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fate もしもモードレッドが喚ばれたら

原作: Fate 作者: MM
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怒濤の襲撃

「ぐっ! なにこの英霊…魂が強大すぎるわ!」
「油断はあったのでしょうが、何故このタイミングで襲撃してきたのでしょうか?」
 あの傲慢さからは想像も出来ないが、不意を打たれれば確実に負けていた。イリヤを殺されれば、バーサーカーは維持出来ないんだ。

 たった一騎で襲撃が終わるわけもない。余裕をなくし、イリヤが倒れたのと同じタイミングで次が現れた。
「襲撃はそいつが勝手にやっただけだ。で、俺がそのタイミングに合わせたわけだ」
 飄々と語る青い槍兵の様子は、今にも弾けそうな戦意に溢れていた。紅の魔槍が妖しく光っている。戦う準備は万全であり。今度の戦闘は、何の制約もかかっていない。
 
 つまりは全力での激戦である。肌に感じる威圧を考えるに、凄まじい強敵であろうと予感させた。
「ランサー。成程。同盟を組んでいたのか」
 規格外のマスターと、同じく規格外のバーサーカー。仕留める為に他の陣営全てが手を組んだか。

「さて、あの状況を同盟と言って良いのかは知らんが」
 本来ならばタイミングを合わせるべきだろう。それこそ、イリヤを暗殺する機会も得られたはずだ。
 まあもっとも、そんな幕切れに納得出来る男ではないのは、獣染みた笑みで理解出来た。
「最後に飛びっ切りの相手と殺し合えるんだ。楽しませてもらおうか!!」


「おおおらああ!!」
 残像すら残す程の俊敏性と、獣の如き性能を彩る卓越した槍術が美しい。何と研ぎ澄まされた武技の数々よ。白兵戦において絶大な性能を発揮する狂戦士を相手に、一切の引けを取らない力を示している。

 これこそがケルトの大英雄・クーフーリンの真髄であった。
「燃え盛れ!! アンザス!!」
 ルーン魔術で炎を操り幻惑しながら、徹底的に攻め立てる。一切の容赦はない。殺す為に手段を尽していく。頬裂かれ肉抉られる。卓越した戦闘者として、バーサーカーを追い詰めていた。
 規格外の鞘の加護は、令呪がなければ使えない。易々と切れる手札ではない。強引な突破は不可能だ。

 筋力などのステータスは、バーサーカーが優れている。しかし純粋な技量だけを見れば、ランサーに分があるのだ。ケルト神話の大英雄を相手取れば、さすがの騎士王も不利になっていた。
「はっ! 楽しませてくれるじゃねえか!!」
 
 受ければ即死の剣戟を前にして、喜悦の叫びを上げる生粋の戦士である。魔槍の軋む音が心地良い。どうにかして臓腑を抉り、命を終わらせるのだと。戦士の本能が歓喜の声を上げている。最早ランサーは己の負傷を気にしていない。肉を抉られると同時に、相手の骨を穿っていく。敏捷性と生存に優れた彼が捨て身を取れば、さしものバーサーカーも徐々に削られていった。

 凄まじい激戦である。このままでは埒が明かない。
 ならば終りは宝具に託された。互いの切り札こそ勝負を決するのだ。爆発的な加速でランサーが距離を取った。助走の雰囲気を思わせる。酷く腰を落とした獣の如き構え。放たれる威力の溜めを感じられた。
「名残惜しいがこれで終りだ」

「それは此方の台詞。我が聖剣を超えられるか?」
「ぬかせ。この一撃、手向けと受け取れ!!」
 長く取られた助走による馬鹿げたレベルの加速、跳躍、魔槍に脚すらかけて。脚力すら乗せた英霊の投擲術は、魔槍の呪いと共に炸裂する!!

「|突き穿つ死翔の槍《ゲイボルグ》!!」
「|約束された勝利の剣《エクスカリバー》!!」
 魔槍を呑み込みランサーを消し飛ばす黄金の剣閃は、その名の通り常勝を約束した破壊力を発揮した。
 だが――幾度も曲がり狂いながら迫る紅槍の死は、担い手が消滅しようと因果を逆転させている。投げたから心臓を穿ったのではない。心臓を穿った結論を確定させて、過程は歪になぞられていくだけだ。

「っ!!」
 紅の魔槍が胸へと突き刺さった。バーサーカーの心臓を破壊し、棘が展開されて内部をずたずたに引き裂かれる。
 大英雄の切り札の意地か。これでもう一度だけ、全て遠き理想郷を切らされた。
 いや。クーフーリンの全力をもってしても、その程度で抑えられたと言うべきか。

「手強い相手でした」
 徹底的なゲリラ戦に持ち込まれれば、バーサーカーの勝利は難しかっただろう。
 裏で手を引く者が見えるようだ。最善の策のようでいて、ただ彼女を削っているだけである。まるで他に討つべき者がいるとでも言いたげな。何者かの悪意を感じた。

「…バーサーカーは負けないよね」
 絡め取る連続された襲撃に、切り札ばかり切らされている。イリヤの余裕は少ない。聖剣の真名解放は、後一度しか許されていないだろう。
「ええ。我が執念が突き動かす限り、この身に敗北は許されません」

「……また襲撃者」
 古城への侵入者を感知した。今日でバーサーカー陣営を仕留める算段か。特出した力の宿命とはいえ、こうも徹底的に襲撃されるものだろうか。
「ふっ。どうやら我々を沿うような脅威と見ているらしいですね。手際が良すぎる」

「集めた人がいるの?」
「でしょうね」
 強大すぎる陣営を打ち崩すために、同盟を組んで戦うのは定石だ。それにしても規模が大きすぎる。文字通り、バーサーカー以外の全てが敵に回っているんだ。最早反則の様にも思われた。

 その程度でどうにかなるかはともかく、だがね。
「迎え撃ちましょう。我が最強の力で全てを打ち砕きます」
「ん。ごめんね。令呪だけは起動するから」
 度重なる脱落で許容量を超えそうな状態の中。狂戦士は次なる襲撃者を待ち受けていた。
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