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サヨナラだけが人生だ ~合縁奇縁~

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
目次

離別

「全員!逃げる事だけを考えろ!!!」
その場にいた全員に聞こえる程の大声で、ルフィの号令が響き渡った。
ゾロの側にいたウソップとブルックにゾロを連れて逃げる指示を出す事も忘れず、ルフィは更に叫び続けた。
「今の俺たちじゃあ、こいつらには勝てねェ!!」
自分達の力を理解した上で、逃げる事を選択したルフィに対し、その潔さに黄猿の表情が不愉快そうに僅かに変化した。
「潔し・・・!腹が立つねェ~」
思わずそう漏らした黄猿から遠く離れるべく、ルフィの言葉を聞いた一味は誰もがその言葉を即座に理解して数名ずつ固まって走り出す。
シンも彼らに続こうと必死に駆け出そうとするが、震えた足はなかなかいう事を聞いてはくれない。
そうしている間にも、海軍の攻撃は一味に容赦なく降り注ぎあちらこちらで爆音と共に爆発が起きているのがシンの目に飛び込んでくる。
それは正に惨劇だった。
逃げろと悲痛に叫ぶルフィの声が響く中、一味の前に立ちはだかったのはバーソロミュー・くま。
シンはその存在を知らないが、麦わらの一味はシンと出会う直前まで居た「スリラーバーグ」という王下七武海の一人、ゲッコー・モリアが支配する島を丸ごと浮かべた船でバーソロミュー・くまに出会った事があった。
その強力な能力は麦わらの一味を容易く壊滅状態に追いやった程のものであり、ゾロがダメージを蓄積していたのもその男の能力によっての事で。
ルフィが必死に皆に逃げるように呼び掛ける中、無情にもバーソロミュー・くまの手がゾロに伸びる。

そして、

「え・・・」

ぱっと、まるで最初から存在して居なかったかのように錯覚さえしてしまう程に途端にゾロの体がその場から消え去って。
突然の出来事に状況を理解できない一味が唖然とする中、バーソロミュー・くまは黄猿と戦っていたレイリーに近付くと何かを囁くように告げた。
そしてその後、次々とゾロと同じように麦わらの一味をその場から消し去ってしまったのだ。
そして残されたのは、ルフィとシンの二人。
「何だ、俺は・・・」
仲間を消され、それに対し手も足もでなかったルフィは悔しさのあまり涙を滲ませて地面を殴りつける。
「仲間一人も・・・!!救えないっ!!!」
その悲痛な叫びさえかき消すように、ルフィの体もまたバーソロミュー・くまによってその場から消されてしまい。
「ルフィ!!!」
残されたシンが、愕然と絶望の表情を浮かべて今までルフィが居た場所に向かい叫んだ。
「これは大問題だよ、ちゃんと説明があるんだろうねェ」
バーソロミュー・くまの行動は、黄猿すら思い及ばない所だったのだろう。
険しい表情でそう告げた黄猿は、その後その場に唯一残されたシンの方へと近づいて。
「おっと、その子にも手を出して貰っちゃ困るんだがな、黄猿君?」
「この子に対しては手は出しませんよォ。少し聞きたい事があるだけなんでねェ」
黄猿の動きにレイリーが威嚇を込めながら笑みを向けるが、黄猿はそれを軽く流しながらシンの側に近付きシンと目線を合わせる為にその場に腰を下ろした。
「お前さん、今は麦わらの一味かい?」
シンに対して黄猿には攻撃の意志がないというのが分かったのか、レイリーは黄猿に威嚇を向けたままではあるが黄猿の行動を止めようとはしない。
シンが麦わらの一味と行動を始めたのはつい先日の事。少数ながら一味全員が賞金首という海賊団である麦わらの一味の手配書はレイリーも目にした事があったもののその中にシンは入ってはいなかった。
つまり、レイリーですらシンという存在が麦わらの一味にとってどういった立場になる人物なのかを未だに測り兼ねていたのだ。
「イーグ中将・・・あァ、海軍を辞めてるから“元”中将になるんだけどねェ、お前さん、あの男の所にいた子供だよねェ?」
その名前に、シンの表情が凍り付いて。
黄猿に向けた目を丸く見開いたシンのその表情にそれが“応”なのだと理解した黄猿は、大きな手の平をシンに伸ばす。
「っ!?」
「前にね、部下を一人“0支部”へ送った事があったんだよォ。」
そしてその手の平をシンの頭にぽすん、と乗せた黄猿が微かな後悔を滲ませたのをシンは見逃さなかった。
「どうにもきな臭ェってんでわっしの所に調査依頼が来たんでねェ、それで部下を偵察に行かせたんだがその部下は何年か後に亡骸になって戻ってきてねェ。」
わしゃわしゃとシンの頭を撫で回す黄猿からは戦意の欠片も感じられず、戸惑った表情を浮かべたシンに向けられたのはどこか悲しげな笑顔。
「情報だけはあったんで“0支部”の閉鎖は出来たが、イーグ元中将と一人の子供の行方が分からなかったんだよねェ。」
恐らく死ぬ間際、部下であった男は“0支部”の詳細を黄猿へと報告を上げていた。
それにより“0支部”の内情は日の目を浴びる事となり、結果的に閉鎖する事となったのだ。
けれど最高責任者であった男と、最重要参考人として名前の挙がっていた子供の姿だけはどうしても確認する事が出来ず、イーグ元中将は別としてその子供は証拠隠滅の為に恐らく消されたのであろうと、それが当時の上層部の見解だったという。
その時見た写真に写っていたのは、腕に“51N”のシリアルナンバーが刻印された少女であった。
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