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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第二十三    『見守る視線』


 微笑む雨宮蓮を見つめながら、城ヶ崎シャーロットもまた笑顔を深くする。サンドイッチを口に運びながらも、うむうむ、とうなずいていた。

「もぐもぐ。いい笑顔だよー、レンレン。あー……レンレンの部屋に行ってみたーい」

「この部屋は、東京にある」

「うん。そーだよねー。私にワープ機能が搭載されていたら。一瞬で移動しちゃったりするんだけどなー……私、そういうタイプのサイボーグとかじゃないし。残念ながら、生身系の女子高生だしなー」

『生身系?……変な言葉だ。城ヶ崎は、やっぱり、どこか変わっているな……』

「レンレン・ルームに行きたーい。あー……レンレンは、ワープの魔法とか使えるタイプの、魔法使いさんとかじゃないよね?」

「そういう魔法は使えないな」

 使えるのは、ペルソナを呼ぶことぐらいか……。

「猫さんとお話し出来るわけだから、実は、ひょっとして……って、考えていたんだけどさー……秘密にしとくから、実は、魔法の国からやって来た魔法少年だったりしたら、コッソリと教えて?」

『魔法少年?……魔法少女に比べて、ずいぶんと可愛げの無い響きがするな……』

「魔法の国の出身じゃない。残念ながら、ただの日本出身の高校生だ」

 怪盗団のリーダー、『ジョーカー』であるわけだから、ただの高校生というわけでもないのは確かだが……魔法の国の出身者ではない。

「そっかー。でも、残念じゃないよ。レンレンが魔法の国出身者だったら、魔法の国にいつか帰らないといけないわけで……もしも、それだと、このシャーさんこと、城ヶ崎シャーロットさんは、とっても悲しくなっちゃうところだったのだー!」

 城ヶ崎シャーロットは蓮が魔法の国の国民でないことに安心したらしく、ニコニコしながらサンドイッチを食べるのだ……もぐもぐもぐもぐ。

『……可愛らしいケド。いい食いっぷり過ぎるな。見ていて、何だかお腹がいっぱいになって来てしまうぞ……可愛い雰囲気に、釘刺すように残念なトコロが出てくるなぁ』

「ねえ。なんだか、モルガナが、私を褒めてる気がするーっ!……当たり?」

「ああ。半分ぐらいな」

「そっかー……じゃあ、そのうち、私もモルガナの声が聞こえるようになるかな?」

「そういう認識を深めて行けば、そのうちなるかもしれない」

『……ホント。そうなると、我が輩としても面白いんだがな。こっちじゃ、話せるヤツが蓮しかいない。通訳なしで、城ヶ崎とも話してみたいもんだ。からかい甲斐がありそーなヤツだもんな!』

 ニヤリとしながら、モルガナは猫フェイスを少女に向ける。最後のサンドイッチをもぐもぐしながら、少女は首を傾げるのだ。

「モルガナ……こっちをじーっと見てる……もぐもぐ……どーかしたの?……もぐもぐ……ハッ!?ま、まさか、このサンドイッチを、狙っているのかな!?」

 サンドイッチを強奪されるとでも思ったのか、城ヶ崎シャーロットはそのサンドイッチを勢いよく食べていった……。

「……またノドに詰まらせるなよ?」

「うん。おっけー……今回は、小さなカタマリだったものですから。ぜんぜん、まったくの余裕っす…………っ!?」

 豊かな感情表現能力を誇る、城ヶ崎シャーロットの顔が、『驚愕』という名の感情を伝えてくるのだ。その表情に、モルガナはビックリしてしまう。

『な、なんだ、どうした!?』

「や、や、や、やっちゃった……」

『え?』

「何をしでかしたんだ、城ヶ崎?」

 うなだれた少女は反省する犬みたいに、しょんぼりとうなだれて、涙目に潤む顔を蓮へと向けてくる。

「……あ、あのねー。レンレン。ごめんね!!」

「どうした?」

「さ、サンドイッチ」

「ああ、サンドイッチがどうした?」

「ほとんど、私が食べちゃった」

 蓮とモルガナが弁当箱に視線を移すと、そこにはもうサンドイッチの姿は消え去っていた。

『いつの間に……いい食いっぷり過ぎて、どれだけ食べられちまっているか、気がつかなかったな』

「ごめんね。また、やっちゃった……レンレン、成長期の男の子だもん。それだけじゃ、お腹、空いちゃうよね?」

「いや。まだ正午前だから、そんなでもなかった。十分だよ」

「ふえええ!!レンレン、やさしい!!サンドイッチ作るのも上手だし、さっきのコーヒーもなんだか美味しかったし……あー。レンレンが、お家に一人欲しいよ、シャーさんは……」

『えらく評価されているな……しかし、『また、やっちゃった』……か。こんな感じで、自分だけパクパクと食べちゃった日は、一度や二度じゃなさそうだ。ほんと……面白いようにガッカリ要素が顔を出してくる子だな、城ヶ崎は……』

「モルガナにも、呆れられてるっぽい……レンレンも、実は、怒ってる?」

「いや。美味しく食べてくれたから、オレはうれしいぞ。惣治郎も、自分のレシピを城ヶ崎に気に入ってもらえて、よろこんでいるはずだ」

「そうかあ。うん、前向きに事態をとらえる。それが、レンレンの強さなんだね?」

『……そうかもしれないケド。なんか、このタイミングで言うことなのかな……?』

 城ヶ崎シャーロットは、指を組み合わせて祈りの構えを取る。そして、青く晴れた空を見つめながら祈りを捧げるのだ……。

「ソージロウさん。レンレンは、あなたのサンドイッチを継いで、今日も元気に前向きな日々を過ごしています。安心して、空からお見守りください」

『おい!?マスターは生きているぞ!?それじゃ、まるで死んでるみたいじゃないか!?』

「惣治郎は東京で元気に生きているぞ」

「え。そ、そーだったんだ!?……なんか、私、誤解しちゃってたよう。では、あらためまして。ソージロウさん、東京から空を経由して……なんかこう、くにゃっと空に反射するような感じで、レンレンのことをお見守り下さい」

『くにゃっと空に反射って……蓮を見守るマスターのやさしい視線がかよ?……何か、イヤな視線だよな……』


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