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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第三十八話    ベルベット・ルーム再び


 二日連続での遅刻は避けるべき行為だったが……城ヶ崎シャーロットにSNSでメッセージを送っておくことにした。カレーを写メに撮り、それを送ってみることにした。

『……メシテロかよっ。あの食いしん坊なら、間違いなく食べたーいって、ごねるに決まっているな』

「そうかもな」

 送信する。返事を待ちながら、明日の準備でもしておこうと考えていたが……明日の準備が終わっても返信はなかった。そもそも既読にもなっていないようだ。

『ふーむ。城ヶ崎のやつ、眠っちまったのかもしれないな。彼女にとっても、色々あった一日だっただろうから』

「そうかもしれない」

 時刻を見る……10時37分……いつの間にか時間が過ぎているものだ。

「そろそろ寝るか」

『おう。そうしようぜ。明日は、早起きしよう。いや、今日も早起きだったのだが……今日以上に素早く行動することにしようぜ』

「わかっている。じゃあ……電気を消すぞ」

 蓮はモルガナにそう断りを入れて、部屋の明かりを消した。真っ暗だが、怪盗の瞳を使えば暗がりの中でも輪郭が浮かび上がるのだ。そのまま室内を歩いて、ベッドに寝転んでいた。

 ……色々とあって疲れていたのだろうか?それほど遅くない時間だというのに、睡魔が襲いかかって来る…………ふむ……なんだか…………この感覚は、懐かしい…………。

 …………ベルベッド・ルーム……。

 頭の片隅で、その部屋の名前を呟きながら、雨宮蓮は深い睡魔の囚われとなるのだ。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……ッ!!

『ヒヒヒヒヒ!……お目覚めですかな、お客さま』

 聞いたコトのあるような、ないような……そんな声が頭に響いていた。蓮はゆっくりと瞳を開ける。自分は……イスに座っているようだ。服装も、寝間着用のTシャツのままであり、囚人服ではない。

『おやおや。まさか、囚人服ではないことに、驚いておられますかな?』

 目の前に、イゴールがいた。鼻の長い、丸い顔の不思議な人物―――かつて自分に力を与えてくれた存在であり、敵でもあったが―――いや、正確には敵が、彼の姿を模倣していただけだが。

「……本物の、イゴールか」

『ええ。そうです。いつぞやかは、ご迷惑をお掛けいたしましたな。今は、この通り、正当なる立場へと戻りました』

「……そうか。それは良かった」

『ええ。たしかに、私は救われました。しかし……雨宮蓮。貴方さまには、新たな運命の関門が立ちふさがろうとしているようでございます』

「……新たな、運命?」

『そうです。ある意味では、これも予定調和と申しましょうか……ペルソナ、『サナタエル』を覚醒してしまった貴方さまには、避けることの出来ぬ運命……聖心ミカエル学園。あの場所を運命が選ばれたのも、決して偶然なことではない』

「……どういうことだ?」

『すぐにお分かりになると思います。雨宮蓮、『サナタエル』の力の保持者。貴方には、大きな役目があの学園で与えられることになるでしょう。私としては、健闘を祈ることと、ささやかな力をプレゼントすることしか出来ません』

「何かの力をくれるのか?」

『ええ。貴方さまからすれば、いつもの通りの力かもしれません。私が、貴方さまに授けるのは、初めてのことではあるのですが……再び、反逆の衣をまとうための力を、解放いたしましょう。そして、戦いの場へと趣く、異世界ナビの力も』

「……何が起きる?」

『……運命ですな。『サナタエル』が導き、引き寄せてしまった運命……貴方さまのご学友の命が、危険に晒されることになる』

「……っ!!」

『すでに、心あたりがお有りのようで。さて。そろそろ、夢の時間も終わる。現に戻ったあかつきには、私めの与えた力を駆使して……どうか、ご学友の命をお救い下さい。貴方さまにはその能力があるからこそ、『サタナエル』が宿り、『サタナエル』もこの運命を呼んだのですから―――』



 ―――っ!!

 夢から覚める。全身に汗をかいていた蓮は、胸元にいたモルガナを弾き飛ばすような勢いで体を起こしていた。

『むぎゃ!?ど、どうした……蓮?』

「……ベルベッド・ルームに行ってきた」

『な、なんだと!?』

「何かが起きるらしい。オレの学友の命が、危険に晒されると、イゴールが教えてくれたんだ」

『学友……?つまり、シュージンじゃなくて、こっちの方か?……聖心ミカエル学園のことだな!?』

「おそらく」

『待てよ。そんな……ミカエルでお前の友人なんて、今は一人しかいないじゃないか』

「そうだ……それに……彼女は、城ヶ崎シャーロットは……オレたちと共に、鐘の音を聞いている」

『七不思議……たしか、あの鐘の音を聞いちまうと……自殺した女生徒に呼ばれて、飛び降りるとかいうハナシだったな……ッ』

「ああ……」

 蓮はスマホを見る。スマホの中には、あの異世界ナビが復活していた……。

『異世界ナビ……っ。本当だ、本当に、何かが起きるんだな……蓮、城ヶ崎だ。城ヶ崎に連絡をしろッ!!』

「わかっている!!……城ヶ崎……っ」

 蓮は慌てながらも深呼吸をする。呼吸で心を無理やりに落ち着かせながらも、彼の指はスマホを操作する―――城ヶ崎シャーロットのSNSから、彼女に電話を試みる。


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