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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第八話    仲良しコンビ


 城ヶ崎シャーロットは、ゆっくりとした動作で学校指定の黒い靴下を脱いでいく。

 スカートの端がめくれそうになっているが、そういったことには無頓着らしい。紳士だから、少しだけ見とれて、その後、空に漂うサクラの花びらを蓮を見つめた。

「脱げた。乙女の柔肌・開放モードっ!!」

『……コイツもコイツで、ノリがいいところがあるな……とにかく、蓮、手当をしてやれ』

「ああ。治療を開始する」

「うむ。頼んだぞ、衛生兵」

 蓮は城ヶ崎シャーロットの右足首を観察する。白くてすべすべした肌だが、足首の外側がすこし腫れ始めていた。

「アイシングするぞ」

『うむ。パスだ』

 地面に置いた通学バッグから、ニョキリとコールド・スプレーの缶が生えてくる。蓮はそれを無造作に掴み取ると、城ヶ崎シャーロットの足首に冷たい空気を吹きかける。

「ひゃう。冷たい……っ」

「傷口を冷やすといい。内出血を少しは防ぐことが出来る。その後は……テーピングで痛めた靱帯を保護するように固定して……包帯で、周囲の圧迫する」

 解説しながら、武見とモルガナに仕込まれた応急処置術を、蓮は発揮していた。あっという間に、その処置は完成する。

「うお。早っ!?て、手の動きが見えないレベルだよー……あと、にょ、女体に慣れているの?思春期の男の子なのに、私レベルの美少女の足にビビらずに触れるとか?……や、やっぱり、東京あたりで、お慣れになって……?」

「それなりにだ」

「そ、それなりなのかー……っ」

「……固定はしたぞ。今、どんな具合だ?」

「う、うん」

 城ヶ崎は靴を履いたまま、ゆっくりと立ち上がる。痛みは、完全には消えていない。当然だ。だが、それでも、かなりマシになっているようだ。

「うん。痛みはあるけど、だいぶ、いいカンジだよ。ありがとね、レンレン」

「……いや。オレがケガをさせてしまったようなものだからな」

「ううん。私がドジっちゃっただけだもん。レンレン、悪くないよ?」

「……じゃあ、お互いサマだな」

「……いい発想だね!うん。それで行こう。私たち、どっちとも悪くて、それを半分こだよ!!」

『……いい子だぜ……』

 モルガナは健気な女子に弱いのかもしれない。理想が高いような……いや、割りと節操が無いような……?

「……でも。これで、大遅刻決定かもー」

「次のバスでいっしょに行けばいい」

「でも。自転車あるし?」

「オレの家にでも置いておけ。すぐそこにある」

「ホント?」

「ああ。オレが運んでおこう」

「……うん!任せたぞ、衛生兵レンレン!」

「了解だ。座っていろ。立っていると、足首に負担がかかる」

「わかったよ。そうしておくね」

 蓮はベンチに座った城ヶ崎シャーロットに、自分の通学バッグを手渡した。

「預かっておくぜ!?」

「……ヒマなら、それと話していろ」

『それって言うなよ』

「う、うん。ニャーニャー?」

『にゃ、にゃーにゃー?』

「うお。人生初だ。通学バッグと、私、対話している……っ!?」

 城ヶ崎シャーロットは、まだバッグの中のモルガナに気がついていないようだ。

「……開けていいぞ」

『……っ!?』

「いいの?男子特有の、アレな雑誌とか入っていたりしない?」

「ないな」

「そ、そうか。あったらあったで、リアクションに困るよね」

「だろうな。変なものは、何一つ入ってはいないから、安心しろ」

「……ふむ!……なら、開けてみようじゃないかー!えーい。オープン・ザ・バッグっ!!」

 じいいいい!……通学バッグのチャックが開かれて、その中にいるモルガナと、城ヶ崎シャーロットの目が合った。二人とも青い瞳である。

「うわ!!猫さんがいたー!!」

『……おい。いいのか、蓮。バレちまったぞ……』

「一緒に遊んでいろ」

「ヒトによく慣れてるタイプの猫さん?」

「ああ。とくに女性には優しい」

「おー。紳士な猫さんだ。オスなんだね?」

「オスだ」

『うむ。紳士だ。モルガナだ!』

「ニャーニャー言ってる!」

「モルガナだと、自己紹介しているんだ」

「おー。そっかー、モルガナちゃーん。よろしくねー」

 城ヶ崎シャーロットは、そう言いながらモルガナを抱きしめていた。モルガナは、びく!と体を強ばらす。

「あれれ?……驚かせちゃったかな?」

「いいや。喜んでいるんだ。城ヶ崎と仲良くなれて」

「そっかー。いい猫さん。私のこと、好きなんだねー。紳士だー」

『う、うむ。紳士だぞ!紳士だが……我が輩には、杏殿という愛すべき女性が……』

 そう言いながらも、モルガナは城ヶ崎シャーロットに捕獲されたかのように抱かれる。にんまりと猫の顔が笑うのが見えた。

『……蓮、行って来い。自転車を置いてから、走って戻れ』

「わかった」

「んー。レンレン、猫さんと、お話ししてるっぽい……?」

「ニャー」

『ニャー』

「あはは。仲良しコンビだねー!!」

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