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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第三十九話    我は汝、汝は我


 城ヶ崎シャーロットは、スマホに出てくれない。深夜だからだろうか?……それとも、何か大きな異変にすでに巻き込まれているのか……?

『……つながらないか。何かが起きているのか……っ!?お、おい、蓮、大変だッ!!』

「どうした!?」

『外だよ!!窓の外を見てみろッ!!』

「……っ!?」

 蓮はカーテンを力一杯に引っ張り、窓の外を睨む―――そこには……見慣れたあの存在がうろついていた。

 黒い影が、ヒトの形となり立体的に浮かび上がったような存在……その頭部には、それぞれの属性を示す仮面をつけた怪物……『シャドウ』。それらが、雨宮蓮の故郷を徘徊しているではないか……ッ。

「どうなっているんだ……」

『我が輩にも分からん!!……しかし、ここは……もしかしたら……異世界なのか?』

「……っ!?」

『現実世界にシャドウが這い出して来るなんて、よっぽどのことのハズだ。いくらなんでも、いきなりそんなことにはならない……我が輩たちは、もう異世界にやって来ているのかもしれない』

「……そうなのか?」

『分からん。しかし、現実世界にシャドウは、あれほど簡単に現れたりはしないはずだ。それほどまでに、今の世の中は、壊れてはいない……と思う』

「……そうであって欲しいものだな」

 ……試す方法は、一つだけだ。

 蓮は、精神を集中させながら、その指に力を込める。顔面を指で把握するのだ。久しぶりの感覚だ―――力を、解放するッ!!

 その瞳に金色の輝きがあふれて、口もとは反逆者の心に昂ぶる、凶暴な笑みを浮かべるのだッ!!

『な、なるほど!!ペルソナを呼ぶのかッ!!』

「そうだ。来いッ!!『アルセーヌ』ッ!!」

 雨宮蓮の体を、蒼い炎が包んでいく。そして、蓮は顔を剥ぎ取るような仕草を儀式として……反逆のペルソナ使い、『怪盗ジョーカー』の姿へと帰還していた。

 目の前には、蓮が初めて心の海から呼び覚ましたペルソナ、『アルセーヌ』が浮かんでいる。

『……ふむ。主よ、再び、相見えるような事態となるとはな』

「……何か、知っているのか?」

『フフフ。我は汝、汝は我。この運命については、理解していることもないではないが、今すべきことは、対話なのか?』

「……いや。違うな。城ヶ崎のところに行く。『モナ』!!」

『おうよッ!!窓を開けろ、蓮―――いや、ジョーカーっ!!』

「ああ」

 ジョーカーは窓を開け放つ。黒猫は開け放たれた窓から、ガレージの天井に降りる。そのまま、ガレージの屋根を走り、雨宮家の玄関前に飛び降りた。

『へーんしんッッッ!!!』

 ボヒュン!!

 大きな音がして、モナは怪盗団のシトロエンバスへと変身する。モナ・カーだ。

『うおおお!!力が戻ってるううッ!!乗れ、ジョーカーっ!!』

「ああ。行くぞ、『アルセーヌ』」

『……ふむ。いいだろう。主よ、我が力、存分に使え』

 『アルセーヌ』がジョーカーの影へと吸い込まれていく。ジョーカーはそれを見届けると、窓から猫のように身軽に飛んでいた。ガレージの屋根に飛び移り、そのまま屋根を音も立てずに駆け抜けていく。

 モナの化けた車の背を踏み台にして、素早く地面に降り立った。

 モナの猫バスが揺れる。

『ははは!!いいじゃねえか!!体のキレは、まったく落ちちゃいないようだな!!乗るんだ、ジョーカーッ!!』

 ドアがとんでもない勢いで開いて、ジョーカーは怪盗バスに乗り込むのだ。シートに座ると、ハンドルを強く握りしめる。

 怪盗バスは運転手がハンドルを操作しなくても走るが、ここぞの時は運転手がいた方がそのスピードはずっと速くなるのだ。

「行くぞ」

『おうよ!!』

 モナの力強い言葉が放たれ、怪盗バスは車輪をギュルギュルと唸らせて、猛烈な勢いで加速していく。

 ……ジョーカーの地元は、すっかり異世界に取り込まれてしまっているようだ。

 夜とは言え、ヒトの姿はおろか、車道を走る車の影一つない。あるのは、くたびれたようにヨロヨロと徘徊しているシャドウたちの群ればかりだった。

『……どこもかしこも、シャドウであふれかえっていやがるぜ……ッ。まったく、どうなっていやがるんだ……?』

「聖心ミカエル学園の七不思議……アレが、何かに関わっているようだ…………」

『そうか……何か、イヤな予感はしたんだがな……ッ。まあ、いいさ。今は、とにかく城ヶ崎のところに行くぞ!!見ろ、ジョーカー、城ヶ崎のマンションだぞ!!』

 城ヶ崎シャーロットのマンションの前に、怪盗バスは急停車する。モナは即座に、猫モードに戻った……。

『……ん。あれ?違うな、コレじゃ、戦えんッ!!うおおおおおおおおおおおッ!!変身ッ!!』

 モナが気合いを叫び、猫の姿から、不思議な2頭身の猫型生物の姿へと変身した。

『ふむ。久しぶりの二足歩行だな!!……よーし、体は鈍っちゃいないぞ!!城ヶ崎のマンションに、突入しようッ!!』


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