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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第十六話    『罪と罰』

 坂道をゆっくりと登り、大きな白い石造りの校門のあいだを抜けて……蓮たちは聖心ミカエル学園に辿り着いていた。

 ミッション系の高校であり、その敷地内には、小さいながらも教会が建っているようだ。

「……教会があるんだよ、ミカエル!日本の学校には、珍しいって言ってた」

「そうだな。オレも、そういう学校に来たのは初めてだ」

『へー。そういうモノなんだなー……おお。アレ、アレを見てみろよ、蓮。マリア像ってやつだろ?』

「……ホントだ。マリア像だ」

「うん!マリア様はね、私たちを常日頃から見守って下さっているの」

「城ヶ崎は、クリスチャンなんだな」

「そだよ。そういう子はミカエルには多いけど……レンレンは違うんだ?」

「まあな」

「どうして、ミカエルを選んだの?」

「家から割りと近かったからだ」

「そっかー。私のマンションからも近そうだね。家族は?」

「両親がいるが……二人とも、しばらく海外出張中だ」

「ハーレム漫画の主人公みたいでござるなー」

「オレとモルガナしかいない。男率100%だから、ハーレムっていうのとは違うだろ」

「え?……いや、男だらけでのハーレム…………だ、ダメだ。マリア様が見ている前で、そんな破廉恥なことを考えてたら!!」

『……美少女なのに、所々に、大きな残念が顔を出してくるタイプの子だよなぁ……』

「……ああ。マリアさま、本当にすみません。ちゃんと良い子になりますから―――」

「―――良い子は、遅刻したりしないものなんですよ?」

 マリア像の近くに、シスターがいた。カトリック教会の尼僧だ。黒を基調にした服を着ている、若い女だ。

『うお!!むちゃくちゃ美人だーッッッ!!!』

 通学バッグの中にいるモルガナが、シスターの美貌に興奮して跳びはねていた。蓮は自分で動かしてしまったように取り繕ってみる―――バレなかっただろうか?……蓮はすでに気がついている。この学校の『教師』の半数は、たしか……。

「神代先生!!ご、ごめなさい!!」

「……はあ。城ヶ崎さん、3年生になったその日に、いきなり遅刻ですか?……気がたるんでいる証ですよ?」
「す、すみませーん……」

『おい。蓮。事情を説明してやれ。城ヶ崎がかわいそうじゃないか?お前を自転車に乗せてやろうとしてくれたせいで、ケガしちまったんだからな』

「……神代先生。これには事情があるんだ」

「えーと……貴方は…………っ!」

 蓮を見る神代の顔が険しくなる―――それは、わずかな時間だったが、怪盗団のリーダーとして鍛え上げられた蓮でさえも、呑まれるような迫力であった。

 しかし、それも一瞬のことだったし……頭をペコペコと何度も下げまくっている城ヶ崎シャーロットは気づいていないようだ。

『……っ?……なんだか、一瞬、鋭い貌になったよーな?……それに、変な気配も……いや、気のせいか……気のせいだな。だって、とんでもなく美人だし』

 とんでもなく美人なら、変な気配がしても問題ないのだろうか?……モルガナの基準は、ときどきおかしなところがある。

 神代はやさしい美貌に戻り、蓮に向けてゆっくりとうなずいてみせた。

「……ああ、そうですね。編入生の……」

「雨宮蓮です」

「……そうでした。ようこそ、聖心ミカエル学園に。全ての教師と、全ての生徒が、貴方のことを歓迎します。雨宮蓮さん。それで……この遅刻に、何か理由がおありとか?」

「ええ。実は―――」

 ―――蓮は朝からの出来事を、神代に説明した。困っている自分を助けようとして、城ヶ崎シャーロットが足を捻挫してしまったこと。そのせいで、彼女は遅刻してしまったことを、鍛え上げたコミュニケーション能力を使って説明していった。

「……なるほど。そういう事情があったわけですね。自転車への二人乗りは、禁止されていることですが……困っている方を助けようとした事実は、聖心ミカエル学園の生徒として評価すべきことです。分かりました、城ヶ崎さん。貴方の遅刻を、取り消します」

「やった!!ありがとー、先生!!」

 城ヶ崎シャーロットは大喜びしながら、シスター服に身を包む神代に抱きついていた。神代はその行動を暑苦しく思うのだろう、手のひらを使って、犬みたいな勢いで飛んで来た城ヶ崎のオデコを押しのけていく。

「……いけずだ、先生」

「女同士とはいえ、みだりに抱きついたりするものではありませんよ。日本の文化では、親しかろうとも節度を保ったお付き合いをするべきです」

「ハグもダメー、分かった」

「キスは、もっとダメですからね?とくに、異性とのそういったことは」

「お、男の子とは、まだしてませんよう!?そうだよね、レンレン!?」

「どうしてオレに訊く?」

「そ、そだねー……どーしてだろ?……テンパってるんだろうな、私ー」

「……はあ。それで、雨宮さん」

「なんですか?」

「私は、3年B組の顧問として、貴方の担任を一年間務めさせていただきます」

「先生が担任なんだー……」

「なにか、不服なことでも?」

「な、ないですよう!!」

「最高の一年にしてあげます。さて……雨宮さんは、初めての登校ですから、大目に見たいところですが……女生徒を傷物にしてしまった事実を見過ごせば、貴方も心苦しいでしょう」

「き、傷物って、まだ、そんなには……っ」

『……城ヶ崎は思春期だな』

「はあ。とにかく、罪には罰を。私は、そういう教育方針です。今日の放課後、この教会の掃除を手伝って下さい。それが、貴方の罪に下される、私からの罰です」


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