ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

fate もしもモードレッドが喚ばれたら

原作: Fate 作者: MM
目次

蹂躙する化物

 バーサーカーとセイバー。互いに英雄まで至った化け物共である。
 凄まじい速度で武装がぶつかっていく。白銀の剣を振るうはセイバー。美しい剣筋が実直に振るわれている。

 分かりやすい隙もなく。高ランクの直感に裏付けされた剣術が、目の前の怪物との戦闘を成立させている。
 応ずるバーサーカー――反則染みた性能だった。
 
 不可視の一撃が必殺の威力を伴っていて、軽く放たれるから継ぎ目がない。セイバーの直感がなければ、一撃で終わっていただろう。
 弓兵からの援護の矢が降り注いだ。

「小賢しい…」
 狂戦士の呟きと共に、アーチャーからの支援射撃も、目すら向けずにあっさりと回避した。

 セイバーと同じ。高ランクの直感を宿しているのだろう。狂気の影響で鈍ってはいても、突き抜けた性能が横やりを許さない。
 これでも尚、宝具を解放していない。

 それはセイバーも同じだが、不可視の鞘越しに感じる圧力ときたら恐ろしい。ああ、しかしセイバーはその威力を知っているかの様だ。
 解放する隙を与えまいと連撃を続けていく。

 空気が軋む。地面が爆ぜて抉られた。間違っても間に入ってしまえば、ミンチより酷い肉塊が出来上がるだろう。
 ぶつかり合う魔力の濃密さは、士郎にすら目視出来た。

 セイバーとバーサーカーの激突は重狂おしい爆音を響かせて、途方もない衝撃が叫んでいた。
 剣同士のぶつかり合いとは思えない。笑える様な威力を感じる。

 不可視であろうと、ことここに至っては誰もが確信しただろう。セイバーは相手の武器を確信している。

 此処まで互いの力が見える状況。即ち、手札を互いに了承している事実。
 それは決して、バーサーカーの洗練された剣技だけが原因にあらず。

 セイバーの対応が冴え渡っているのだ。刀身から威力の末端まで知っているかの如く。迷いも躊躇いも感じられない。
 愚直な剣技でバーサーカーの暴威を受け止めている。
 単純なステータスを比べるだけならば、セイバーでは狂戦士に届かない筈だ。

 だが、宿すスキルが上手くかみ合っている。正統派の大英霊かつ完全な格上ならば、セイバーのスキルが同格にまで押し上げてくれる。かつて、偉大な王へと反逆した騎士の力が、この戦場を支えている。

「ぐっ、ぎいっ!」
 セイバーから漏れた苦悶の声が、単純な事実を確信させた。成程、同格程度には戦いを維持出来るらしい。
 それでも勝利は不可能である。

 出力の桁が違う。マスターの魔力量だって劣っている。このまま戦い続けていけば、遠からずセイバーが消滅するだろう。
「俺は、何も出来ないのか…?」

 迷わずに踏み込みたい。目の前で命の恩人が消えてしまうのを、黙って見ていたくないんだ。何故かは分からないけど、騎士に強い共感を覚えている。

 ――それがセイバーの矜恃を傷つけてしまうと、理解している。騎士として戦ってくれている恩人を、邪魔したくないと思ってしまった。
「ちっ! これでも届かねえか!!」
 何故だろう。乱暴な言葉と共に、セイバーの動きはどこか荒々しくなってきている。必死さが現れているんだ。

 まるで目の前の強敵に、何かを伝えているみたいだ。それでは危うい。荒々しさに身を任せて屠れるのは、動物的な勘に劣る相手だけ。冴え渡る直感の持ち主に、技術を放棄すれば容易く殺される。

「愚かな」
 小さな呟きすらも乗せて、バーサーカーは咄嗟に判断した。
「打ち合いにも飽きた。吹き飛べ…!!」

 一瞬の隙をつかれてセイバーが吹き飛ばされた。姿勢の崩れは死へと繋がり。バーサーカーが大技の溜めを完了させている。上段へと振り上げられた不可視の剣が確信させる。完全なる死を予感させた。

「セイバー!!」
 迷わずセイバーの前へと走り抜けた。
「シロウ、な、何故!?」

 バーサーカーからの一撃を庇って? 否。――迫り来るアーチャーの宝具の余波から、狂戦士に集中し気付かないセイバーを守る為だ。

 爆風がアスファルトを粉々に砕いて、凄まじい爆発音を届かせた。ロケット砲ですらもっと大人しかろう。すさまじい宝具の爆発が世界を削っていった。巻き上げられて土煙が視界を埋め尽くしていく。

 間違いなく宝具の力だ。真名は聞こえなかったが、ここまでの破壊は早々見られるモノではない。
 凄まじい破壊力が土煙を巻き上げていた。それら晴れた先の光景は。
「今のは面白かったぞ」
 これだけの一撃を受けても無傷な姿であった。

 多少の負傷は見えたが、瞬時に再生していった。何かしらの特性があるらしい。大した化物だ。弓兵の苦笑が見える気もした。
 そんなことはどうでも良い。今のセイバーには、一つしか眼に入らない。

「シロウ…?」
 抱きしめるように庇った彼の背中には、深々とアスファルトの大きな破片が突き刺さっていた。

 セイバーを庇ったせいだ。そうしなければ、おそらく無防備に爆風を受けていただろうけど。
 只人の彼が受けるには、あまりにも重すぎる痛みを負っていた。

 バーサーカーからの追撃はなく。士郎の負傷を目にしたらしいイリヤから、撤退の指示を受けていた。それら全てに気付かず。

 彼の肉体から大量の血液が流れて、ショックで意識が消失する。再びの暗転は、二度目の死を予感させていた。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。