ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第四十二話    思い出と遭遇……?



『ぎゃふうううううううううううううううううううんんんん…………』

 シャドウはそんな断末魔を残しながら、ゆっくりとその場所へと膝から崩れ堕ちると、ゴポゴポと水泡が弾けるような音を立てつつ、ドロドロの黒い液体となって地面に広がっていく。残されているのは『剛毅』を現す仮面だけ……。

「……楽勝だったな」

『ああ。巨大だが、見かけ倒しだ。ここのシャドウのレベルがあんなモノなら、我が輩たち二人だけでも十分に攻略は可能だな』

「ああ。だが―――」

『―――ちと、暴れすぎたようだな。足音が近づいている……ジョーカー、あそこだ。天井の近くに、通気口がある。あそこから、抜け出すぞ!!一々、雑魚に構っていては、時間も弾も使い過ぎちまうぜ』

「分かった」

 ジョーカーとモナは、ボロボロの壁紙が貼られた壁に蹴りを入れて、通気口に取りついた。

 モナがジョーカーの背中を昇り、通気口のカバーを外し、先に入る。その後は、モナに引きずり込まれるようにして、ジョーカーも通気口の中へと入り込んでいく。

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』

『ぐるるるろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』

 ジョーカーとモナを探しているのか、大型のシャドウたちが、通路を右往左往している。三匹、四匹と、徘徊するその数は増えていく……。

『ジョーカー、通気口を進んで、ここから離れようぜ。そっちの方が、時間を有効に使えるハズだ』

「了解した」

『おう。我が輩につづけ』

 そう宣言して、モナは通気口を素早く進んでいく。ジョーカーも小柄なモナを追いかけるように、必死になって腹ばいの動きを続けた。

 ときどき鍛えていて良かったなと、ジョーカーは考えていた。

 少年院送りになった後も、筋トレだけは続けていた。周囲からは脱走する気なんじゃないかとも言われてしまったが、気にすることなく体は鍛えていたのだ。

 怪盗としての仕事は久しぶりだが、トレーニングを継続していた甲斐もあり、動きからは鈍りが削れ落ちていく。腹ばいでの移動スピードがゆっくりと改善されていくのが自分でも理解することが出来た。

『ニャハハハハ!!……いいカンジだぞ、ジョーカー。勘がとんどん元に戻っているのが見ていて分かるぜ!!』

「そうだな……それで、モナ」

『どうした、ジョーカー?』

「出口だぞ」

『……おう。静かに動け。我が輩が偵察してくる……』

 ジョーカーは蛇のようにゆっくりな動きを選んだ。モナはジョーカーを置いて先行し、通気口の隙間から、明かりが漏れて来る室内を観察する……。

 その部屋は……コインランドリーのように見えた。無数の洗濯機と乾燥機が並ぶ場所である。

『……ふむ?……認識がズレているのかな。とにかく、シャドウはいないぞ。ジョーカー、クリアだ。とりあえず、この先に降りよう』

「了解だ」

 ジョーカーは通気口の先にあるそのカバーに対して、拳で二、三度パンチを叩き込んで外してしまう。モナが飛び降りて、ジョーカーも通気口から体を柔軟にしならせるようにして飛び降りていた。

「……コインランドリー……?」

『そうみたいだな。『主』の記憶かもしれない……なんというか、色々な思い出が混ざって、ここに投影されているのかもしれないと感じる……根拠はないぞ。ただの、我が輩の直感に由来することだ』

「それなら余計に信じられる」

『……へへ。さすがは相棒だな、ジョーカー……さてと。この部屋には、誰も……っ!』

「……ッ!!」

 怪盗たちは気配を感じ取り、並んだ洗濯機の群れの影に飛び込んでいた。

 足音がこの場に近づいてくる。パタパタとした、スリッパが揺れるような音と共に。それは……半透明で、青白く光る『子供』だった。

 肩の高さまで髪を伸ばした、痩せて、色白の肌の女の子だ。小学校、低学年ぐらいだろうか?……痩せ細っていて小さく見えるから、実際の年齢よりも幼く見えている可能性は存在していた。

 そして、どこか病気を患っているのかもしれないとカンジさせる儚さがあった……半透明であるし、青白い光を放ってもいることから……ジョーカーもモナも、彼女にことを『幽霊』だと考えてしまっていた。

 『幽霊』は、ニコニコしながらこの場所にやって来ると、ドラム式の洗濯機の大きなレバーを重たそうに回して、ゆっくりとそのフタを開けていった。

『おかーさーん。あけたよー。ここで、あらおうよ―――――』

 満足していそうな微笑みと共に、そんな言葉を残して……『幽霊』は消えてしまった。そして、彼女の消失と共に、このコインランドリーの照明も消え落ちてしまっていた……。

『……っ!!おいおい、真っ暗にされちまったぜ……ていうか、さっきの女の子って……』

「幽霊だろうな」

『……だよなー。なんていうか、むちゃくちゃ透明だったし……でも、敵意とはは感じなかったよな……』

「……お母さんの手伝いをしていたようだな」

『ああ……なんていうか、ちょっと切なくなる……あの子かな、七不思議の自殺した女子学生ってのは……あの子が高校生になった頃に…………いや、分からないよな、そんなことは』
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。