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悪役令嬢が悪くてなにか悪いかしら?

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: 藤原遊人
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バンパイア兄妹のお披露目会

もちろんバンパイア兄妹のお披露目会なんて名前がついているわけもなく「交流会」と機械的な名前を付けられた会がなんと今夜だ。
ここでヒロインに対しては、初登場となるジルのスチルにバンパイア兄妹のお披露目会と名前がついていたので、勝手にそう呼ばさせて貰おう。

さて、まずヒロインと兄を会わせる前に、兄がコロッとヒロインの「私無知だけど悪気はないんです!きゅるん!」アタックに落とされないように繋いでおかないといけない。

今日のお披露目会では、昨日学園城下町で購入したばかりのエメラルドグリーンのドレスを着る。まだ幼い可愛らしさが残るハビラントには段の入ったギャザードレスが良く似合う。

本当は真っ白なウエディングドレスのようなドレスにしようかとも思ったけれど、兄のジルと対になる服の方がよい。
ジルが何を着るかはスチルでも知ってるし、ジルのメイドを通じて連絡を貰ってる。

心象とこのあとの展開的に、対になる格好でご挨拶しておくのはとても有意義だ。

原作のゲームで、ヒロインが「まあ!婚約者なんて知らなかったわ!」となったに、他の人たちが「まあ知らなくて仕方ないよね」となってしまったのは、ジルとハビラントが対の格好をしてなかったからだ。
逆に対の格好をしていれば、ジルとハビラントが婚約者と気が付かない事件が起きたとき、周囲の意見を「ヒロイン空気読めなさすぎ、やばくね?」に変えられる。

私には全く覚えがないが兄のジルから贈られたというティアラを髪につけて今日のおめかしは完成だ。

化粧をしなくたって怖いほどの美人のハビラントだが、可愛らしさを表現する化粧を施したから幼さと隙が見えるできばえだ。隙だらけのヒロインがモテモテなんだから、流行に乗って寄せたっていいわよね?

それにしても!
うーん、美人って工夫のしがいがあって最高!

内心ではニマニマ、鏡に映る笑顔は淑女の微笑みという新手の技を繰り出して、ハビラント・バンパイアの顔を眺めていたら、控えめのノックが部屋に響いた。
早速、獲物もとい兄が来たらしい。好都合だ。

「ハビー、調子はどうだい?」

部屋に入ってきたのは、麗しの攻略王子の1人。ハビラントの婚約者でもあるジュリアン・バンパイアだ。愛称はジル、それを呼ぶのは他の攻略王子の数名と婚約者であるハビラントだけ。

バンパイア兄妹は双子だけど、男女だから似る可能性低いはずなのに、私たちは瓜二つだ。

真っ黒な髪に翡翠の目はハビラントと一緒、近くで見ても毛穴が見えない4K対応の素敵なご尊顔をしている。

「ハビーがおめかしなんて珍しいね」
「今日初めてお会いする方にジルと釣り合わないなんて、言われたら悲しいもの」
「そんなことないよ。ハビーはいつだって綺麗だよ」
「ジルも、とても美しいわ」

今日のお披露目会、本来のハビラントは制服だった。
でも私は昨日お付のメイドと一緒に学園城下町へ買い物にいき、おめかしをしている。

色々と裏の理由はあることにはあるが、なによりこの可愛くて美脚な美女をなぜ着飾らない理由があろうかという部分が大きい。

自分ではない画面の向こうにいるアバターですら可愛ければ着飾らせて遊びたいのに、突然美脚で綺麗な美女の身体に入り込めたら、そりゃあ着せ替え人形リアル版をやるわよね。

「ジル、これはどうかしら?」
「いいと思うよ、ハビーが人に寄るのは珍しいね」

深いグリーンのヒール、5センチだからさほど高いヒールではないが、ヒールを履く習慣のないハビラントにしては思い切った決断だ。

そもそもヒールを履くのは人族の文化で、魔族は戦闘のときに困るから履かないという伝統がある。
ハビラントは吸血鬼の保守派だったからヒールは絶対に履かなかっただろう、用意されていた制服のパンプスもヒールはゼロ。まあ授業は戦闘訓練もあるからヒールなしで正しい。

でも夜会、パーティやお茶会なら別である。

この美脚を強調できる上に、普通に過ごしていたら隙がなさすぎるハビラントに隙を作るいい機会だ。綺麗で勉強もできて、戦闘力も抜群だと高嶺の花過ぎて男が寄ってこれない。
そもそもあのヒロインに籠絡されていくこの世界で、隙がない女を好む王子はいない。

「人族に寄りすぎていると怒られないかしら」
「不安なのかい?ハビー」
「ええ、これから通う学校で上手くいかなかったらと思うと。狩りでは怖くないのに、ダメね」
「いいよ。どんな人がいても、僕らは一緒だから。大丈夫」

まあ及第点だ。

麗しの弟系王子殿はいつも強気の婚約者にちょっと頼られたという状況に少し動揺している。そして高揚もしたみたいだ、吸血鬼は好感度を上げるとわかりやすく目の色が薄い銀色に変わる。

ジルの目の色が変わっていることに、あえて気がつかない振りをして、小さなポーチに荷物を入れた。
周回していたからジルの好みなんて熟知している。

ああ!僕はこんなにも恋焦がれているのに、君はどうして気がついてくれないんだ!を無表情でやるのが、彼はお好みだ。内心が漏れ出てくれるわかりやすいバンパイア一族で良かった。

何度か瞬きして、目の色を戻してからジルはエスコートのために手を差し出してきた。

「ハビー、準備はいい?」
「ええ」
「大丈夫、アレスやクリスもいるから」

ジルに微笑み返して、大人しくエスコートされるために手を差し出した。慣れないヒールを履いていることを考慮して、ゆっくりと歩いてくれるジルに手を引かれて会場へ進む。

それじゃあ、拝んでやろうじゃないの。

美人な母親から生まれて、周りのメイドたちも美人揃いの王子たちが次々と惚れるヒロインの面がどんなものか、楽しみだわ。
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