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fate もしもモードレッドが喚ばれたら

原作: Fate 作者: MM
目次

凪ぎ、日常への歩み

 放課後になって校舎を見回るが、既に結界の残滓も感じられない。他の陣営の仕掛けもないようだ。ライダー陣営は手を引いたらしい。
「遠坂、どうだ?」

 他の陣営も何もしていなかった。どうやら、ライダー達ほど頭のねじが外れているのは、いなかったようだ。
「まあ登校した時点で気付いてたけど、仕掛けはないみたいね」

 慎二は欠席している。そうして桜も欠席している。戦争の流れのせいか? わざわざ口にも出さないが、凜も妙に気にかけているようだった。
「ライダーの動きはない、か」
 先日の襲撃とは打って変わって、妙な静けさを感じた。

 嵐の前の凪ぎでないと良いが、警戒はまだ解けなかった。
「校舎の結界はこれで大丈夫そうね。私達が対処するから、無駄な消耗と思ったのかしら」
 基点を刻むのも負担になる。仕掛けをする時間だって消耗だ。

 消されると分かっているならば、他の事に力を注ぐべきだ。
「となると次は攻め込む場所を決めないと行けないわ」
 せっかくの同盟関係である。壊れる前に多く落としておきたい。
「いつまでも止まってられないからな」

 本来ならば、一番に攻め込みたいのはキャスター陣営であろう。
「拠点の情報を収集してなかったのは痛いわね」
 魔術師の英霊は、時間を与えるほどに堅牢になる。陣地作成の力を持つ相手に、わざわざ作らせてやる理由もない。

 ライダー達が面倒な仕掛けを施していなければ、早々に攻め込んでいた。まだ拠点すら見つけられていない。隠蔽されている。
「衛宮くんが未熟だったら、色々と考えてたけど。様子を見る限りでは大丈夫そうだもの」

「そいつはどうも」
「褒めてるんだから、もっと嬉しそうにしなさいよ」
 頼れそうだと微笑んでいるからこそ、やはり壁を感じた。対等だからこその距離感だ。

「それでどうするんだ?」
「本格的に戦いへ向かっても、悪くないと思っているわ」
 聖杯戦争を早々に終わらせたいのは、士郎も同意見だ。
 
 それに、あまり膠着状態が続いたら、監督役からの指令も飛んでくる。手始めに誰かを狙うのは、自然な流れとも言えよう。

 二陣営ばかり話しにでるが、ランサーと戦っても良いんだ。士郎には命の借りがある。探しても良いだろう。
「いよいよだな」

 凜が知っているのは、アインツベルンと間桐家の二つの拠点だ。バーサーカーとまだ不明の陣営である。キャスターの拠点を探っても良い。

「そろそろ一騎は倒しておきたいのよね」
 どちらに攻め込むにしても、一筋縄ではいかない相手だ。間桐のサーヴァントはまだ知らないが、恐らくは。
 
 彼女は予想を言葉にせず。ただ淡々と続けた。
「その前にお互い準備をしましょうか」

 休息し魔力を溜め込むのも大切な事だ。上手くやれば、セイバーも宝具を二回発動出来るかもしれない。凜もそう。宝石の用意がある。敵の拠点に攻め込む時、準備しすぎるなんてありえない。

「せっかく明日は休日なんだから、二人でどこか出かけてきたら?」
 話を聞いて、そうして今日の様子を見る限り、士郎達に魔力の余裕はなさそうだ。礼装などの準備も難しかろう。

 だったら、少しでも円滑な関係を築いた方が良い。大分相性が良いコンビのようだが、仲良くし過ぎるということもなかろう。
「遊んでる暇はあるのかよ」
 顔を赤く染めながら、照れを隠す言葉だった。

 気づき。からかうように彼女は続ける。
「マスターとサーヴァント。信頼を育むのは悪いことじゃないと思うけど」
「それは…そうかもな」

 しかし妙に照れくさい。愛らしい女の子と遊ぶ経験なんて、これまでの生涯で一度もなかった。不器用な生き方をしている。
 これ以上からかう程の仲でもない。後はセイバーとの話である。
「ん。それじゃあまた学校で。あ、でも緊急時にはちゃんと連絡しなさいよね」

 にこりと笑って彼女が去っていった。残された二人。セイバーが実体化して話しかけてくる。
「その、どうしましょうか」

 兜を解除して、困った表情のまま問いかけてきた。この言葉に自然と返せるほど、士郎は女性との付き合いがあるわけではない。
「どうしたものかな」

 冷静に考えるほど、色々と困ってしまう。買い物とかなら慣れているけど、本当に異性と過ごした経験がない。
 大河は姉代わりの人で、他に付き合いもない。切嗣からの言葉を愚直に守ったせいで、人付き合いが良くないんだ。

「シロウは、遊びに慣れていないのですか?」
 なぜか嬉しそうなセイバーである。にこにこと笑っていた。疑問に思いつつも、素直に言葉を返す。
「あんまりそういうのを考えたことがなかったんだ。悪い」

「謝る必要はありませんよ」
 やはり上機嫌になっている。士郎に女性経験がないことで、何か良い事でもあるのだろうか。
「ふふ。ならば、私の興味に付き合ってくれますか?}

 聖杯からの知識で、楽しみにしていた事でもあったのだろうか? 妙に自信ありげな声の彼女にときめきつつ、言葉を返す。
「任せてくれ」
「では家に帰りましょう。明日はおでかけですね!」
 実体化したセイバーに手を引かれながら、帰路へと着いていった。
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