ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

fate もしもモードレッドが喚ばれたら

原作: Fate 作者: MM
目次

騎兵の脅威

 放課後になって、遠坂達と共に校内の基点を探し始める。
 特段問題は見当たらず。士郎の把握能力に彼女が感心しつつ、滞りなく済ませていった。彼が鍛えた成果と、凜の才覚が合わさった結果だ。
 そうして時間が経過していく。
 
 作業をしているから必然的に、凜との距離が近い。
 意識する間柄でもなく。朴念仁な彼は近さに気付かない。
 少しだけセイバーが面白くなさそうだったのは、誰も気付いていなかった。

 そうして夕暮れ時が過ぎて、夜が近づいてくる。人払いが成されたのか、段々と生徒達の気配がなくなっていった。
 魔術の気配を感じる。当然ながら、凜と士郎の力ではない。
「来るわよ」
 
 凜の言葉に二騎の英霊が実体化した。敵の気配を感じる。
 戦争の時間が始まった。廊下を進む彼らの目の前に、敵が現れた。
「仕掛けを崩していたのは貴方達でしたか」

 淀みなく静かに語る声。音もなく現れたのは一人の美女だった。艶やかに香る魔性の女。この言葉こそ、目の前の相手に相応しい。
「どう対処したものでしょう?」

 紫色の髪を腰まで伸ばした女だ。ボディコンにも似た、黒色の扇情的な衣装に身を包んでいる。彼女の豊満な肢体が強調されている。

 両目には紫色の眼帯が着けられていて、視界が封じられた姿だ。何かの封印だろうか? セイバーの直感が、彼女の眼球を警戒している。
「ライダーのサーヴァントね」

「ええその通りです。よく分かりましたね」
 消去法で目の前の英霊にクラスを判断した。間違いではない。
「衛宮くん、おそらく彼女は宝具が主体の英霊よ」

 キャスターやアサシンならば現れまい。他のクラスは既に見ている。消去法で、目の前の女がライダーだと察せられる。騎兵の英霊。このクラスの特徴は、多彩且つ質の高い宝具にある。

「この結界以外にも宝具があるのか」
 ただでさえ面倒な仕掛けだと言うのに、それすら手札の一つでしかない。厄介な相手だ。

 幸運かは分からないが、ステータスは然程脅威にならない。霊視する限り、セイバーよりも一段階は劣っている。隠されたスキルは分からないが、正面衝突ならば勝利出来よう。

「油断しないで、巻き込まれないようにしましょう。同盟の通りマスター戦なら私が庇うわ」
 まだマスターの姿は見られないが、遠くにはいないだろう。

「……」
 その言葉には士郎は返答せず。戦闘の流れが進んでいく。

「さて。どう仕留めましょうか」
 ライダーは、長い鎖の繋がれた短剣を装備していた。どこか蛇の牙のような、鋭く禍々しい短剣の刃が印象的だ。切り裂くのでなく。穿ち繋ぎ止める。釘にも似た武装である。

「二対一で勝つつもりですか?」
 一対一でもセイバーが勝利する。アーチャーの戦闘技術でも、ライダーを仕留められる。状況を判断出来ていないと、言外に告げていた。
「だとすれば、私としても心外だがね」

 弓兵と剣士が語る言葉は真実に近い。バーサーカーなどの規格外を別にすれば、三騎士の内二人も相手取って、勝てる道理は通らないのだ。

 目の前のライダーのステータスは高くない。バーサーカーと比べれば、遙かに劣っている。
 卓越した戦闘技術も感じられなかった。セイバーの直感と、アーチャーの戦闘論理がライダーの力量を把握している。

 当然、只人ならば縊り殺されるだろうが、二騎を相手取るには不足が過ぎる。
「逆に問いましょうか」

 だが、目の前の彼女が規格外でないとは誰も言ってなかろうよ。
「二対一程度で私に勝利するつもりでしたか?」
 迷いなくライダーが眼帯を外した瞬間――石化の魔眼が起動した。

 封印から解放された魔眼の力は、可視光、文字通り光の速さで敵対者へと作用していった。
「ぐっ!?」「ちい!?」

 対魔力に優れたセイバーに凄まじい重圧を与えて、アーチャーならば石化も免れない。末端から徐々に中心へと石化の力が作用する。

「アーチャー、距離を取って!!」
 手に宿された三画の令呪が、一つ消耗された。
 彼女の迷わぬ令呪の判断力よ。素晴らしい。

 同意のある令呪は奇跡を許し、弓兵は即座に転移された。これで石化の魔眼の射程から逃れられただろう。
 危ない所だった。完全に石化されれば危うい。

 そのまま即座に宝石から魔力を解放し、一瞬でAランク相当の結界を展開する。尚も与えられる石化の呪縛は、凜はともかく士郎に影響を与えた。段々と肉体が痺れていく。

「シロウ! ……時間はかけられませんか」
 そう。そも、遠坂の結界では英霊は庇えない。動きの邪魔になる。そうすれば、あっさりとライダーに仕留められる。

 石化されかけた状態では、アーチャーの援護も難しかろう。
 何よりセイバーは二人を庇いながらの戦いだ。肉体を縛る重圧を受けながら、圧倒する力は彼女に宿っていない。

 たったの一手で戦況が大きく変わる。宝具の力が主体とは言え、反則染みた切り札を宿していた。油断はなかったが、一気に追い詰められていた。

「さて改めて問いましょう。――二対一程度で私に勝てると?」
 嗜虐的な微笑みを見せながら、ライダーとの戦闘が始まった。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。