威嚇と意地悪
「ナミさんとロビンちゃんはもう食べたし、男共には内緒な?」
言いながらシンに渡したのは皿の上でフルフルと柔らかそうに揺れる黄色の物体で。
初めて見るその物体をじっと眺めたシンは、これは何だと問う視線を向ければサンジはにっと笑いながらシンの頭を優しく撫でた。
「プリン、だ。食べてみな、美味いから」
「プリン・・・」
サンジに言われ、皿に一緒に乗っていたスプーンを手に取ったシンは何度かプリンをスプーンで突いて揺れる様を楽しんだ後に、プリンを掬って口へと運ぶ。
「っ!」
直後に広がったのは優しい甘さで、その美味しさに目を輝かせて次々にプリンを食べ進めるシン。
そしてあっという間にプリンを食べ尽くしたシンは、サンジに満面の笑みを向けた。
「すごく美味しい。ありがとう、サンジ」
「その言葉だけで作った甲斐があったよ。」
シンの笑顔を見ればサンジもつられて笑顔になり、空になった皿をシンの手からそっと受け取ると慣れた手つきでそれを洗い出すサンジ。
その様子を見ていたシンは、慌ててサンジに声を掛けた。
「お皿くらい、洗う。」
「いいっていいって、シンちゃんはゆっくりしててよ。」
そもそも、サンジは女性に対して限りなく優しく接する人物だ。
それが仲間であれば尚更の事であり、シンは勿論ナミやロビンに対しても何かをさせるという事をほとんどした事がない。
シンも数日一緒に居た事でそれを理解してはきたものの、何もしないという事がどうしても居心地悪く感じてしまい困った表情を浮かべる。
「あー・・・」
そのシンの様子に気付いたのだろう。
サンジは困った様な笑顔を浮かべて一瞬の間を置いた後に、皿が数枚置かれたままだった流しから離れるとシンに声を掛けた。
「じゃあ、皿洗いお願いできる?」
「っうん!!」
サンジに頼まれ、嬉しそうに頷き流しに手を伸ばすシン。
その様子を見たサンジは愛しそうにシンを見て微笑んだ。
「あら、楽しそうね。私も混ぜて貰っても?」
「ロビンちゃん!どうしたの?プリンのおかわりかい?」
と、その時、不意によく聞いた声が二人の耳に届く。
先にその声に反応したのはサンジで、目をハートにしながら見た視線の先には意味深に微笑むロビンの姿があった。
「おかわりはもう大丈夫よ。楽しそうな声が聞こえたから様子を見に来ただけ。シン、プリンは食べたの?」
「うん、すごく美味しかったよ。」
「そう、良かったわね」
皿洗いを中断しロビンに笑みを浮かべるシンの頭を、ロビンは優しく撫でる。
サンジはそんな二人の様子を微笑みながら見つめていたが、不意にロビンの視線がサンジを捕えた事によりサンジの表情がそのまま凍り付く。
「駄目よ、コックさん。抜け駆けなんてずるいじゃない。」
「え、ちょ、ロビンちゃん・・・?」
ロビンの凍り付くような視線にサンジが思わず固まれば、それに満足そうに笑顔を浮かべる。
「ナミも今頃、ゾロに釘を刺している頃かしら。」
「ナミさんがゾロに?それってどういう・・・」
「あら?自覚なんてさせてあげないわよ?」
フフ、と笑うロビンの言葉の真意を掴めないサンジが頭上にクエスチョンマークを浮かべてくれば、ロビンは更に深くした笑みでそれに応えて。
いよいよ訳が分からないと困った表情を浮かべたサンジに、ロビンがシンから離れて近付く。
そしてサンジにだけ聞こえる声で、小さく囁いた。
「シンに何かしようってなら、私とナミが黙ってないから覚悟してね?」
「何かって、別に俺はシンちゃんには何にも・・・」
「あら、シンだけ特別扱いしてるじゃない」
「いや、それは、」
シンの過去を聞き、現状を知った今、特別扱いするなという方が無理な話ではないだろうか。
それはロビンは勿論、他のクルー達も同じであり、皆が皆シンを特別気遣っている様子は誰もが分かっていた。
そんな思いを込めた視線を困惑しながらサンジがロビンに向ければ、ロビンは可笑しそうに笑いながらサンジからそっと離れる。
「ごめんなさいね、意地悪し過ぎたわ。」
ロビンにしては珍しく悪戯そうな笑顔を浮かべたその表情はサンジでも初めて見るもので、年より若く見えるその笑顔に思わずサンジの顔が赤く染まる。
「ロビンちゃん、そんな笑い方も出来るんだね。」
「え?」
「いや、どんな笑顔でも魅力的なんだけど、今のはかなり可愛かったっていうか・・・」
「シンだけじゃなくて私まで口説くなんて、悪いコックさんね。」
いつも通りのサンジの反応にクスクス笑みを漏らすロビン。
穏やかな時間が過ぎる中、サンジとロビンの会話を気にする素振りもなくシンはシンクにあった食器を洗い続けていた。
美味しい料理も、安心できる寝床も、暖かい雰囲気も、この船の中では全部が揃っていて。
それを与えてくれる人たちに、自分には何が返せるのだろうか。
ここ数日シンが考えるのはそんな事ばかりで、夜も人知れずなかなか寝付けずにいた。
きっと、それが原因だったのだろう。
サンジとロビンがシンから気を反らしたそのほんの僅かな瞬間、ガシャンと食器が割れる音と共にシンの体が床へ崩れ落ちたのた。
