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悪役令嬢が悪くてなにか悪いかしら?

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: 藤原遊人
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後夜祭で盛り上がるのは定番?

以前がどうだったか思い出そうとするも後夜祭なんて覚えはない。
ゲームイベントも、ジルはなかったはず。

一方で、昼間は出番がなかったリリトスが文化祭の夜なんて美味しいシチュエーションを逃すはずもなく、専用スチルがあった覚えがある。

「あら、リリトス。どうしたのかしら?」
「麗しのハビラント嬢がダンスの輪を抜けていくのが見えたからね。追わないわけにはいかないだろ?」
「お上手ね」
「ジルはどうしたのかな?」
「昼間の迷子の子どもの件で、アレスに呼ばれているわ」

獣人の文化を理解するという理由付で、後夜祭のキャンプファイヤーでは丸ごとのイノシシや鹿が焼かれて、贅沢に振る舞われている。
そのキャンプファイヤーの周りで、元は恵に感謝するという意味だったダンスを踊るのがイベントだ。

ヒロインは獣人たちに混じって楽しそうに踊っている。
今の彼女が誰ルートを邁進しているのかは知らないけど、楽しそうでなにより。
彼女がこっち向かないで居てくれたらバンパイア兄妹は平穏だ。

「ハビーハビーハビー」
「どうしたの、昔のように繰り返し呼ぶなんて。未熟だったころと言って、昔話するこはあなた嫌がるじゃない」
「ふふふ、君とする昔話は悪いものでもないと最近知ってね」
「あらそう。では、私が女の子だと思ってお揃いの髪飾りをあげてしまった話でもしましょうか?」
「あぁっ!遠慮なく私に塩を塗りまくるハビーには適わないよ」

まるでそういうことをしているかのように声をあげるリリトスは今日も絶好調のようだ。
攻略対象者同士でもそういう話し方をするから、リリトスはそっちの人たちにも大人気だった。

「そういえば、甘い香りでベタベタにはジルがなったわ。あとでちゃんとからかってあげて」
「ふふっ!任せておいて、相変わらず君たちは楽しいことをしているね」

半分だけ炎の灯りに揺られるリリトスが妖しくわらう。

「ねえ、ハビー。私があなたと踊りたいと言ったらどうする?」
「一回なら良いわよ。二回はダメよ、ジルがいるんだから」
「では、改めて」

白い制服なのに土に膝をつくのを躊躇わないリリトスの動きは洗練されていて、遮るのを許さない圧倒的な優雅さがあった。
私の手を柔らかく包んで、そっと口付けをくれる。

指で指をなぞるな!ゾワッとする。
じゃなくて、このリリトス、見た覚えがある!

「今宵は満月、時間を忘れて踊り狂いませんか?」

まさかの正面からスチル絵をぶつけられた。

揺らぐ灯りの中で微笑むリリトスは元から退廃的な雰囲気があるが、キャンプファイヤーというイベントがそれに磨きをかける。

ちょっとだけ雰囲気に飲まれて、息を吐いて、興奮を逃す。
ハビラントでオタクらしく悶絶するのは私の美学が許せない。

「踊るのは良いけど、時間は見ていてちょうだい」
「仰せのままに、レディ」

上目遣いに笑ってくるリリトスは間違いなく自分の色気と顔をわかってやってくる確信犯。

でも、せっかく私もこの場所にいるのだから楽しんだって良いだろう。

「イイ顔だよ、とっても興奮する」
「リリトス、あなたも楽しそうね」

ダンスの感想がR18な幼なじみにちょっとだけため息をついて、いつの間にか近くにいたヒロインとも楽しく踊って、後夜祭をすごした。
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