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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第四十七話    紳士の道は騎士の道


 とにかく城ヶ崎シャーロットの『救出』を完了せねばならない。ジョーカーは、モナを抱きしめている少女のもとにしゃがみ込み、手を差し出した。

「……ほら、行くぞ、城ヶ崎」

「んー……モルガナとお話し出来るの、楽しいのになー」

「モルガナの声を一度、認識したからな。おそらく、今後は普段でも喋れるようになると思うぞ」

「ホント!?」

「ああ。多分な……それよりも、ここから出るぞ。ここは……何だか物騒な場所なんだ」

「……そういえば……何て言うか、殺風景だよね……ここ、どこ?」

『誰かが作った異世界だ。おそらく、昼間の七不思議に関係がある存在だろう』

「七不思議……?」

『そうだ。いいか、城ヶ崎。お前、そこの十字架に縛られて、マンションの屋上から突き落とされるところだったみたいだぞ?』

「ふええええええっ!?な、なにそれ、怖いっ!?」

「……縛られた記憶は無いのか?」

「う、うん。私、寝付きといい方で、ちょっとしたイタズラとかされても、あんまり起きちゃわないし……」

『異世界で、ずっと寝たままだったのかよ!?……大した根性というか、何だか大物っぽい気がしてくるぜ……』

「モルガナに褒められた!」

『あんまし、褒めてねーよ』

「あう。モルガナ、けっこう辛口なコメントするー」

『城ヶ崎がツッコミどころが多すぎるだけだ。こんな邪悪な気配が漂っていたところで、よくもまあ、グースカ眠っていられるもんだぜ……』

「寝付きが良い子なんだもの」

「……とにかく、ここから脱出しよう」

『そうだな……異世界からの脱出か……ここだと……ん。おい、見てみろジョーカー』

 城ヶ崎シャーロットの腕の中を抜けて、モナは走る。そして小さな指を使って、『それ』を示していた。

『あの螺旋階段は……非常階段だぞ!……見ろよ。あそこだけ、やけに壊れていない。おそらく、このマンションの『主』の認識の中でも、狂いがないんだ』

「つまり、安全に脱出することが出来るということか」

『そういうことだ。ここは幽霊の作り出した世界なのかもしれないが、認識のなかにある概念は有効だ。非常階段は安全。そういった考えが、『主』にはあるんだろう』

「……むー。モルガナ、難しいコト言ってて、よく分からないなぁ……シャーさん、猫さんよりおバカなんだね……」

『状況を把握していないから、混乱もする。とにかく、我が輩たちの指示に従って、この場所から撤退を―――――っ!?』

「ッ!!」

「……あれ、いきなり、暗くなっちゃった……」

 赤い月の光が、遮られていた。空の月に迫るほどに巨大な存在によって。『それ』は、ずっとこの場所の近くにいたという事実に、ジョーカーとモナは気がついていた。

 不覚と言えるかもしれない。その気配が乏しい巨大なシャドウは、この巨大化したマンションの外壁に張りついていたのだ。そうすることで、屋上にいる自分たちからは死角となる……。

『隠れていやがったのか……ッ』

「……チッ」

 『それ』は、あまりにも大きな骨だった。肉の削げ落ちた巨大な白骨が、空に浮かぶ月からの光を遮るようにして、立ち上がっていた。ビルの外壁をよじ登り、この場所へとやって来たのである。

 身長8メートルほどの、白骨だ。その頭蓋骨は、赤い仮面が張りついている。

「……あわわ……でっかい、骨の……巨人さんだ……っ。あ、あれ……知ってる……七不思議だよ。校舎裏にあった昔の霊園が、崖崩れで全壊した時、一人だけご遺体が見つからなかったって……そ、それが……見つけて欲しくて……お、大きくなって、校舎を徘徊するって……」

 城ヶ崎シャーロットがジョーカーに抱きつき、そして体をガタガタと震わせながらそう語っていた。

「ね、ねえ。レンレン……これ、夢だよね……あ、あんなお化け、ほ、本当にこの世にいないよね……っ!?」

 正直に答えてやるべきなのか。それとも、この場をしのぐためのやさしい嘘を使うべきなのか……ジョーカーには判断がつかない。だが、どんな状況であったとしても、すべきことは、とっくの昔に決まっていた。

「モナ、城ヶ崎が逃げるまでの時間を稼ぐぞ!!」

『そうだな!!そうするしかないよなッ!!フフフ!!久しぶりに、怪盗の血が騒ぐぜ!!』

「か、怪盗……それって、もしかして、去年の……?」

「城ヶ崎、立てるか?……とにかく、非常階段に向かって、走れ。オレとモナで、あのデカブツの注意を引きつけておいてやる」

「う、うん……っ。でも……大丈夫?……レンレンも、モルガナも……し、死んじゃったりしないかな?いくら、夢の中でも、あんなのに踏みつけられたら、ぺしゃんこだよう……っ」

『大丈夫だ。我が輩たちを、誰だと思っているんだ?』

「レンレンとモルガナ……」

『そうだけど。いいか、城ヶ崎、我が輩たちの『本職』は、怪盗だ!!悪人の心を盗み、改心させる……『心の怪盗団』、『ザ・ファントム』とは我が輩たちのことだ!!』

「聞いたことあるヤツだ!!」

『ああ!!ちょっとした有名人だろ?』

「……とにかく、今は、あそこに避難しておけ。あの骨を……オレたちが倒すまでな」
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