言いながらシンに渡したのは皿の上でフルフルと柔らかそうに揺れる黄色の物体で。
初めて見るその物体をじっと眺めたシンは、これは何だと問う視線を向ければサンジはにっと笑いながらシンの頭を優しく撫でた。
「プリン、だ。食べてみな、美味いから」
「プリン・・・」
サンジに言われ、皿に一緒に乗っていたスプーンを手に取ったシンは何度かプリンをスプーンで突いて揺れる様を楽しんだ後に、プリンを掬って口へと運ぶ。
「っ!」
直後に広がったのは優しい甘さで、その美味しさに目を輝かせて次々にプリンを食べ進めるシン。
そしてあっという間にプリンを食べ尽くしたシンは、サンジに満面の笑みを向けた。
「すごく美味しい。ありがとう、サンジ」
「その言葉だけで作った甲斐があったよ。」
シンの笑顔を見ればサンジもつられて笑顔になり、空になった皿をシンの手からそっと受け取ると慣れた手つきでそれを洗い出すサンジ。
その様子を見ていたシンは、慌ててサンジに声を掛けた。
「お皿くらい、洗う。」
「いいっていいって、シンちゃんはゆっくりしててよ。」
そもそも、サンジは女性に対して限りなく優しく接する人物だ。
それが仲間であれば尚更の事であり、シンは勿論ナミやロビンに対しても何かをさせるという事をほとんどした事がない。
シンも数日一緒に居た事でそれを理解してはきたものの、何もしないという事がどうしても居心地悪く感じてしまい困った表情を浮かべる。
「あー・・・」
そのシンの様子に気付いたのだろう。
サンジは困った様な笑顔を浮かべて一瞬の間を置いた後に、皿が数枚置かれたままだった流しから離れるとシンに声を掛けた。
「じゃあ、皿洗いお願いできる?」
「っうん!!」
サンジに頼まれ、嬉しそうに頷き流しに手を伸ばすシン。
その様子を見たサンジは愛しそうにシンを見て微笑んだ。
「あら、楽しそうね。私も混ぜて貰っても?」
「ロビンちゃん!どうしたの?プリンのおかわりかい?」
と、その時、不意によく聞いた声が二人の耳に届く。
先にその声に反応したのはサンジで、目をハートにしながら見た視線の先には意味深に微笑むロビンの姿があった。
「おかわりはもう大丈夫よ。楽しそうな声が聞こえたから様子を見に来ただけ。シン、プリンは食べたの?」
「うん、すごく美味しかったよ。」
「そう、良かったわね」
皿洗いを中断しロビンに笑みを浮かべるシンの頭を、ロビンは優しく撫でる。
サンジはそんな二人の様子を微笑みながら見つめていたが、不意にロビンの視線がサンジを捕えた事によりサンジの表情がそのまま凍り付く。
「駄目よ、コックさん。抜け駆けなんてずるいじゃない。」
「え、ちょ、ロビンちゃん・・・?」
ロビンの凍り付くような視線にサンジが思わず固まれば、それに満足そうに笑顔を浮かべる。
「ナミも今頃、ゾロに釘を刺している頃かしら。」
「ナミさんがゾロに?それってどういう・・・」
「あら?自覚なんてさせてあげないわよ?」
フフ、と笑うロビンの言葉の真意を掴めないサンジが頭上にクエスチョンマークを浮かべてくれば、ロビンは更に深くした笑みでそれに応えて。
いよいよ訳が分からないと困った表情を浮かべたサンジに、ロビンがシンから離れて近付く。
そしてサンジにだけ聞こえる声で、小さく囁いた。
「シンに何かしようってなら、私とナミが黙ってないから覚悟してね?」
「何かって、別に俺はシンちゃんには何にも・・・」
「あら、シンだけ特別扱いしてるじゃない」
「いや、それは、」
シンの過去を聞き、現状を知った今、特別扱いするなという方が無理な話ではないだろうか。
それはロビンは勿論、他のクルー達も同じであり、皆が皆シンを特別気遣っている様子は誰もが分かっていた。
そんな思いを込めた視線を困惑しながらサンジがロビンに向ければ、ロビンは可笑しそうに笑いながらサンジからそっと離れる。
「ごめんなさいね、意地悪し過ぎたわ。」
ロビンにしては珍しく悪戯そうな笑顔を浮かべたその表情はサンジでも初めて見るもので、年より若く見えるその笑顔に思わずサンジの顔が赤く染まる。
「ロビンちゃん、そんな笑い方も出来るんだね。」
「え?」
「いや、どんな笑顔でも魅力的なんだけど、今のはかなり可愛かったっていうか・・・」
「シンだけじゃなくて私まで口説くなんて、悪いコックさんね。」
いつも通りのサンジの反応にクスクス笑みを漏らすロビン。
穏やかな時間が過ぎる中、サンジとロビンの会話を気にする素振りもなくシンはシンクにあった食器を洗い続けていた。
美味しい料理も、安心できる寝床も、暖かい雰囲気も、この船の中では全部が揃っていて。
それを与えてくれる人たちに、自分には何が返せるのだろうか。
ここ数日シンが考えるのはそんな事ばかりで、夜も人知れずなかなか寝付けずにいた。
きっと、それが原因だったのだろう。
サンジとロビンがシンから気を反らしたそのほんの僅かな瞬間、ガシャンと食器が割れる音と共にシンの体が床へ崩れ落ちたのた。
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