

『あらあら。どうするの、お兄ちゃん。アイツ、あれぐらいじゃ死ねないみたい』

 宙を浮遊する『アリス』が、『葛葉ライドウ』に訊いてくる。しかし、『葛葉ライドウ』はすでに他の手段を講じていた。蓮のように、抜け目なく、攻撃を連鎖させることが出来るようだ。

 『葛葉ライドウ』は新たな管を指に挟み、『ペルソナ』を召喚する。

「行け!!ゴズキ!!メズキ!!」

 牛頭の鬼と、馬頭の鬼が出現する……筋肉質な大鬼たちが、獣のような勢いで大地を駆け抜けて、亡者に絡みつかれた悪魔へと挑むのだ。

『あいつら暑苦しくてキラーイ……でも、この作戦でいいかもね、お兄ちゃん。筋肉さんたち、そいつの翼を噛み千切ってやりなさいな』

『応ッ!!』

『まかせておけいッ!!』

『……鬼神まで操るか。極東の悪魔使い……そうでなくてはな。そうでなくては、つまらんぞ!!魂をたらふく喰らい、コレを顕現させた甲斐が無いというものだッ!!』

目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。