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サヨナラだけが人生だ ~合縁奇縁~

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
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3日後への希望

それからすぐ後の事。
外へと出た三人の船長は、肩を並べてはいるものの目も合わせる事なくその視線を外で取り囲んでいた海兵達へと向けていた。
「お前ら、下がってていいぞ。」
シンを抱えたままでそう言ったのはルフィ。
「お前らに下がってろと言ったんだ。」
そんなルフィに牽制するように言葉を続けたのはキッド。
「もう一度俺に命令したらお前から消すぞ、ユースタス屋」
先程までの笑みを引っ込め、キッドに向け鋭い殺気を飛ばしたのがロー。

三人が三人とも、助けられる気など毛頭ないのだろう。
臨戦態勢を取りながら隣に並ぶ他二人の船長へ牽制を掛け続けている億超えの賞金首である凶悪な海賊達を前に、海兵達には一様に動揺が広がっていた。
「そもそも、麦わら屋。お前は病人抱えて何をする気だ。」
そんな海兵達の様子など気にも止めていないのだろう、ちらりと横目でルフィに担がれたシンを見たローは、ルフィに向けて声を掛ける。
"死の外科医"との異名をとるこの男は海賊でありながら医者でもある。
明らかな病人であるシンを前に、医者としての言葉が出たのだ
「すぐ終わるから大丈夫だ。な!シン!」
しかし医学の知識などまるでないルフィからすれば、ローの心配などどこ吹く風。
大丈夫かと問うて大丈夫だと返すシンの言葉を真っ向から信じ、そっとシンの体を地面に下ろすと先陣を切って海軍に攻撃を仕掛けるべく駆け出した。
「無茶苦茶な事を・・・」
出遅れたローは、悔しさと呆れの混ざったため息を吐き出す。
そうしている間にもルフィの猛攻を受けた海軍の戦力はみるみる内に削がれていく。
その戦いぶりにローとキッドはルフィに鋭い視線を向けていたが、不意にルフィにが弾き返しそびれた爆弾がロー達の居る方へと転がってきた。
「っ麦わら、てめえ!」
思わず怒声を漏らしたキッドは、爆発の寸前で飛び退いた事により被害を免れる。その際に側に居たシンを抱えたのは、恐らく無意識だったのだろう。
ローも同じく爆発から免れると、言葉はないながらも怒りを孕んだ視線をルフィに向けた。
「あ、悪い!それと、シン助けてくれてありがとな!」
ルフィはといえば悪びれる事なく笑みを向けると共に、シンを抱えたキッドに礼を口にする。
それを言われて初めて気付いたのだろう、思いがけず片腕に抱えたシンをキッドは見下ろしてちっと舌打ちを漏らした。
シンはそんなキッドを発熱により僅かに潤んだ瞳で見上げ、小さく頭を下げる。
「あの・・・ありがとう、ございます」
「・・・おい、麦わらぁ」
そんなシンを見たキッドは、不機嫌そうな表情を一変させ凶悪な笑みをその顔に湛え、そして低い声でルフィを呼んだキッドはこう続けた。
「手に負えねえなら、貰ってやるぜ?」
誰を、何を、とは言わなかったが、キッドの言葉が指すのがシンであると分かったルフィはぐんっと腕を伸ばすとキッドの腕からシンを奪い取るように連れ去って。
それから自分の元へと引き寄せたシンを自分の背中に背負うとキッドに、そして先程同じような台詞を口にしたローに向けてはっきりと宣言した。
「だから、シンは俺の仲間だっつってんだろ!お前らになんてやらねえ!」
その言葉にキッド、ローの目には静かに炎が灯る。
「ならいずれ、奪ってやるよ。」
海賊だからな、そう言ったのは果たしてどちらだったか。
三人の船長達は、追い付いたそれぞれの船員達を引き連れると偉大なる航路後半の海である"新世界"での再会を口にし、背を向け合わせて各々の向かう方向へと歩き出した。

それから海軍の追っ手を振り切った麦わらの一味は、オークション会場で出会った男性に会うべく人気の少ない場所に建てられたバーへと集結していた。
ルフィにその場まで運ばれたシンは無茶をした代償かその直後に発熱が限界を超え、借りたベッドで寝込む事に。
しかし意識ははっきりとしており、隣でオークション会場で出会った男性、海賊王ゴールド・ロジャーの船で副船長を務めていたというシルバーズ・レイリーの話を寝たままの状態で聞くシン。
ルフィを初めとして麦わらの一味の面々はレイリーから聞かされる話に目を輝かせ、驚き、その言葉の一つ一つに興奮し反応を続ける。

そんな話がしばらく続いた後に、レイリーはある提案を口にした。
それは次の目的地となる海底一万メートルに位置する『魚人島』へと行く為に必要な船のコーティングという船を特殊な技術により壊れにくいシャボンでコーティングする事により海底への航海が可能となる技術の作業をレイリーが請け負うが、それには3日の日数が掛かる為に一味には3日間海軍から逃げ続けて欲しいという事だった。
ルフィはそれを快諾し、サニー号のコーティングをレイリーに任せ3日後に再び集結しよう、と

"約束"を、交わした。

いつも通り、大丈夫だと全員が思った。
どんな窮地でも切り抜けてきた“慢心”が少なからず誰もの胸の内にあったのかもしれない。

けれどそれが一味の命運に関わる一大事になる事を、その時は誰も知る由もなかった。
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