ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第七十二話


 神代はそう断言していた。その様子に不審な点は存在しない……彼女は、本心からその言葉を使っているように見える―――吉永比奈子や七不思議の怪物が存在する異世界のことを知らないのだろう……天使サマは、神代ではないのかもしれない。

 断言することは出来ないが、彼女が邪悪なペルソナ使いである印象は薄まっている。その直感を信じることは、有益なことのように蓮には思えていた。ヒトを見る目というものは、先の一年間で磨かれて来ているという自信もあるのだから……。

 神代は城ヶ崎シャーロットを落ち着かせようと、やさしく語りかけている……。

「いいですか?……そんなウワサは信じる価値がないデマです。冷静に行動して下さい」

「でも……吉永比奈子さんは、実際……?」

「……ウワサというものは、力を帯びることがあります。それは、ヒトを不安に駆り立てることで、追い詰めてしまうことがあるからです。おちつきなさい、城ヶ崎さん」

「は、はい……」

「不安に思い過ぎれば、あらゆる現象に対して、過剰な反応をしがちになります。そういう傾向が、ヒトを苦しめることもある……吉永比奈子さんは、イジメによるストレスから幻聴を聞いたのかもしれません。それが、不安を煽り、自殺に繋がったのかもしれない」

「……でも。アレは、幻聴なんかじゃ……私も、レンレンも、同時に聞いたんですよ?」

「……イタズラなのかもしれません」

「イタズラ?」

「誰かが、新入生でもからかおうとして、そんなイタズラを仕掛けた可能性もあります。この礼拝堂は、賛美歌やピアノの音を響かせる構造をしています。もしも、どこかにスマホを仕掛けて、大音量で鐘の音を流せば?……反響させることが、出来るかもしれません」

「……そ、そうなのかな……」

 ……違う。アレは、そんな音ではない……蓮はあえて口には出さない。神代は理性的に状況を説明しようとしてくれている。これが彼女の本心であるとすれば、彼女は至極マトモな大人であり……ペルソナ使い、天使サマではないように思える。

 確信を抱かせるような根拠はないが……そんな気がするのだ。

「……そもそも、大きな鐘の音が響けば、私を含めて、校舎にいた者の耳にも響くはずです。それはありませんでした。あれば、もっと大勢がそれを話題にしているハズです。つまり、その鐘の音が響いていたのは、この礼拝堂だけ。その『音源』は、ここに存在していたのではないでしょうか」

「……ここに、イタズラを仕掛けていた……?」

「そうだと思います。他に、理性的な説明をつけることが、私には出来ませんからね」

「……あれは、イタズラだったのかな、レンレン?」

 ……これ以上、この話題を神代から聞き出すのは難しいかもしれない。蓮は城ヶ崎シャーロットの瞳をじっと見つめながら、アイ・コンタクトを試みる。目で伝えたかった、話しを合わせておけと……通じたのかは、分からないが、蓮は偽りの言葉を口にする。

「……きっと、イタズラなんだろう。オレのことを知っているヤツが、そういうイタズラを仕掛けたのかもしれない」

「……っ。それは、悪趣味なことですね……貴方は冤罪の被害者だというのに……」

「……一度でもレッテルを貼られると、世の中は過ごしにくくなる。オレが学園生活に参加することを、喜ばないヤツもいるのかもしれない」

「……調査して、犯人を見つけておきたい事案ですね」

「……イタズラ一つに、それほど介入することはない。城ヶ崎を安心させられたら、オレはそれでいい」

「……レンレン……っ」

「……雨宮くんは、いい子ですね。分かりました。貴方がそう言うのならば、コトを荒立てるマネは避けましょう……新入生たちにも、おかしなウワサが広まるのは、良くないことですからね」

「ああ。それでいいな、城ヶ崎?」

 神代に背中を見せるようにして、城ヶ崎シャーロットを蓮は見つめる。右目をパチクリとさせて、合図を送る……伝わるだろうか?……城ヶ崎シャーロットは、しばらくのシンキングタイムを消化した後で、そのアタマをゆっくりと縦に振っていた。

「う、うん。レンレンがそう言うんだから、私、そうするよ」

「……二人とも、その…………もう、ずいぶんと仲良くなっているのね?」

「……まあな」

「はい。レンレンの家にも行きましたし、レンレンは私の保護者であるお姉ちゃんとも会っています」

「……っ?……そ、そう……なんというか、それは……あの……ふ、二人とも、高校生なんだから……清い交際をするようにね?」

「清い交際……?」

「そ、そうです。つながるのは、こ、心までにしておきなさい!!そ、その……いえ……今のは……失言でした。とにかく、節度を保った男女交際をしなさい。そうすることが、お互いのためになるのですから?……いいですね、城ヶ崎さん、雨宮くん」

 なんだか大きな誤解を受けているような気持ちになるが、まあ、別に構わない。蓮はうなずいていた。

「分かった。節度を保って色々する」

「色々しないように!?」

目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。