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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第五十七話    目覚めの時……?


 夢を見たような気もするし、見なかったような気もする。その睡眠は深く……そして短かったようだ。蓮は耳元に置いていたスマホが告げる音で、目を覚ましていた。

 ピピピピピピピピピピ!

 寝起きは最高とは言えないが、それでもゆっくりと行動を開始する。布団のなかでモゾモゾと体を動かしながら、蓮は鳴りつづけるスマホを掴んでいた。目の前にスマホを持ってくると、目覚まし機能をオフにする。

 そして、静寂は訪れた。

 このまましばらく二度寝をしたいところではあるが……あまり悠長にしているヒマはなさそうだ。蓮はあくびを噛み殺しながらベッドから起き上がる。

 背中をしなやかに伸ばして、バキボキと骨を鳴らしていた。

「……はあ」

 ……異世界に行った後の朝は、やはり疲れが残っている。だが、懐かしさも感じるものだ。久しぶりに……ペルソナを使えて楽しかった。そんな気持ちも蓮は持っていた。

 蓮は起き上がると、客間に向かう。

 足音に気がつき、客間の前に敷かれた座布団の上で眠っていたモルガナの瞳が開いた。

『……ん。お早う、蓮。もう朝か……』

「ああ。一瞬で朝になった気がする」

『そうだな。じゃあ、我が輩が城ヶ崎を起こしてくる……』

「頼んだぞ。オレは朝メシを作る」

『了解』

 ふすまを猫の手が器用に開いて、わずかな隙間にスススと入って行く。それを見守った後で、蓮は押さえきれなくなったあくびを放ちつつ、朝食を作るためにキッチンへと向かうのだ。

 ……モルガナは、城ヶ崎シャーロットの寝姿を目撃する。すこやかな寝息を立てている美少女がそこにいた。

『……ふむ。よく眠っているようだ。さてと、起こしてやるか。この熟睡っぷりだと、起こしてやらない限り、自力で目覚めるなんてこと、絶対に無さそうだもんなぁ……』

 そんな確信を覚えながら、モルガナは音を立てることのない猫の足で、城ヶ崎シャーロットのもとに近づいていく。

「すーすー……」

『おーい。城ヶ崎、城ヶ崎ー……起きろー。朝だぞ、遅刻するぞー』

「……んー……」

『……ダメだ。起きそうにない』

 モルガナはそう言うと、城ヶ崎シャーロットの顔に近づき、肉球のついた猫の足裏で、彼女のほほを押し始めた。

「むぐー?」

『起きろー。起きるんだー。城ヶ崎ーっ!!』

「……ふぇえ?…………ほっぺたに、むにゃーっとした何かが……?」

『我が輩の肉球だ』

「んー……?あれ……モルガナ?……そっかー……私、モルガナとお喋り出来るようになったんだったよね?」

『ああ。とにかく、早く起きろよ。学校に遅刻しちまうぞ』

「ん?……あ、ほんとだー……お日さまが昇ってるねー……今日も、地球、平和」

『地球は平和だから、さっさと起きろ。連続の遅刻は不良の始まりだぞ』

「不良……そーだ。レンレンのお家にお泊まりしちゃった。完璧に、不良さんになっちゃったよーな気もするー」

『とくに何もイベントが起きなかったんだから、別に問題ないだろ』

「……ふーむ。それはそれで問題があるよーな気もするなぁ。ラブコメっぽいイベントの一つでもあるべきじゃないかしら……?」

『知らねえよ……とにかく、起きろ。蓮がメシを作ってくれているんだ。そいつを食べて学校に行く準備をしろよ』

「そかー。もう春休みは終わっているんだよね……はー。春休み、懐かしいなぁ……」

『そんなものを懐かしがっている場合かよ?……一分一秒、時間は過ぎちまっているんだぜ?』

「う。そーだよねー……遅刻はダメだもんね。起きるよ……でも、あと3分……2分……いや、5分ぐらいは?」

『なんで増えるんだ?』

「……乙女には、二度寝が必要なんだよ」

『そんな生態はないだろ。たんに怠けているだけだ。さっさと起きろ!!』

「……はーい」

 布団がモゾモゾっと動いて、城ヶ崎シャーロットが布団のなかから這い出て来る。少女は寝癖を気にするように、指先でその金色の髪をいじっていた。

「寝癖がいつもよりヒドいかも……夜中、レンレンに何かされたのかな?」

『されてねーから、安心しろ』

「レンレン、奥手だねー」

『常識的なだけだろ。ボケたこと言ってないで、メシにしようぜ。蓮がトーストとか焼いてくれているハズだ。コーヒーも淹れてくれているだろ?においがする』

「うん。ほんとだ。コーヒーの香りがするね……そろそろ、起きる。お腹、空いてきちゃったもん!」

 健康的な少女の胃袋は素直なようだった。

 色気よりも食い気。

 そんなコトバをモルガナは頭に浮かべながらも、城ヶ崎シャーロットを導くように歩き始めた。その尻尾をピンと立てたまま。

『ほら、ついて来い。城ヶ崎はドジだから、間違ってガレージの方とか行きそうだ』

「そんなにドジじゃないけどなー……」

『道とか、よく迷うんじゃないか?』

「ど、どーして、それを知っているの?……やっぱり、魔法の猫さんなのかな、モルガナ……それと契約してしまった私は、たぶん、今となっては魔法少女だもんね」

『契約しちゃいないだろ?』

「そうだっけ?……なんだか、そんな夢を見たような気がするんだけど……ん。あれは夢なのかも」

『……?……よく分からんが、とりあえずメシを食べようぜ、城ヶ崎?』

「おっけー」
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