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【FGO】特異点Ω -私の故郷と記憶-

原作: Fate 作者: えせ
目次

第一節 記憶の呼び声

いつもの帰り道。公園の横を通って、2番目の角を右に曲がる。

黒いフェンスの上でいつも寝ている黒猫。その日はなぜかいなかった気がする。

ぼーっと歩いて、明日の宿題いつやろうかな、なんて考えていたら家の前。


カバンの底から鍵を引っ張り出した。
鍵を差し込もうとしたら、うまくささらなかった。
鍵が開いていたからだ。
「え・・」
2人ともまだ仕事のはず・・
鍵をかけ忘れて出ていったとも考えにくい。

まさか、泥棒・・?

警察でも呼ぼうか、しばらく考えていたものの、結局
好奇心が勝った。
「鍵のかけ忘れかもしれないし、ちょっと覗いてみるかな・・」
音がしないよう、慎重に扉を開け、帰宅。
運動靴を脱いで、廊下に立つ。
玄関に置いてある時計のカチ、カチ、という音だけが鳴り響く。
特に荒らされている様子はない。

泥棒がいたとしても、もう帰ってくれたかな。
そんなのんきなことを考えながら、ちょっと安心していた。

そういえば昨日、お母さんの部屋に忘れ物をしていたんだった。
取りに行こう。

らせん状の階段をのぼり、つきあたりの部屋の前に立つ。
そっと扉を押した。開けた隙間から西日が差し込んで眩しい。

突然の光に目をつむったが、徐々に慣れてきた。



そんな私の目に飛び込んできた光景は



日の光で黄金に染まった部屋。
お母さんがいつもつけている香水の香り。

そしてベッドに横たわる女性。
顔を見ると、静かに寝ているように見える。
ただ、一糸まとわぬ姿に、あざだらけの体であることだけが異様だった。

まぎれもなく私の母親だ

私は「その」事実を認めたくなくて、近づくことができなかった。
確かめることが怖かった。
どれくらいの時間が経っただろうか、思考停止したまま突っ立っていた。


「おかえり、リツカ」

お父さんではない男性の声だった。
あなたは、

声が出なかった。
私の記憶はそこで途切れた。





「またこの夢・・・最近よくみるなあ・・」
まぁ、ちょっと前までは自分のことを振り返る余裕も無かったか。
マイルームで目を覚ます。

一人の少女と数多の英霊により、人理は修復された。
その当事者であるリツカと、苦楽を共にしたサーヴァント達は、
カルデアにてつかの間の安寧を過ごしていた。


朝ごはんでも食べようか、と思いマイルームから出ると、
「先輩、おはようございます!」

「マシュ!おはよう。」

「今日はエミヤさんが特別なメニューを作ってくださると聞きました!行って見ませんか?」

たわいもない話をしながら食堂へ向かう。

食堂は多くのサーヴァントでにぎわっていた。

「マスター、おはようございます。」

隣で声をかけてくれたのはアルジュナだった。

彼は、私がカルデアに来た当初から、力を貸してくれたサーヴァントの一人だ。
褐色の肌にオニキスのような瞳。
一見従順で優等生、完璧な彼だが、真面目すぎるゆえに苦しむ姿も見てきた。
授かりの英雄と呼ばれたその内、聖杯に永遠の孤独を望む彼。
神と人の子であるそんな彼の「誰よりも人間らしい姿」が私は好きだ。

「おはよう、アルジュナ。」

「マスター、こころなしか、お疲れでは・・?
最近夜は寝られていますか?」

う、するどいな。さすが千里眼持ち。

「ちょっとね、変な夢を見ることが多くてさ~」

「夢、ですか。
・・・最近私を当番にしてくださらないのもそれが原因ですか?」

やっぱり気づかれていたか。

サーヴァントとそのマスターは、お互いの「夢」を共有することがある。
実際に私も夢の中でアルジュナの過去を共有した。
それがきっかけで私はアルジュナの「黒」の部分を知ることができたし、受け入れることができた。アルジュナもそれ以来、私に「優等生の仮面」だけでなく、ありのままの姿を見せてくれるようになった。

でも、私はまだアルジュナに見せることができないでいた。
サーヴァントの前では、人の前では、いつも楽しそうな「私」でいたい。
だからあの夢は見られるわけにはいかない。

カルデアでは、サーヴァントとの親睦を深めるため、日替わりでマイルームにサーヴァントの誰かがやってくる。

だがあの夢を見るようになってから、アルジュナだけでなく、どのサーヴァントも当番につけないようにしているのだ。

本当はアルジュナと一緒にいたいし、アンデルセンに読み聞かせをしてほしいし、
マリーちゃんとお茶を飲みながらコイバナしたい。
この夢はいつまで見ることになるんだか・・

「きみはお見通しだね・・
そう!わーーーとか変な寝言言ってそうで恥ずかしくて笑」

「気にしないでください。貴女は起きてても寝言のようなことをおっしゃっていることが多いですから」

ひど(笑)言うようになったな、アルジュナ・・

「冗談です。私は貴女の最高のサーヴァントですからね。どんな貴女とでも、一緒にいたいのです。
いつでも頼ってくださいね。」

「あ、ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ」

ああ・・好き・・・!!!尊い!!!!
というオタク特有の気持ちを抑えつつ、朝食を終えた。

さて、トレーニングの編成でも組むかな、と食堂を後にすると、

「!!」


聞き覚えのある警報。
特異点が現れたときにはいつもこの音だ。

「先輩、これは・・!」
マシュとも合流し、管制室に急ぐ。

「ダヴィンチちゃん!!」

「おお、早かったね、さすがは人理を修復したマスターだ。その俊敏さは変わってないねえ」

「ありがとう、ダヴィンチちゃん。それはそうと、こ、今回は何が・・!?」

「残念ながら、新しい特異点が観測されたよ。
人理は修復済みだから、名残で残っている歪みの影響だろうね」

「特異点・・・」
久しぶりの言葉に、胸がざわついた。

「人理修復を成し遂げた後で悪いけど、またレイシフトしてくれるかな?
放っておくと広がる可能性もある。」

「もちろん!行くよ!」

「今回はどこで観測されたのですか?」

「今回は、リツカちゃんの出身国、日本だね。
夏山市という、首都圏の街だよ。」

「夏山・・!?」

「どうしたんだい、リツカちゃん?」

「わたしの故郷だ・・」

「なんと!そうだったのか。
いったい何が・・。    

 ・・・!」

ダヴィンチちゃんは 一瞬ハッとした顔をしたが、すぐに

「さあ、時間が無い、急だけど、出発だ!同行サーヴァントは、ひとまずアルジュナに声を掛けたよ。あとは・・・」

「俺も同行させてもらうぞ」

「アンデル先生!」
少年の体にローボイス。アンデルセンだった。



「面白い物語が書けそうだ」
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