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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第二十一話


「城ヶ崎、食事にしようニャー」

『まだ、続けるのかよ、それ……』

「了解したニャー、私について来るニャー」
『ほら。ノリがいいじゃないか……まったく……いちゃつきやがって』

 いちゃついているのだろうか?……城ヶ崎シャーロットの猫真似は、たしかに可愛らしい。あざとさも感じるほどではあるが、蓮はそういうあざとさも嫌いではないのだ。とにかく可愛いなら良しではある。

 猫ヶ崎が、ニャーニャー言いながら、手招きをしている。蓮は、誰もいない購買の前を通り過ぎていき、開けた食堂スペースに出る……。

『おお。かなり広々としているな!!窓ガラスも大きくて、光が一杯入りそうだ……まあ、今は利用しているヤツは誰もいないがな……』

「いつものお昼時はね、お弁当組とか、食堂や購買でゴハンを買ってきた組で、いっぱいになるんだよー。食堂の注目メニューはね、カレーうどん。カレーが跳ねちゃうと、制服についてガッカリ・モードになっちゃうけど……ダシと辛さが絶妙で、とっても美味しいんだよ!!」

『城ヶ崎はカレーうどんが好きらしいな。まあ、我が輩も好きだけどな。これだけ推してくるんだから、よっぽど美味いのかもしれん。今度、是非、食べてみようぜ、蓮?』

「……そうだな。城ヶ崎、今度、食べてみるよ」

「うん。でも、限定30杯までだから、ライバルだね!!」

 今日一番の真剣な眼差しを放つ城ヶ崎シャーロットがそこにいる。それは、彼女のカレーうどんに対する美学による情熱の視線なのだと蓮は解釈する。

 心なしか、彼女の大きな青い瞳の奥には、カレーを煮込むように暴れる真紅の炎が見えるよーな気がした。

「……ああ、戦場では、敵同士だな」

「うん。レンレンが相手でも、食券争奪戦争に、私は全くもって負けてあげるつもりはないんだからね?……お互いに、健闘を祈ろう、レンレンっ!!」

「ああ」

 そう言いながら、カレーうどんを愛する高校生たちは、ガッシリと握手をする。

 通学バッグから顔を突き出しているモルガナは、この場にある熱意に対して、ツッコミを入れたい気持ちで一杯になっていた……。

『おいおい。いつまでもボケてるんじゃなくて、メシにしようぜ、メシによ……教会の掃除をさせられるんだろ?新学期早々だけどよ?腹ごしらえはしておこうぜ』

「そうだな。メシにしよう、城ヶ崎」

「うん。そだねー……って。購買休みだああああっ!?」

『……そうか。城ヶ崎は弁当を持って来ていなかったのか……しょうがない、蓮。分かっているな?』

 モルガナと言わんとすることが、蓮には分かる。静かにうなずきながら、モルガナの入っている通学バッグに手を突っ込んで、サンドイッチの詰まった弁当箱を取り出していた。

「おい、城ヶ崎。いっしょに食べよう」

「え?い、いいの?……あ、む、ムリしないでね?わ、私、そんなにお腹とか空いてないわけだし。成長期の男の子のお弁当を奪わなきゃいけないほど飢えてないし―――」

 ―――きゅるるるううう。

 城ヶ崎シャーロットのおなかが可愛らしい音を放ち、モルガナは苦笑する。

『なんてタイミングで腹が鳴っちまうんだろうな……こういうドジな星のもとに生まれてしまった子なんだろうなあ、城ヶ崎ってヤツはさ……』

「ひゃううううっ!!ち、ちがうからね!?お、お腹空いてなんて、ないんだからね!?」

 赤くなった顔の前で、ブンブンと両手を振り回す城ヶ崎シャーロットがそこにいた。蓮はモルガナのためにバッグの入り口を開き、猫の体は優雅な動きで床へと飛び降りる。

『……ムリは禁物だぜ、城ヶ崎。お前だって、成長期の女子だ。栄養はしっかりと食べるべきだぞ』

「……城ヶ崎、一緒に食べよう」

「レンレン……でも。レンレンとモルガナのお弁当が、減っちゃうんだよ!?」

「皆で食べよう。そっちの方が、美味しく食べられるだろ」

「……レンレン……っ。うん、そーだよね。ありがとう、レンレン!」

『……あはは。ドジな子だけど。遅刻しそうだった見ず知らず蓮を助けようとしてくれるんだ。とてもやさしい子なんだよな』

「ああ、そうだな」

「……今は、モルガナは何て言ったの?」

「城ヶ崎は、やさしくて、とても良い子だと言っている」

「そ、そっか……照れるなー……それに、あんまり、私、良い子じゃないよ。今日は、お弁当をレンレンとモルガナから盗んじゃうしね!!」

『心の怪盗団、『ザ・ファントム』のリーダーとそのパートナーから、弁当泥棒しやがるとはな。なかなか、大したヤツじゃないか、城ヶ崎シャーロット』

 城ヶ崎シャーロットには、何か独特な絆を感じる。満面の笑みでニコニコと笑っている彼女を見ていると、雨宮蓮はそんな感情を抱くのだ。

 彼女もまた、怪盗団の仲間や、多くの協力者と同じように、自分の人生に深く関わることになる存在なのであろうか―――。

 窓の外で踊る、桜吹雪を見つめながら……蓮は城ヶ崎シャーロットとの絆が出来た手応えをかんじるのであった。

「……ねえ。レンレン。桜を見るのが好きなの?」

「ん。そうだな。この時期だけしか、見ることが出来ないしな……」

「じゃあ。窓の近くで食べない?桜の花びらが舞い散るところを見ながら、お弁当を一緒に食べよーよ!」

『いいアイデアじゃないか!』

「……ああ。そうしよう」


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