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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第三十三話    そこそこモテモテ


「ふわー……ホントーにごちそうさまでしたー……ウルトラをつけて表現すべきほど、グレートなオヤツ・タイムでありましたー」

 カフェオーレを飲みながら、城ヶ崎シャーロット究極の満足顔で、そんな感想を述べてくれる。

『本当に美味しかったぜ、蓮。店が出せそうなレベルだな。作るか、この実家を改装してルブラン2号店』

「ふむ」

 それも楽しそうではある。喫茶店の経営……雨宮蓮の無限にある人生の選択肢のなかでも、上位にある夢の一つであった。佐倉惣治郎という人物の生きざまと、彼が持つ大きな優しさに、蓮は尊敬を抱いているのだ……。

 ……高校3年生になったばかりの蓮ではあるし、進学を中心に考えてはいるが。喫茶店を開くという道もある……世界中のコーヒーの産地を巡ったりして、豆と語らってもみたい。

 真が言うには、味だって科学で分析出来るのだから、より専門的な知識を得るためには学問だって必要なんじゃないかしら―――とのことだ。

 たしかに、それもまた真実だろう。大学に行き、味や農業、経営についての専門知識を学ぶというのも有りだな……。

「……レンレン?どーしたの?」

「ん。ああ、ちょっとな。モルガナが喫茶店を開けというから、ちょっと考え込んでしまっていた」

「おー。モルガナ、そのアイデアはとってもナイスだよーっ!!」

 ナデナデナデナデ。

 城ヶ崎シャーロットのそろえられた指が、モルガナの小さくて賢い頭を撫でていた。モルガナは思わぬ快感に、ノドをゴロゴロゴロと鳴らしてしまう……。

『オヤツでお腹いっぱいになった幸せモードで、ナデナデまでされてしまうと……我が輩、幸せが飽和状態だー……って。ちょっとだらけ過ぎだな。なあ、蓮。城ヶ崎の足はどうなった?……あまり長居していると、すぐに暗くなってしまうぞ?』

「そうだな。城ヶ崎」

「なーに、レンレン?」

「足首は?」

「うん。あんまり痛くないケド、ちょっと痛いかな」

「掃除で動き回っているし、テーピングも緩んでいるんだろう」

「じゃあ、お、お医者さんゴッコだね……レンレンのお父さんもお母さんも、いないから……い、今のうちだね……って!!あはは。恋愛ゲームみたいだねー。シャーさん、貞操の危機だー」

『……そういう冗談を言えるあたりが、ある意味でガキっぽいのかもしれないな。我が輩という監視者がいない状態だったら、紳士の蓮だって悪さを働くかもしれないのにな……って、冗談だぞ、蓮。さて。さっさと処置してやれ』

「ああ。脱げ」

「う、うん。ら、乱暴にしちゃ、ダメだからね……っ。ぷ、あはは」

 ふざけて笑いながらも、城ヶ崎シャーロットはその長くて細い足から、学校指定のソックスを脱ぎ捨てていく。少しセクシーかもしれないと蓮は思ったが、紳士の力で変な妄想はしないことにする。

 それに、足首の捻挫も気になっていた。

「……まだ、腫れは少し残っているな」

「うん。そーみたい。でも、ほとんど痛くないよ?」
「テーピングを張り替えて、アイシングする。それから、送っていく」

「いいの?」

「自転車が無いと、明日困るかもしれないだろ?……まあ、痛むようだったら、明日はバス通学にするといい」

「そだね。明日はバスにするとしよう。レンレンが、バスに乗り遅れそうになったら、先に乗っているシャーさんが、バスの運転手さんに、『船長、待って下さい!まだ、彼が残っています!!』って、言ってあげるね」

『どーして船長なんだよ?……だいたいよ、そこまで緊迫したメッセージは不必要な気がするぜ……』

「頼んだ」

『頼むのかよ』

「頼まれたっ!!」

『妙なやる気を城ヶ崎が出している……変なことにならなきゃいいけどな……さてと。馬鹿話もいい加減にして、治療してやれよ』

「ああ。脚をこっちに伸ばせ」

「ラジャー」

 スカートを手で押さえながら、城ヶ崎シャーロットはその長い脚を蓮に差し出す。頬が少し赤くなっていることにモルガナは気づく。何だかんだで、蓮を異性として意識はしているようだ。

 むしろ、意識しているからこそ、ふざけているのかもしれない。そうすることで、距離感を保とうとしているのかもな……奥手な子っぽいな。まあ、城ヶ崎らしい気もするが。

「テーピングを取るぞ」

「う、うん」

「濡らしたほうが取りやすいが、水で濡らすか?」

「うーん。そのままでも行けると思う。シャーさん、ムダな毛とか生えてませんから!」

『いらんコトを言うから恋愛モードが続かねえんだろうな……美少女なのに、ところどころに勿体ないが突き出て来るカンジだよな、城ヶ崎って……』

「城ヶ崎の脚はキレイだもんな」

「レンレン、エッチだ……っ」

「すまない」

「いいっす。お医者さんゴッコの最中なので……っ」

 蓮はテーピングをビリリと剥いだ。ちょっと痛かったのか、城ヶ崎シャーロットは沈黙した。しかし、蓮はマイペースだ。

 アイシング・スプレーを城ヶ崎シャーロットの捻挫した足首に吹きかけると、そのまま新たなテーピングを施して、包帯をグルグル巻きにして治療は完成していた。

「早業だね!」

「ああ、慣れているからな?」

「にょ、女体に!?」

「どうだと思う?」

「そ、そこそこモテモテなので……な、なれて、おられたりするのかもと考えますと……なんだか、よく分からないですが、私、ちょっと赤面しちゃうでござる!」


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