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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第十九話    ホームルーム


 やがて生徒たちが帰って来る。組み替えられたばかりのクラスだから、まだつるむヤツが決まっていないのか、やけに社交的になっているな。モナは机の中からクラスの様子を観察しながら、そんな印象を受ける。

 皆が孤独になるのはイヤだから、早くクラスのなかに親しい者を見つけようと行動しているのだ。蓮にも、そういう癖があればいいのに……あいかわらず、我らが怪盗団のリーダー、ジョーカーは孤独を好む。

 ……いや。城ヶ崎に取り憑かれているか。蓮の隣の席を手に入れているな。他の子と自分の席を交換したわけか。ふむ……城ヶ崎は、蓮を親しい者に選んだのだな。同性同士の方が良い気もしなくもないが……春だしな。

 しかし、城ヶ崎は蓮によく話しかけてくれる。もしかして、惚れているのだろうか?……いや、出会って3時間も経っていないし……でも、違うとも限らないか。蓮は、この一年間で見違えるほどいい男にはなっているしな。

 ……怪盗団の女子たちが、怒るかもしれんな。蓮は、何だかんだでモテるんだよなぁ。

「さあ。席に着きなさい。ホームルームを始めるわよ」

 3年B組の担任である神代がやって来た。生徒たちは、すぐにそれぞれ自分の席へと着席していく。反抗的なヤツはいないようだ。私立だし、あまり荒れたヤツもいそうにないな。蓮にケンカ売ってくるヤツも、この雰囲気ならいなさそうだ。

 シュージン学園での日々は、学生生活と呼ぶには、あまりにも暗い日々だった。陰口と無視とあらぬレッテルを貼られて、低評価の日々……心が弱い者ならば、自殺だって考えたかもしれない過酷な環境だったが―――蓮はあまり気にすることなく暮らしていた。

 考えれば、それはスゴいことなのかもしれない……やはり、我らが怪盗団のジョーカーは、傑物なのだろう。

 でも……学生らしい学園生活を送るというのも、蓮には幸せな日々になるのかもしれない。ろくでもない大人たちとの戦いを繰り広げる必要も、しばらくはないだろう……しばらくは。

「……さて。皆も最終学年に入りました。一年後には、進学と就職と、それぞれに異なる道を歩むことになります。この30人が同じ場所に存在していることは、二度とない時間です。勉学だけでなく、友情も深めなさい。高校時代の仲間は、一生の仲間になります。今後60年近く、連絡を取り合う仲間も出来るでしょう。そういう仲間が多ければ多いほど、人生は豊かになります。それを、心に刻んで下さい」

 ……ああ、シスター・神代は、本当にマジメで、素敵な女性だー……我が輩の、心のオアシスー……っ。いや、我が輩には、杏殿という心に決めた女性が…………。

 でも、蓮だって城ヶ崎がいるんだから、我が輩だって、シスター・神代に……。

 猫好きかなー。

 猫好きだといいなー、シスター・神代……。

 モルガナにも春が来ているようだと、机のなかでモゾモゾと動いている相棒を見ながら、蓮はそんなことを考えていた。

「さてと。とりあえず、話しておきたいことは話しました。委員は週明けにでも決めることにしましょう。我が校の伝統は、自発的な委員会活動。それぞれ、なりたい委員があるのであれば、私に申告してくるように。基本的には、早く来た者の順で、それぞれの委員に割り振っていきます。委員会活動に所属していれば、大学への推薦入試を受けやすくもなりますから、自分で判断して行動するように」

 ……自主性を重んじる校風というわけらしい。委員か。入っていた方が、校内での評価が良くなるかもしれない。進学の面でも、有利になるか……色々と、考えておくべきだな。

「では、今日はこんなところですね。今日は1年生のオリエンテーリングが行われます。用が無い者は、すみやかに帰宅するように。各委員会に既に所属していたり、学校側から手伝いを頼まれている者以外は、30分以内に学校から出ること。部活も、今日は禁止のはずですからね。さあ、用が無い者は帰宅するように!以上です」

 神代は長い話を終わらせると、そのまま教壇を降りて、3のBの教室から出て行った。生徒たちも、ゾロゾロと教室から離れ始める―――荷物を持っていかなかった者たちもいることから、彼らの委員会の仕事でもあるのだろう……。

「さてと。新入生に、ミカエルのことを教えてあげましょー」

「一年生のところに行くのか?」

「分かってて、言っているよね?……君のことですよー」

「……オレのことか」

「そうゆうこと。どの委員がオススメなのかとか、耳よりも情報も教えてあげるからね」

「助かるよ」

「うん。じゃあ。私たちも行こう。まずは、食堂からご案内だね。ちょっとお腹も空いているし……あそこなら、持参したお弁当も食べていいようになっているんだ」

「お腹が空いているのか?」

「うん。だから、行きましょう、レンレン!神代先生のお手伝いをするまでに、腹ごしらえをしておくんだよ」

「了解だ。案内してくれ、城ヶ崎」

「おっけー。任されたから、一緒に行くよ、レンレン!迷子にならないように、私にちゃんとついてくるんだよ?じゃないと、七不思議にも遭遇するかもしれないし」

「……『七不思議』って?」

「この学校に伝わっている怪談だよ。七つあるらしいけど、有名なのは三つだけ。ボーッとしていると、これに巻き込まれて、酷い目に遭っちゃうらしいの。だから、そうならないように、私が守ってあげるね、レンレンのことを」


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