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私立光星学園不思議研究部

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 渚
目次

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「みんな集まったわね。じゃぁ早速、今日も始めるわよ!」

そう言い放って部長が意気込んでいる時は、いつもロクな事がない。
だが、そんな事は今に始まった事でもない。
ここは、私立光星学園。学園にある部活動の中でも殆ど生徒が窓から覗くだけで、部室の門を叩こうとすらしない唯一の部活。その名も“学園不思議研究部”。
この部活は、代々部長となった人が思い描く不思議を徹底的に討論するというよくわからない部活だが、一番の不思議はその部長本人である。
現在部長を務めるのは、霞ヶ原麗華先輩。3年生の霞ヶ原部長は、誰もがうらやむ学園一の美貌を持ち、学業はもちろんスポーツにおいても全国でトップの成績を持っている。所謂文武両道の才女という奴だ。さらに、シャープペンの芯1本からジャンボジェットまでを手がける大企業KASUMIの令嬢という普通なら近づけない超が付く本物のお嬢様である。
ただ一つ問題があるとすれば、先輩が天才過ぎるのか頭の中が飛びすぎている事だ。簡単に言えば、超が付くほどの残念美人である。いつも何を考えているのかよくわからない。

「では、本日のお題を発表するわ。今日の題材は、“校則”よ」

いつの間にか部室に完備されるようになったくるくる回るホワイトボードを、勢いよく回すと裏側に書かれていたお題が登場する。このパターンを毎回繰り返すのだが、霞ヶ原部長は満足げにコレを毎回行う。多分、このホワイトボードを回したいだけなのだろう。

「さて、桐原さん。校則と言えばなに?!」

「ひゃ、ひゃぃぃ!!部長に話かけられた部長に話かけられた部長に話かけられた部長に話かけられたーーーー!あーーーどうしよう部長に話かけられた!!!」

「桐原さん?どうかしたの?」

「ちょっとお花摘みに行ってきます!!」

バタン!!

今、部長に話をふられて勢いよく閉まったままの部室のドアめがけて飛び込んだ女性は、2年の桐原ゆきさん。
桐原先輩は、部長の元ストーカーという経歴から昇進し、今は同じ部活に所属している。どうやらストーカーしている途中、部長のSPに捕まり拷問をされたが、ご褒美?とかで拷問していた人が逆に根を挙げてしまったらしい。そんな桐原先輩を部活に誘ったのは、もちろん霞が原部長本人である。
最初部室に現れた時、桐原先輩は狩猟に狩られた野生動物さながら部長に引きずられながら現れた。どうやら、部長が桐原先輩の手を握って連れてこようとしたら途中で意識を失ってしまったらしく、そのまま引きずられた状態で部室に来たらしい。後で何故か僕に霞ヶ原先輩のSPが教えてくれた。

「桐原さんは意識が戻るまで放っておくとして、上屋くんはどうかしら?」

『校則ってなんですか?僕はこの学校に校則があることも知らないんですが。そのそもこの学校に校則とか必要なんですか?僕が思う限り校則によって生徒を縛り付けるという行為そのものに違和感があります。だからですね・・・』

「あらそう?実は色々あるのよ。」

『そもそも生徒を縛り付ける為の罰則を規定した校則が生徒の可能性を踏みにじっているとか考えないんですか?だって校則があるからって守ってる奴なんか数%もいないじゃないですか。そんな校則ならあってもなくても変わらないですよね。だったら・・・』

「長くなりそうね。上屋くんの意見は置いといて話を戻すわよ。」

普通に会話が成立しているように見えるが、僕と同じ1年の上屋浩輔がまともにしゃべっている所は一度も見たことがない。先生も諦めているのか、授業中に当てられる事もまずないらしい。
そんな上屋浩輔の会話方法は、いつもスマホ越し。スマホのメッセージ画面に自分の意見を書いて他者がそれを解読する。ただ、画面越しなら饒舌になってよくしゃべる。
その方が面倒な気もするけど、浩輔的にはそれでしかコミュニケーションがとれないらしい。まぁ、悪い奴じゃないし部長ともまともに会話できる数少ない男子生徒だから、出来ればこのまま近くに居て欲しいと願っている。こいつ、突然部活辞めるとか言わないよな?

「安東くんは、うちの学校の校則ってどんなか知っているかしら?」

「いや、僕もよく知りません。だって生徒手帳とかそういったモノってまともに呼んだ事ないですから。」

僕は1年の安東颯太。訳あってこの部活に在籍している。
隠すほどでもないけどその訳というのは簡単で、入学式当日霞ヶ原部長と目が合ったとかで無理矢理連れてこられた。ただそれだけ。
入学式に浮かれてキョロキョロしてただけなのに・・・なんでこうなっちゃったかな・・・

「学園の生徒なら1回くらいは呼んでみなさい。そうね・・・たとえば、髪型とか結構厳しいのよ。海外だと校則にある髪型に不満があるとかで裁判になった国もあるそうよ。」

「へ~そうなんですか?」

「女子は肩より長いと結ばないといけないし、その縛り方も決まってるのよ。」

「三つ編みとかですか?」

「いいえ、亀甲縛り。」

「どんな結び方ですか?!本当にあったら一度見てみたいですよそんな髪型。」

「じゃぁ、明日やってくるから楽しみにしててね。」

霞ヶ原部長の言っている事がどこまで冗談なのかよくわからない。
そもそもそんな髪型あるのか?想像できない。

「男子も長髪ダメってあるでしょ?」

「それは確かに、男子が長い髪型とかウザそうですし。」

「でもオールバックはOKらしいわよ。」

「いやいや、百歩譲って許可されているからって本当になってくるやつなんか・・・」

「ね、上屋くん。」
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